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昇神の儀

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「ただ今から新設備の竣工式を執り行います。一同ご起立願います」
 本日の司会を担当する庶務課長から第一声があり、竣工式が開始された。
「神前に向かって、拝礼願います」
 出席者全員は「拝礼!」と言う掛け声と同時に祭壇に向かって厳粛に頭を垂れた。
「直れ! ご着席下さい」
 祭壇に一番近い席にゆっくりと腰を下ろした高見沢一郎、その表情には安堵した胸の内が伺われる。

 ここ最近のロボット需要の急激な伸びを受け、高見沢が勤める関西工場にも景気回復の風が吹いてきた。
 この神風にも似た世の中の流れに追随すべく、昨年の12月から工場内空きスペ−スを使い、突貫工事で新鋭設備の据付を進めてきた。古い建屋の更新から始まり、種々の法規制も絡む中、なかなかの難工事をやり抜いた。
 そして年が明け、なんとか新設備も座り、製造プロセスとしての姿形が整った。
 本日は無災害貫徹をも達成できた目出度い竣工式だ。
 高見沢は工場の技術系トップでもあり、この工事を統括してきた。今日この日を向かえるにあたって、よくぞここまで漕ぎ着けることができたなあと感慨深い。ほっとすると同時に、胸に熱くなるものがジーンと込み上げてくる。

 本社からはロボット部品の事業本部長も参列してくれている。そして、チ−ムとしてこのプロジェクトに携わってきた仲間たちも、また業者の人たちも、多数式典に参列し祝福してくれている。
「おっおー、竣工式か、みんなよく頑張ってくれたなあ。とにかくすべてが前倒しだったからなあ」
 高見沢は、短期間での業務推進ではあったが、あんな事もあったこんな事もあったと振り返り、まことに感無量だ。
 式場の前方中央には立派な祭壇が飾られてある。今、それに向かって五〇名位の人たちの拝礼が終わった。そしてそれぞれが着席し、静かに次の進行を待つ。
 式場にはピンと糸を張ったような緊張感が漂っている。そんな重厚な雰囲気を紅白の幕が包み込み、別世界を現出しているかのようでもある。
 神主は祭壇に向かって右側に位置取り、神妙な面持ちで出番を待つ。そして祭壇の左側には、本日の竣工式の式次第が大きく掲げられてある。


作品名:昇神の儀 作家名:鮎風 遊