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ブラックライト・サンフラワー

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「あんたが悪いんだ」
 なんでだ、謹んで反論したい。させてくれ。
「あたしのことキライだったっしょ?」
この女が上機嫌に見える時は最悪に不機嫌てのは、短くないつきあいで理解してる。つまり、こいつは今絶賛機嫌いとわろし、だ。
「あんたみたいのは振り返っちゃだめよう」
近づいた顔から髪が落ちて俺の顔にかかる。アップに耐える小綺麗なツラが、今はとにかくムカついた。
「キライでいてくれなきゃやあよう」
女のよく手入れされた指が俺の鼻を摘む。待て、口塞がれてんのに鼻まで塞がれたら息出来ねえ。ガムテープの臭いも窒息しそうだったが今はしそうじゃなくてする。
「んー!!」
女がにたりと笑う。やめろ、シャレなんねーよ殺す気か!
「ぜーったい言っちゃいけないことってあんのよう? タブーって知ってるゥ?」
語尾をいちいち上げんな、うぜえ。ていうかマジ死ぬ。俺あんま息止めてらんねえんだよバカ女。あーくそ、ガムテで全身ぐるぐる巻きとか。
「キライでいてよ。ひひひ。憎んで蔑んでェ。あ、ついでに指でも折ろっか」
指折る前に鼻から指を離せよ!!
「っと、ォ」
女がやっと手を離した。酸欠にくらくらしながら必死に鼻で息をする。このクソアマ。俺はそこまでされることした覚えはねーぞ。ただ。
「反省したァ?」
今睨んでるこいつに、さっきちょっと笑いかけた、だけで。
「どーせこっち見んなら、そーゆうかみつくよぉな目しててよねぇ。できないんなら一生あっち向いててよう」
女はへらへらしながら俺の背後に指先を向けた。そっちにあるのは壁くらいだろ。
「あたしが見るのはいーの。あんたがあたしを見るのはだーめ」
どういう理屈だよ。意味わかんねーよ、マジで。
「でも無視もだめー」
どうしろと。
「こっち見んな、でも意識はしててぇ。ねー、ずっとずうっと永遠にあたしをキラっててよう」
頭ぶんぶん上下に振って唸ったら、女は口のガムテをべりりと容赦なくはがして指さして笑った。
「うひゃひゃひゃ、四角い痕ができてる! サイテー!」
「ぶっ殺す!!」
「その意気ー」
必死で上半身起こして、頭突きくらわそうとしたらあっさりよけやがった。ちくしょう。
「安心しろ! 指折られるまでもなくキライでいてやるわ!」
「あれーそれじゃやっぱり指折ろう」
「はぁ!?」
マジでなんなんだこの頭おかしい女は。
「おい折るなよ!? ちょっ指つかむな! 逆に曲げんなあああ!!」
下手に動くと突き指しそうで暴れられねえ。多分フリだ、うんフリだ本当には折らねえ、よ、な?
「気ィ許した顔なんか、二度と見せないでねェ?」
「わあったから手、離せよ! 痛え!」
叫んだら、女の表情がすっと消えて指の力が緩んだ。見下すみたいな冷てー目。……やっと機嫌直ったか。
「忘れたら両足に穴あけるからねえ。ねェ? あたしの太陽」
だれがお前のだ、笑顔一つまともに受け止められねえバカ女が。お前なんか一生目の敵にしてやるから感謝しろ。



(了)