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Brilliance of white

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 きれいでまっしろで、穢れていなくて。
 まぶしくて触れられない。まばゆすぎる、苛烈な白の光。
(とどかない。ちかづけないよ)
 僕には。
 そう、呟いて。伸ばした手の先がちり、と痛むのを感じる。

 拒絶。
 闇なんて知らない光は、包みこむ温かさなんて持ち合わせてない。
 だから、その瞳に僕が映るのは不可能。
(痛みなんて、本当はどうだっていいのに)
 僕は近付けない。触れられない。どんなに願っても、どれほど祈っても。神様はいない。
(……僕には)
 あなたには、いるのかな。ねぇ、あなたには見えるのかな?


 さよなら。さよなら。
(さようなら)
 お別れだよ。
 ねぇ、あなたは泣いてくれる?
 僕からは触れられないあなたは、光の中心にいるあなたは、果たして僕のことが見えているのかしら。
(ねぇ、見えてないんじゃないのかな……)
 その頂からじゃ、奈落に手をついて這いつくばってる僕なんか。僕のことなんかさ。
 きれいなきれいな、触れたら僕が消えてしまいそうな、どこまでも透明な煌めきの中からなんて。あなたは。

(ねぇ)
 何度、問いかければ僕は気が済むのだろう。もう、どれだけあなたに問いかけただろう。応えが返ってこない問いかけを。


 慈悲深くて、冷たくて。
 美しくて、残酷で。
 大好きで。
 大嫌いだよ。
 愛しくて愛おしくて、
 殺したいほど憎んでる。
 僕の大切で切り捨てたいあなたは。


 さよなら、さよなら。
 陽だまりのようにやさしいひと。
 さようなら。
 吹雪のようにつめたいひと。


 僕はもう一度伸ばす。奇跡が起こってほしいと、それ以外の絶望は受け入れるからと大声で泣き叫びたいくらい願って願って、真白の光に手を伸ばす。
(最後だよ。……ねぇ、最期、なんだ)
 お別れだよ。
 呟いて、僕は嗤う。奇跡なんて、奈落の底で絶望に囲まれた僕に、そんな美しい出来事、起こるわけがないんだ。
 ほらやっぱり僕が言った通りでしょう?
 まぶしくて、穢れのない苛烈な輝きの中心───あるいは頂にいるあなたは僕のことなんかかすりもしない。

(それでも、さ)
 僕はあなたを見ていたかった。
 応えがなくても、僕を見ていなくても。
 きれいで、まっすぐで、まっしろな魂を持つあなたを。
 僕とは何もかも正反対なあなたに、一度でいいから触れてみたかったよ。


 ちりちりと指の先が痛む。
 それはいつしか僕の身体を蝕んで、冒していく。穢れのない煌めきは、穢れている僕の毒。
 甘美な毒。抗いがたい誘惑を放つ、狂おしいほど甘い甘い毒の香り。
(さ、よ、う、な、ら)
 僕は嗤って、微笑って、たった一度だけ涙を流すことを赦して、紡いだ。
 聴こえないと、僕は知っていたんだけれどね。



 さよなら、さようなら。
 僕が行きたかった、一番輝いている光のなかにいるあなた。
 ……さようなら。
 もう二度と、僕はあなたを見ることはできないから。
 ねぇ、それくらい赦されるでしょう?
作品名:Brilliance of white 作家名:深月