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ルック・湊(ルク主)

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夢見



「ルック・・・あなたに誰かが本当に好きでしかたがない、という感情が起こればいいのに・・・。」

これは・・・遠い、過去の僕と・・・レックナート様・・・?

「どうして、ですか?レックナート様?」
「今のあなたは見た目は十分少年の姿ですが、中身はまだ幼子同然です、それは分かっているのだけれども・・・。そういった感情が理解できればきっと、毎夜のように苦しめられているあの夢からのがれられそうな気がしたのです。あの孤独しかないような冷たい夢から。」
「・・・あのなにもない、灰色の怖い世界・・・?僕は誰かを好きになればあの夢を見なくてすむの?だったら誰かを好きになりたい。」

・・・誰かを好きに―

「あ、目を覚ましたっ。」

遠い過去から目を覚ませば目の前に大きな琥珀の瞳。・・・綺麗な・・・色、だ・・・。

「・・・。・・・・・・・、・・・っ!?」

ぼんやりと目の前の顔を見ていたルックは途中ではっきりと目を覚まし、途端顔を真っ赤にする。

「わ、ルック!?大丈夫!?」

そんなルックの、あまり見られない様子に、ますます心配そうに湊が言った。

「っ大丈夫だからっ。ちょ、もう少し離れてくれる?」

ルックをのぞきこむように、間近にいる湊にルックは言った。
湊は首をかしげつつ、言われた通り離れた。ルックはホッとため息をついてから身体を起こす。どうやら医務室にいるようだ。

「あ、もう起きて大丈夫なの?まだ寝てたほうが・・・。」
「大丈夫だから。ちょっと寝不足がたたっただけだから。」

その時囲っていたカーテンが開けられ、シーナが入ってきた。

「湊っ。なんかシュウが呼んでるぜ。どうやらシンて奴も、無事ここにたどり着いたらしい。ルックも目を覚ましたみたいだし、ちょっと行ってこいよ。ルックは俺が見ておくからさ。」
「そう・・・?んじゃ、ルック。ほんとムリしたらダメなんだからねっ。」

そう言うと、湊はしぶしぶカーテンの囲いから出ていった。少しホウアンと何かしゃべってからドアが閉まる音。

「で?気分はどうよ?」

ルックに近づいて、シーナが言った。

「・・・別に。どこも問題ない。うっとおしいからそばに来るな。」
「くくく、何、その態度の変わりようは。“大丈夫だから離れて”とか言ってくんないの?」
「シーナ・・・。立ち聞きとか気持ち悪いんだけど?どうやら命が惜しくないようだよね?」
「おっとヤボな事をしたのは悪かったって思ってるぜぇ?しっかし・・・ブフフッ、あのルックが・・・知恵熱かよっ。」

おかしくて仕方がないといった様子のシーナに、氷点下な眼差しを向けてルックが聞く。

「知恵熱?何を言ってるのさ?」
「寝不足だかなんだか知らないけどさ、眠いだけで倒れるとかどんだけ。しかも熱、あったみたいだぜ?あれじゃね?ようやくルッくんにも春が来たってやつ?あまりに今までにない事で、知恵熱でも出たんじゃね?」

おかしそうに笑いながらシーナが言った。

「そう。アンタは命が本当に惜しくないようだね。」
「ちょ、タ、タンマッ。そんな怒るなよな。あれだろ?ようやく自覚したんだろ?」
「何が?」
「え?そりゃールックが湊を好きっていう、ね。」
「なっ。・・・アンタ、何言ってんのさ。」
「おいおい、せめて前戦争時代から仲良くしてる俺にくらいは正直になってくんない?ちゅーかバレバレだし。」
「・・・仲良く?・・・て・・・、そう、な、のか?」
「あー、まあ普通だったら分からんのかもだけどさ。ほら、俺はお前との付き合いそこそこ長いし、なんてったって恋愛のエキスパートだからなっ。」
「・・・は・・・?」
「そこっ。呆れたような顔をしない。にしてもまたライバル多い子選ぶねー。」
「・・・え?」

何を言っている?といった感じのルックに、シーナはニヤリと笑いかけた。

「やっぱ知んねえのな。これからまあよく見てみるこったな。あいつ、マジ良いヤツだし、それに男だけどほんと可愛いだろ?まあ、軍主様だからな、そうそう手出ししようとか考える奴はいねえみたいだけどさ。」
「・・・ふーん。・・・で、アンタは?」

どう思っているのさ、まあ返答次第ではどうなるか分かってるよね?的な表情を暗に出し、ルックはシーナを見る。
何この子、怖い、つか嫉妬心強ぇえな、可愛いじゃないの・・・シーナはそう思いつつ、ニヤリと答える。

「俺は基本女の子が好きだから。男の子も女の子も気に入れば何でもアリ的な、かの英雄と一緒にしないでくれる?まあ湊は可愛いと思うけどね。俺は出来たら相手は柔らかい方がイイ。」
「・・・何その返答・・・。ていうか、別に僕だって男が好きな訳じゃない。」
「わぁってるよ。まあアレだろ、俗に言う“たまたま好きになった相手が男だったんだ”的な?」
「・・・何楽しんでんのさ・・・うっとおしい。」

ほんとうに楽しそうなシーナをルックはジロリ、と見た。

「え、だって楽しい。あのルックがさーっ・・・ておいおい、また物騒な顔しないでくれる?」
「ちょっと、頭の軽そうな軽薄ドラ息子。この事、もちろん誰かにしゃべったら・・・どうなるか、分かってるよ、ね?」

ベッドから降り、ルックは視線だけで凍らせそうな勢いでシーナに向かって言った。

「うぉっと、ほんとお前たまにどSパねぇなっ。わーってるよ、いくら俺でもベラベラしゃべるほどバカじゃねえって。って、おい、もう起き上がって大丈夫なんか?」
「なんともない。」

そうとだけ答えると、ルックは瞬間移動で消えてしまった。

「ちょ、おいおい、どこに行くくらい言っていけよな・・・。まったくルックは・・・。あー俺、湊にしかられるじゃん、ちゃんと診てなかったって。」

ルックはとりあえず誰もこないような城の裏手の湖畔にいた。
風が気持ちいい。

「・・・そういえば・・・灰色の夢じゃなかった・・・。」

ぼそりと呟く。
灰色どころか、淡く懐かしい昔の色。心配したレックナート様がそこにいた。

「・・・夢からのがれられそうな気が・・・」

レックナート様が言っていた事が脳裏をよぎった。
ふ、とルックは唇をほころばせた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ