ルック・湊(ルク主)
鬼神
「では、この城近くの森に全軍を出します。ルカ・ブライトの隊が現れたら、すぐに前後の道をふさぎます。その後精強の部隊によって攻撃をかけ、ルカ・ブライトを仕留めます。」
そうして、シュウは部隊を湊、フリック、ビクトールの3部隊に分けた。
“この子、エスパー!?”などと、あの強化訓練に追い出された者達は少し唖然と湊を見る。
湊は、鍛えておいて、良かったね、とニッコリと見まわした。
だが少し手が震えているのに気付いたのはルックだけかもしれない。
「違うよ、ルック。これは、その、武者震いだから。」
湊は、ニッコリと皆を見たままボソリ、と言った。ルックは“ああ、そうだろうね”と、そっと湊の後頭部に触れて言った。
夜。
暗い中、ルカの部隊がぞろぞろと森中を抜ける。
「見ろ、城の灯りが煌々と燃えている。奴ら、今頃高いびきか、逃げる方法でも探しているのであろう。」
その時、一隊員が乗馬しているルカの元へ慌ててやってきた。
「申し上げます!!先行している部隊が同盟軍の奇襲を受けています!!」
別の隊員がまた報告に来た。
「ルカ様!!後方に同盟軍が現れました!!」
「なんだとおぉぉぉ・・・・森に伏せていたか!!こりぬ奴らだ、悪あがきをしおって!!」
「ル、ルカ様っ!!」
ルカの前にいた隊員が叫んだとたん、いくつもの矢が飛んできた。矢に当たり、ルカも落馬する。
「ルカ様をお守りしろっ!!」
そう言ってルカの前に兵隊が立ちはだかるが、どんどん飛んでくる矢に倒れている。
「おのれぇ・・・・しかし・・・どうして・・・この夜襲が・・・」
そこにフリックの部隊が現れた。
「ルカ・ブライト!!お前の首をもらうぞっ」
「バカを言うな!!貴様らのような屑どもがしゃらくさい真似を!!!」
そうして矢追いとなったはずのルカの部隊と戦うも、打撃を与える事は出来たようだが、そのままルカの前進を許してしまった。
「くっ・・・貴様らごときに・・・・・」
だがルカが進んだ先にはビクトールの部隊があった。
「今度こそ、あの時の借りを返してやるぞ、ルカ・ブライト!!!」
「ウジ虫どもがあぁぁ・・・・」
既に手負いになっているであろうはずのルカの勢いが衰えない。すさまじい勢いで剣を振りかざす姿は誰が見ても恐ろしいものであった。
ビクトール隊でも周りの兵士のみしか仕留めきる事ができず、ルカに先を許してしまう。
「ルカ・ブライト。お前の命運はつきた。兵士もなく、その傷ついた身体では囲みを破ることは叶わないぞ!!」
シュウが言う。
「囲み、だと?ふはははははは!!!俺には豚共がキィキィ鳴いているだけの、無人の野にしか見えんがな!!・・・湊・・・。今、ここで、お前の首をたたき落としてくれる!!」
そう言ってルカは湊の隊に向かってきた。
矢を受けているはずである。そして2つの部隊と戦っているはずである。なのに衰えを知らないルカは強烈な勢いで剣をふるってきた。
次々に仲間が倒れていくなか、湊は自分の紋章でサポートしていく。
だが暖かい緑の光に包まれて回復するも、またルカに猛攻撃を喰らうはめになる。
湊が紋章を使っている事に、ルックは舌打ちしつつ、風魔法と蒼き門の紋章で攻撃する。だがルカは魔防が高く、なかなか倒れない。シーナも土の紋章で仲間をサポートするも、追いつかない。
“人間か・・・?”ルックは呆れたように思った。
だが、なんとかようやくルカが膝を地面についた。
「お、おのれ・・・・な、なぜだ・・・・・・この俺様が負けるだとおぉぉぉ・・・・!貴様ら薄汚い豚どもに何が出来ると言うのだ!!!なぜだ!!湊!!!なぜ、貴様が勝ち!!!この俺が負けるのだ!!!!!!!それが運命だとでも言うのか!!!貴様ら全てをこの地上から消し去るまで、全てを清めるまでは死ぬ訳にはいかぬ!!」
ルカはそう言うと、驚くほどの勢いで囲われていない方へ去って行く。
「追うぞ!!湊!!ここまできて、逃がしてたまるか!!!」
ビクトールが言う。フリックらとも合流し、湊らは後を追った。その後ろでシュウが“弓兵を集めろ。既に伝えてある場所へ向かうぞ。”と言っているのが聞こえた。
湊らが追うと、まだ残っていた向こうの兵が“ルカ様を守れ”と攻撃してきた。
あんな恐るべきルカを慕っている兵士が多くいる事に、湊は驚きが隠せなかった。
その間、ルカは丘のようなところまでやってきた。
「う・・・う・・・おのれ・・・。こ、こんな・・・・ところで・・・。・・・・・この俺が・・・負ける・・・のか?・・・。くそっ!!!これが“恐怖”だと言うのか!俺は死を恐れているのか!!バカバカしいくだらぬ感情だ。」
そうしてただ一本だけたっている木で光っているモノに気づく。
「ん?なんだ?・・・木彫りのお守り・・・。なぜこのようなところに・・・。それにどうして光が・・・。ん?これはフタか・・・・」
木にかかっている木彫りのお守りを手にとり、中を開けた。
ふわり、ふわり、とやわらかな光が空へと飛んでいく。
「これは・・・ホタル?中にホタルが入っているのか?フン、イタズラを・・・・たたきつぶして・・・」
そうしてお守りを見る。
「くだらぬ・・・虫けらに奪うほどの価値ある命など・・・ないな。くだらぬ・・・この世界も・・・」
ルカはそのまま溢れ出るホタルをぼんやりと眺め続けた。
「光!あれが言っていた光か!!撃て!!!!」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ