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7月の夜、公園にて。

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夜の公園に独り佇む。気分は最悪だ。
 無事高校受験を終え、高校生になった。時間の流れはあっという間。もう7月だ。
「……はぁ、憂鬱」
 大人は皆言う。高校生活は一番楽しいと。
「学校、嫌だな」
 どこが楽しいのだ。全然楽しくない。嫌な事ばかりだ。
 学校生活にいじめは付きもの。そんなの、分かっていた。知っていた。だけど自分がその対象になるとは思ってもいなかった。
 悪口は慣れた。嫌がらせも慣れた。ただ、暴力はまだ慣れない。
「明日も学校、か」
 痛いのは嫌いだ。まあ、誰だって嫌いだろう。痛いのが好きな人間は少数派だと思う。
 痛みには慣れない。身体中が痛くなって、いつの間にか内側も痛くなる。そうして胸が痛くなって、痛みを忘れようといけない事をしてしまう。
 左手首に眼をやる。そこには痛々しい裂傷の痕。これは自ら付けたものだ。所謂自傷行為。最低な事だって分かっている。だけど止められない。
「……痛いの、嫌いなのに」
 そこから流れる血を見ていると、嫌な事を少しだけ忘れる事が出来た。
 これをあいつらが知ったらどんな表情を浮かべるか考える。あいつらは弱い。きっと罪悪感に押し潰されるだろう。そう考えてみると自然と笑みが零れた。
 胸ポケットに入れていたカッターを取り出す。ギチギチギチ、と刃を出し、手首に添える。少しずつ力を入れれば手首に痛み。それに耐え、もっと力を入れようとする。すると、肩に何かが乗った。
「おい君、何してるんだ?!」
 人の手だ。振り向けばスーツ姿の男が居た。
「…ッこれは……」
 男の視線が手首に注がれる。
「何で、こんな」
 言葉を詰まらす男。
「……おっさんには関係ないでしょ」
 嫌だ。こういう人は苦手だ。心配するような眼差しは優しげなもの。偽善者臭い。
 右手に持ったカッターに僅かに力を入れる。すると男に力強く手首を掴まれた。痛い。人から与えられる痛みは大嫌いだ。
「何かあったのか?吐き出しちまえ。おっちゃんで良かったら聞くぞ?」
 偽善者。嫌だ、嫌だ。
「……偽善者」
作品名:7月の夜、公園にて。 作家名:桐伐り