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音楽レビュー

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FoZZtone『The Sound of Music』


 FoZZtoneのこのアルバムのタイトルは、ずばり「The Sound of Music」である。音楽の音である。つまり、自分たちが携わっていることをそのまま包括的に対象化しようとしているのである。曲名にも「音楽」「名前」というものがあり、それそのものを自己言及的に対象化したものとも思える。いわば、哲学の営みのように。だが、事情はそんなに単純だろうか。
 まず、歌詞を見ると、何と言う事のない日常が多く描かれていて、哲学的な深い思考などは見いだせない。「音楽とは何か」、そういう問いに対する定義的な答えは与えられていない。だが、そのような抽象的でピンポイントな問題を設定しておきながら、彼らはそれに対して「答えを与えない」という「答え」を出しているように思える。
 どういうことかというと、彼らは音楽の本質を語っているわけではないのだ。現実にある音楽から抽象化され概念化された本質などに彼らは興味がない。「音楽とは何か」という問いに対して音楽の本質でもって返すのが「答える」ことだとするならば、彼らはそのようなことはしない。彼らは、ただ事実を提示する。存在を提示する。そこに提示されるのは、どこまでも裾野が広く連続的な、音楽の実践そのものなのである。
 このアルバムに収められた曲たちはヴァラエティーに富み、それぞれの曲も変化に富み連続的である。そのようにして、音楽の事実的な在り方を行為によって示すということ。言葉や概念や本質によってピンポイントに音楽の本質を語るのではなく、あくまでなめらかで遠大に広がる音楽そのものの存在をそのまま行為的に提示するということ。そのようにして、「音楽とは何か」という問いに対して、「答えない」という「答え」を出すということ。彼らのやり方こそが、音楽でもって音楽を語ることそのものなのである。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte