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ゴーストQ

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『新番組に出演決定! 話題の彼にそっくりな友人』



 どうしてオレはここにいるんだろう。車に乗せられているときも嫌で嫌で仕方なかったけれど、今こうして控え室に通されたら、逃げ出したい気持ちが極限まで高まっている。
 狭い会議室のようなところに一人待たされて、さっきから後悔しかしていない。腰掛けているパイプ椅子が軋む。ドアの向こうでガヤガヤと人が通る音がするたび、ますますここがオレに相応しくない場だと思い知る。
 突然ドアが開き、びくりと背筋が伸びる。入ってきたのはさっきオレをここまで車に乗せてきたマネージャーさんだった。多分年上の、どう見ても美人が水谷のマネージャーだなんて、あいつ恵まれてい過ぎやしないか。
「これ、よかったら」
「あっ、どうもすいません……」
「ふみちゃんも、あと十五分くらいで来ます」
 オレは渡されたペットボトルを落としそうになってしまった。ふみちゃん。この美人にそんなあだ名で呼ばせてんのか、水谷は。
「この間は急にお電話して申し訳ありませんでした」
「いや、あの」
「今日は学校、お休みになられたんですか?」
「はぁ、まぁ、そういうことに……」
「もう! ふみちゃんたら!」
「別に、オレは、その……」
 どもるオレに構わず、失礼しますね、と言い残し、少し怒った様子のマネージャーさんが控え室から出て行く。水谷はあの人から叱責されるのかもしれない。もしかしてオレ、余計なことを言ったのかな。でもあいつがオレに仕掛けてきた策略に比べれば、多少のことは許される、絶対に。
 この間あんな遭遇をしてやっと、オレは高三の水谷が残していった捨て台詞を思い出した。つまり水谷は芸能人として一人前になり、オレの前へ出直してきたのだった。なんてひどいはた迷惑なんだろう。
 芸能人になろうとも水谷は水谷で、日本人男性のままだ。金髪白人女性になるとかいう劇的な変化を遂げたわけでもなく、依然として特別な感情など持てない。オレの守備範囲外を大きく外れている。
 ていうか水谷は有名になって地位も上がれば、オレに好きになってもらえると思っていたのだろうか。努力の方向がおかしくないか。
 何にせよ、とんでもなく諦めの悪い奴だということを改めて知った。二年もこんな業界にいて、未だに片思いの相手を変えてないなんてマイペース過ぎるにもほどがある。しかもその相手に一度振られてるわけだろ、バカみたいに夢も希望も生産性も無い。
 こんなふうに水谷のことをボコボコに叩いてはいるけれど、決してオレはおごりたかぶっているわけじゃないのだ。逆にあまりにも自分に魅力がなさすぎて、どうして水谷が執心し続けているのか理解できなかった。
 水谷も男を好きになるなら、男から見てもかっこいい男か、女みたいに可憐な男を選べばいいのに、なんで主役から数えて脇役Dみたいなオレを好きなのか。今なら男女問わず選び放題な気がするんだけど。
 そういうふうに客観的に考え出すと、オレはますます自分の価値を低く感じるようになり、もっと水谷のことがわからなくなる。高三で告白されたあともそんな気持ちだった。
 今こうして水谷がやたらとちょっかいを掛けてくるのは、多分自分が決めた『出直す』基準を満たしたからなんだろう。連ドラの主要人物に抜擢されるまで二年も耐えていたのだ。水谷の意思は予想していたより強い。でもオレにとっては迷惑なことに変わりない。

作品名:ゴーストQ 作家名:さはら