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せき あゆみ
せき あゆみ
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ことばの雨が降ってくる

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*記憶の不思議*



あるときワタクシは、子どもの頃読んだ絵本を、古本屋さんのカタログで見つけて注文しました。
「雨姫さま」というタイトルです。
届いてわかったのは作者がシュトルムだということと、挿絵は当時有名だった蕗谷虹児さんで、記憶の通りの絵でした。

ところが、たった一つだけ、全く違ったことがありました。

たしかに挿絵は全ページ覚えていましたが、ワタクシが記憶していた構図と左右が逆だったのです。

これにはびっくり。
ですが、何かの本で読んだことを思い出しました。
幼児は左右逆に記憶するのだと。
就学前の子どもって、よく靴を左右逆に履いたりする……あれです。

とすると、幼児だった時の記憶がそっくり頭の中にインプットされていたわけですね。

さて、記憶というものは、強烈であればあるほど、そのほかの記憶をかき消してしまうこともありますね。
ワタクシは小学校の運動会の記憶が2年分、ぶっ飛んでしまっています。

ある年は、運動会の最中に事故が起き、学校に出入りしている業者の方が大けがをしてしまい、不幸なことにその後亡くなってしまったのです。
その日、学校帰りに坂道の途中、土手の下をのぞくと苔むした岩に黒ずんだ血のシミと散乱した牛乳瓶があって、それが頭に焼き付いています。

またある年は、午後の部の始まりを告げる花火が、火がついたまま裏山に落ちて、見る間に山火事になってしまったのです。
もう、大騒ぎでした。
その年の運動会の記憶は、青い空に火の手が上がったシーンだけです。

トラウマになった記憶は、とんでもないアクシデントに見舞われた旅行のことです。
姉がワタクシと弟を連れて関西旅行に連れて行ってくれた時でした。16歳の時です。
奈良を観光して、京都で大文字焼きをみての数日間、楽しくすごして帰りの新幹線に乗ったときです。
ワタクシ、みぞおちのところに違和感を感じました。
すぐに治るだろうと思っていましたが、だんだんと胃や腸まで痛くなってきます。
脂汗が出て、気分も悪くなってきました。

苦しむこと3時間。やっと東京駅に着いた時には、もうふらふらでした。
なんとかホームから中央通路に降りたところでダウン。
最後は痛みも何も感じなくなって、意識がもうろうとしてきました。
たぶん、このとき弟がワタクシを呼んでいなかったら、逝っちゃっていたかもしれません。
姉は東京にいる親戚に連絡したり、駅員さんに救急車を手配してもらうのに駆け回っていました。

結果は急性盲腸炎。
そのまま東京の病院に10日間ほど入院しました。

このときの楽しかった思い出も、痛みと苦しみの記憶にかき消されてよく覚えていません。

そのおかげで、ワタクシ旅行に行くのが怖くて、あまり好きではないのです。
ネットで知り合った方々とのオフ会に参加するときも、普通なら観光もかねて何日か日程を組むでしょうけど、ワタクシは絶対日帰りなのです。
北は仙台、西は京都が限界かな?(笑)

記憶にもいろいろあって、自分では意識していなくても身についてしまっていることもありますね。

唐突ですが、ワタクシはつわりがひどかったのです。
それでもしばらくは、へろへろになりながらも仕事に出て、家事もなんとかこなしていました。
自分はまったく食べることが出来ないくらい気持ちが悪くても。
味噌汁なんてみるのもいやでしたね〜〜。なんなんだろ、あれって(^^;)

で、その当時夫は家で執筆の仕事をしていました。
毎日、音楽を聴きながらやっているのですが、カセットを取り替えるのがめんどくさいらしく、ずっと同じ音楽なんです。
薬師丸ひろ子さんの歌ですね。あればっかり聴いていました。

ワタクシは枯れ枝のようにやせ細ってしまい、とうとう産婦人科の先生に「入院しなさい」といわれて1週間ほど入院しました。
2番目の子どもの時も同じような状態になりました。

そんなこんなで結局は男の子を二人産んだわけですが、子どもたちが少し大きくなった頃のことです。

ある日あるとき、どこからか薬師丸ひろ子さんの歌声が聞こえてきました。
そのとたん。
あの、思い出すのもいやなつわりの時の嗚咽がワタクシをおそったのです。

これもまたびっくりしましたね。
体がつわりと音楽とを対にして覚えていたってことなんですね。

おそるべし。つわりっ(>_<)

20代のはじめの頃、東京に用事があって行ったついでに、上野の科学博物館に友人たちとよりました。
そのときは「ソ連科学アカデミー展」という特別展が開かれていました。
目玉は「サウロロフスの化石に触れる」というもの。タッチ証明書なるものがもらえるということで、暇だったので長蛇の列に並びました。

は虫類の肌の感じをしてはいましても、そこは化石っていうくらいですから、やっぱり触った感じは石です。

「なんだ。ただの石じゃん」

などと思いながらも、タッチ証明書をもらいながら、思いました。

もし、これで恐竜に変身しちゃったらどうしよう……(^^;)←アホです。

ですが、このときの記憶がずっと残っていて、童話を書くようになってからのネタになりました。
福井県の勝山市で募集した「恐竜児童文学賞」に応募して、努力賞をいただいたのが、この体験を元にして書いた“石のきおく”です。
勝山市に招待されたのは上位入賞者だけでしたが、作品自体は楽しく書けました。