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ちかのにな
ちかのにな
novelistID. 31054
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君が悪い

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君の眉間にシワが寄るたび、君の指が机を叩くたび、僕の中の欲情が激しく駆け巡る。


君が悪い、君が悪い、君が悪い。


君が僕の前でそうやって隙を作るからこうなるんだ。
僕が堪えていたもの全て、君が掻き乱した。
ぽっかりと僅かに空けた口元。
嫌になまめかしく艶めいた唇。
悩んだ時、頭を抱えるように両手で髪を掻き上げるその仕草。

全てが悪い。

僕は向かいに座る君の頭を抱えるその両腕を掴むと、思いきり壁へと押し付けた。
唐突な行動への驚きと打ち付けられた衝撃に耐え切れなかった
君の華奢すぎる体が悲鳴をあげ、小さく唸るのが聞こえる。
俯きがちの君の小さな顔を下から覗き込み、すくい上げるようにして唇を重ねた。
衝撃で飛んでいた意識は口付けによってそのなりを取り直し、
普段は伏しがちな目を見開いた君は、声にならぬ声で叫ぶ。
それがあんまりにもうるさいから、今度は舌を差し入れた。
無理矢理君の舌に絡み付けば、君は尻込みして咥内を逃げ惑う。
もっと、もっと・・・我が儘な子供のように君を執拗に追いかけ、
もう息が出来ないという限界に達した時、ぴったりとくっついて
離れまいとしていた唇を、名残惜し気にはがした。
ふぁっという妖しい吐息を漏らした後、なにかをいいかけた君は酸欠なようで、
その華奢な肩で必死に息をして呼吸を正そうと努めている。
そんな君がまた欲しくなって、君の頬へ再度手を伸ばしたが、
その手は君によって弾かれ、間抜けにも空を掴んだ。
気がつけば伏していた視線はまっすぐに僕を見上げていた。
君はいつもの涼しげな表情と打って変わり熱の帯びた、
しかし酷く冷淡な眼差しで僕を見つめている。

違う、僕の求めていたものじゃない。

背筋の凍るようなすざましい侮蔑を孕んだその瞳に、ただ後ずさるしかなかった。
すっかり呼吸を整え終えた君は、僕をかわして部屋を出ていく。
瞬きをすることすら、息をすることすら出来ないでいる僕をよそに、
扉の閉まる音が響く中で君が何かつぶやいた気がした。






「・・・こんなの、愛じゃない」



僕が欲しいのは、君じゃなかった。

作品名:君が悪い 作家名:ちかのにな