小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カナダの自然に魅せられて  ~トロントへ~

INDEX|25ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 

32、さよなら、トロント



B&Bに帰った。スタッフのOさんが待っていてくれた。
Oさんは、この後、私たちが「通訳」の美月と別れて二人だけの行動になるのを心配して地図を広げながら、B&Bから空港までの道順を丁寧に説明してくれた。

「一番分かりやすい方法は…」
「タクシーでスパダイナ駅まで行くことかな。そこから地下鉄に乗ると乗り換えせずにキプリング駅に着きます。そこで、赤いトランスファーチケットを取って、空港行きのバスが停まってますから、それに乗ってください。トランスファーチケットを持っているとバスは無料ですよ。バンクーバーは国内線ですから間違わないように。航空会社はどこですか?」
「エアカナダです」
「それならターミナル1で降りてくださいね。何時に出ますか?タクシーを呼びましょう」
と、親切にタクシーまで呼んでくれた。
そして、この駅とこの駅と大事な駅に丸をつけた地図を持たせてくれた。


すごく不安を抱えながらも、これでカナダを離れる寂しさと、我が家に戻れる嬉しさと両方の思いを抱きながら、このB&Bを後にした。
日本語で話せた安心感とOさんの親切に感謝しながら…。

最初はホテルじゃないというショックがあったが、とても親切にしていただき、人との心の触れ合いが大事なことを強く感じた。

船長さん一家、日本語ツアーの山本さん、そしてB&BのOさん。
私がもっと英語が話せたら、カナダの人とだって、もっと分かり合えたかも知れないのに…。そういう点では、残念だったが、英会話をもっと勉強しようという気持ちにもさせてくれた旅行だった。


さて、B&Bを出発したタクシーは、昨日美優と歩いたトロント大学の横を通り、美優のいる寮の前を通り、美優がこの駅が最寄り駅と言っていた「セント・ジョージ駅」も通り、やがて、教えてもらった「スパダイナ駅」に着いた。
ここは地下鉄ではあったが、改札口は1階にあった。
改札で振り返ると、親切なタクシーのドライバーがまだ私たちを見送ってくれていた。
バイバイと手を振った。

改札前でやっぱり$2.75セントを機械に入れて入る。姉はコインがなかったので駅員さんからチケットを買った。


「美月ちゃん、いろいろお世話様でした。大変やったやろ。全部まかせてしまったからね。おかげで楽しい旅行ができたよ。ありがとう。このお礼は日本に帰ってから送るからね」
姉は姉で母親らしくこれからケベック州を一人旅する娘を案じて、
「気ぃつけて行くんやよ。またメールするから。お金足りひんかったら言っておいで」
と。

これからの旅は、きっと切り詰めた旅行にしていることを母親としては分かっていたみたいだ。今までは、私たちの年のことも考えて、少しきついところもあったけれど、体も時間もゆったりできるように考えてくれていたから…。  

「じゃあね。バイバイ」
「1回日本にも帰っておいでね」
「バイバイ、お母さんたちも気をつけて」

ここで、お互いに心配を残しながら私たちは別れた。
地下に降りるエレベーターの前で振り返ると、まだ手を振っていた。
私たちも手を振って、降りていった。