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てっしゅう
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神のいたずら 第五章 家族旅行

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「看護師さんだったの・・・碧はね、先生、大きくなったら医者になって命を助ける仕事がしたいって考えているの。トンネル事故で自分は助かったけど、代わりに多くの人が死んだ。ママとも話したけど二人で人を助けることがしたいって思ってるの。出来るかな?」
「偉いね・・・そんなふうに感じられて。私はあの事故で死んだ隼人のことしか考えられなかった・・・碧ちゃんの話を聞いて恥ずかしくなったわ。先生はダメね・・・いつまでもぐずぐず思っているようじゃ」
「ううん、人は必要とされて生きているんだって、聞いたよ。先生は今の仕事が必要とされているんだよ」

優は隣で話しているのが自分の生徒だなんて到底思えなかった。この小さな少女の頭脳は一体どうなっているのだろかと感心した。

列車は名古屋駅に着いた。ホームに降りると大きく手を振る高橋夫婦の姿があった。碧は駆け出していって裕子に抱きついた。

「おば様!来たよ」
「碧ちゃん・・・会いたかったよ。優ちゃんも誘ってくれてありがとう。ずっと会いたいって思っていたから」
「おじ様、おば様・・・ご無沙汰しておりました」
「優ちゃん・・・いいのよ。元気になったようね」
「はい、碧ちゃんに勇気付けられて・・・ここに来る事が出来ました。おば様に会いたかったです」
「話は後でゆっくり・・・車に案内しますからまずは家に来てください」

高橋が乗ってきた車で二人は自宅へ向かった。仏壇に手を合わせて持ってきたお供えを置いて二人は居間に座っていた。

「碧ちゃんの受け持ちになったんですってね・・・偶然よね。あの事故が優ちゃんとの縁を作ったのよね。そう考えると、少しはあの子も浮かばれるわ。こんな可愛いお嬢さんとこうして会えるんですもの・・・」裕子は目頭を押さえながら隣に座っている碧を見た。

「そうですねおば様。私もそう言う縁を感じます。初めて会ったときから碧ちゃんの事は何か気になりましたから・・・」
「隼人が居なくなって毎日どうしようかって落ち込んでいた時に、早川先生が碧ちゃんを紹介して下さって・・・あの時の出会いがなかったら、こうしていなかったのよね。本当に救われたのよ、ねえあなた?」
「そうだな・・・今日もお前は会うことを楽しみにしていたからな。優ちゃんともこうしてまた会えたし、これからこういう機会が出来るといいなあって思うよ」
「おじ様、私が碧ちゃんを連れてきますから・・・寂しくなったらいつでも言って下さい。碧ちゃんもいいわよね?」
「うん、いつでもいいよ。一人でも来るから・・・」

「碧ちゃん!・・・そんな事言ってくれて・・・」裕子は細い碧の身体をぎゅっと抱きしめた。

名古屋市内にある墓苑に4人は来ていた。新しく高橋家の墓標に隼人の名前が刻まれていた。花を供えて、線香を焚いて手を合わせる・・・碧ははっきりと自分が隼人ではないと知らされる思いであった。

「碧ちゃん、優ちゃん、ありがとう・・・隼人もきっと喜んでくれているよ。お腹空いただろう?直ぐ下にある木曽路へ行こう」
木曽路は名古屋では有名なしゃぶしゃぶの店だ。

「久しぶりにしゃぶしゃぶを食べるよ。美味しいね」碧の舌は時々両親と食べに行った味を思い出していた。
「そう、良かった喜んでくれて。たくさん食べてね。優ちゃんもね」
「はい、ありがとうございます。とても美味しいです」

「ねえ?優ちゃん・・・こんなこと突然言っても無理だとは思うけど、今日は泊まって行ってくれない?碧ちゃんも一緒に。なんだか食事の後、さようならって別れたくないの・・・」
「おい、裕子、そんな無理言ったらお困りになるじゃないか!親戚でもないのに・・・」
夫の敏則は妻を制した。

「碧ちゃんはどう?お母様に聞いてみて許しが出たら構わない?先生は明日と明後日は休みだから構わないんだけど」
「じゃあママに聞いてみる、おば様ちょっと待ってて・・・」
カバンから携帯を取り出して掛けた。

「ママ?お願いがあるの・・・今日名古屋に泊まらせて。先生と一緒に高橋さんのお家で・・・うん、代わるから。先生ママが代わってって」
「前島です。勝手なこと言いまして・・・はい、そうです。高橋さんにそうしてほしいと・・・明日は午前中に帰りますから・・・はい、ありがとうございます。碧ちゃんも喜ぶと思いますから・・・失礼します。碧ちゃん、ママがいいって・・・良かったね。はい携帯・・・」

「ありがとう先生!おば様許しが出たよ。泊まってゆく」
「そう!嬉しい・・・じゃあゆっくり出来るわね・・・どうしましょうかしら・・・そうだわ!買い物に行きましょう。パジャマとか下着とか無いでしょ?ねえ、あなたいいわよね?」
「そうだな・・・着替えがいるな。碧ちゃん、優ちゃん、そうさせてくれ、構わないだろう?」
「ええ・・・助かりますが、そんなお世話していただいて申し訳なく思います。碧ちゃんの分も私が払いますので・・・」
「何言ってるんだ・・・娘みたいなものなんだよ、そう思っている。遠慮なんか要らないよ」

木曽路を出て4人は中心街にあるデパートに向かった。

デパートで物を買うのは優にとっては久しぶりのことであった。普段は専門店かユニクロで買い物をしているからだ。碧と優に合うパジャマを買って、女性の下着売り場に裕子と三人で入った。敏則は外で待っていた。

「ありがとうございました、こんなに高いものを買って頂いて」
「いいのよ、こんな事ぐらいしかお金を使うことが無いから・・・そうだわ結衣の分も買ってゆこうかしら、ひがむといけないから・・・」裕子はそういって引き返し、お揃いの物を一つ買い足した。

「じゃあ今度はお洋服売り場に行きましょう・・・お似合いのお洋服が見つかるといいわね」
「あのう、おば様・・・そこまでして頂かなくても宜しいのですが」
「優ちゃん、隼人が死んで農協から少し保険金が入ったの。そんなお金使えないじゃない・・・貯金してもどうする事も出来ないし・・・あなたと碧ちゃんが喜んでくれるのならそのお金を使わせてもらうわ。今日の日が来る前に主人と決めていたことだから心配しないで。甘えて頂戴・・・そうさせて・・・ね?」
「はい、何から何まで、ありがとうございます。隼人さんの妻だったら、いつでもこうして買い物が楽しめたと思うと・・・切ないです・・・」

「先生・・・また泣いちゃダメ!みんな見てるよ。お姑さんにいじめられたように見られるよ」
「そうね、碧ちゃんの言うとおり・・・ゴメン」
「碧ちゃんは面白い事を言うね、でも感心したよ・・・先生をフォローしているから・・・とてもいい関係なんだって感じた。よし、好きなものかっていいぞ!何処の店に行こうかな?」
「うん、先生は・・・23区とかがシックでいいんじゃない?私はチビだから・・・ビビアンは着れないだろうなあ・・・」
「着れないねきっと、残念ね。子供服売り場に行こうか?」
「先生、意地悪言わないでよ!もう・・・」

何件か見て廻って優は学校に着て行けそうなアンサンブルを、碧は花柄のミニワンピースと合わせるジーンズを買った。いや、買ってもらった。帰り道で疲れが出たのか碧は車の中で寝てしまった。裕子の膝で頭を横にしている碧の髪と腕を撫でながら、