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住めば都 ~整形外科病棟~

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 消灯時間も過ぎ、寝静まった頃になると、喉はカラカラ、唇はカサカサになっていた。
「まだお水は飲めませんか?」
「喉が渇きますね。じゃ、お腹の音を聞いてみましょう」
「ウーン、まだ動いてないですね」
「まだ、ダメですか……」

あまりにもガッカリした声を出していた私を可哀想に思ったからか、ナースは、
「じゃ、うがいだけでもしましょうか。絶対ゴックンしないでね」

と、お水の入った吸飲みを渡してくれた。
クチュクチュとうがいをして、唇の端からジュルジュルとその水を出した。しかし、こぼさずに洗面器に出すのは難しかった。少しずつ少しずつ出した。

飲んでしまうとあの24年前の苦しみが再び----と思うと、想像するのさえイヤだった。

少しずつ少しずつ、ジュルジュルと出した。
ほんの2・3回のうがいだったが、口の中の渇きは納まった。

 そういううがいをこの後、2回ほどして、やっと許可が下りた。
「ヤッター!!」

もう真夜中はとうに過ぎていただろう。
手術前に冷たい水を冷蔵庫に入れてあったので、それを吸飲みに入れてもらった。
ゴクゴクと飲んだ。

『冷たい!!美味しい!!』
頭の中がスキッとした。
『ゴクラク、極楽』
水がこんなに美味しく感じるとは!!
口の渇きも落ち着き、やっと熟睡することができた。