小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

映画レビュー

INDEX|4ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

クラレンス・ブラウン『愛の調べ』


 鑑賞者にとっての「音楽の現在性」の意味を変革する映画。映画の特権は、人物の肉体・動作・表情・肉声を、視覚的・聴覚的、そして現在的に示すことができることだ。この映画は、シューマンによって現在的に生きられた時空間を呈示している。
 この映画を観た後にシューマンの音楽を聴くと、音楽の現在性の意味が変わっていることに気づく。それまで音楽の現在性とは、単に作品が現に奏でられている、その程度の意味しかなかった。ところが、この映画を観て、シューマンの全人格的・肉体的なあり方が現在的に示されると、シューマンの曲を聴いているときにシューマンという人間もまたともに現在しているように感じられるのだ。
 つまり、作曲家についての映画を観る前の音楽の現在性とは、単なる作品の聴覚的現在性にすぎない。だが、作曲家の生き様を描いた映画を観たあとには、音楽の現在性は、作品と作曲家とが混然と融合した有機体の、視覚的・聴覚的・人格的な現在性に変化する。シューマンの曲を聴くと、映画でのワンシーンが心に浮かぶ。シューマンの人間性に触れることができる。そのような音楽鑑賞体験の変革を、この映画はもたらすことができる。

作品名:映画レビュー 作家名:Beamte