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カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2

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17、ビーバーズ・ロッジ



楽しみなペイトーレイクへ行く前に、山本さんは素敵なことを教えてくれた。
「ぼくたちが見つけたんですよ。ビーバーの巣を。もうすぐ走るとありますからね」
「ビーバーは夜行性ですから、夜しか出てきません。今は巣の中で寝ているのでしょうね。ビーバーの巣のことを『ビーバーズロッジ』と言うのですよ。働きものですから、材料を集めて一晩で作ってしまうのですよ」
ビーバーの巣!?
どんな形なんだろう?
鳥の巣のようなものだろうか?それともモグラの巣?
ありの巣?はたまた熊の穴?
ビーバーさえ、動物園で見たこともなく、写真でしか知らない。どんな巣の中でくらしているものやら想像したこともない。楽しみだなあ^^

「着きましたよ。どこにあるかわかりますか?」
そこは高速道路と並行して走る川との間に林があり、またその林と道路との間にある小さな沼地のようなところだった。
淀んだ水面に、青空と白い雲と木々を映している。  
「どこにあるんやろう、わからへんわ…」
そんなにすぐに分かるような巣だとビーバーにとっては危険このうえない。だから一目では分からないようにしているのだろう。
「少し向こうに小さな土手のようなものが見えるでしょう?」
「ああ、あれ?あれが巣なの?」

水面の一番端に高さ50センチぐらいの土手が見える。それは土を盛り上げたものではなく、小さな木切れがたくさん絡み合って積まれていたものだった。
「あれは、ビーバーズダムといってビーバーが木切れを集めて、泥でこねて作り上げたものなんですよ。ああやって水を堰き止めてダムにしているんです」
「フーン、どうして水を堰きとめるんですか?」
「巣が流されないように、水没しないように、水位を一定にするためなんですよ。そうしておいてその内側に巣を作るんです」
「ほら、あのダムのすぐ前にボコンと丸く高くなっているところがあるでしょう?あれがビーバーズロッジなんですよ」
「あの中にビーバーの部屋があるんですよ。今は寝てるかも知れませんね」
「どこから入るんやろ…」
「入り口はね、敵から狙われないために水の中にあるんですって」

50センチほどの土手が5〜6メートルは続いていて水を堰き止め、そのせき止めた水の中に、木切れや、ちょっと太い幹が土と一緒にこんもりと盛り上がっていた。
ビーバーは家族で暮らすので、けっこう大きいロッジになっている。
両親と子ども数匹。そして去年生まれた子どもも1歳すぎまでは一緒に暮らすのでとても大家族だということだ。
巣があったら、ビーバーに出会えるのかと思ったら、ビーバーは夜行性で昼間は姿を現さないらしい。
この巣も山本さんたちが夜この付近を通っていて見つけたものらしい。
キャンピングカーで来ていたら、夜まで待ってみるのになあ…、残念。

そのほかにビーバーに纏わる話をしてくれた。
以前は先住民はビーバーの毛皮とヨーロッパ人が持ってくる食料や生活必需品とを交換していたこと。その交易所が昨日泊まったジャスパーだったこと。
ビーバーの毛皮は柔らかく保温性があるので帽子の材料に用いられ「シルクハット」と呼ばれるあの丸高帽に使われていたのだった。
「ああ、あの紳士の代名詞のシルクハット!へえ〜ビーバーの毛皮で作られていたのか…」
とても質が良かったので、乱獲され、絶滅寸前までいったようだ。

ビーバーには出会えなかったけれど、どんな姿をしているのかとっても気になったので、帰国してから調べてみた。
漫画やイラストで描かれたビーバーは可愛く愛嬌がある。たまたま昨日買ったお土産のビーバーも前歯を強調していておどけた顔をしていた。

映像で見たビーバーはカピパラの顔をちょっと小さくしたようで、顔に比べ小さな目のネズミ科の動物だった。
二本の前歯が口よりも前にはみ出していて、その歯はほっておくとどんどん延びていくらしい。だから、ガリガリといろんなものを齧る。

ダムにしたりロッジにしたりする木は、10分ぐらいで切り倒してしまうそうだ。
Youtubeには5本の長い指を器用に使いこなしている姿が映っていた。(ひょっとしたら私より器用な手をしているかもしれない。)
葉っぱを齧ったり、木や枝を運んだり、とても働き者だ。大きなものでも両手とあごを使って上手にロッジの場所まで運んでいた。
そうやって一晩でビーバーズロッジを作り上げるらしい。
入り口が水の中。水面に部屋。その部屋に通じるように上手に廊下を作らないといけないのに、本能で作ってしまうなんて、なんて賢いんだろう!

ビーバーが出てこないので、名残惜しかったが、そこを後にして私たちはペイトー湖に向かった。