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てっしゅう
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レイプハンター 前編

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「レイプハンター」前編

 第一章:蘇生

2001年の夏から事件は始まる。
友人と3人で軽井沢に出かけた翔子は眠れない夜を迎えてパジャマ姿のままペンションの庭に出て
夜空を見上げていた。
「あっ!流れ星だ」そう小さく叫んで今にも自分にぶつかりそうに落ちてくる光に目をそらした。

「近くに落ちたのかしら」辺りを見回すが、何も気配は感じられなかった。
さわやかな風が肌を気持ちよく刺激する、白樺の木の匂いが優しく体を包む、そんな気分の良い
夜だった。10分ぐらいその場に居て翔子は部屋に戻った。

一緒に旅行に来たのは大学の同級生だった玲と舞。二人ともOLをしていた。翔子は親の仕事の手伝い
をしながら、海外への留学を考えていた。25歳までに準備を整えて、ニューヨークへワーキングビザで
仕事を探しに行く予定にしていた。知り合いに紹介されてモデルの手伝いもするぐらい均整のとれた
身体と小さくまとまった顔立ちをしている。玲と舞はいつもそのことを羨ましがって自分たちとは違う
ことを愚痴っていた。

朝になって食事の時に翔子は昨日見た流れ星の事を話した。
「私ね昨日眠れなくて外に出たの。そしたら流れ星が落ちてきてびっくりしちゃった。何かいいことが
起こるかしら?」
「へえ、そんな事があったんだ。落ちてくるなんてそれ、星じゃないよ」玲は返事した。
「じゃあ何?玲」
「解らないけど、流れ星って言うのは隕石が地球の空気抵抗で燃えて光るのよ。目の前に落ちて
なんか来るはずが無い」
「解ってるわよ、そのぐらい。何の光だったんだろう?」
「それって人魂だったんじゃない?」舞は笑いながらそう言った。

「えっ!・・・幽霊って言うこと!」
その場で食事をしている泊り客の全員が翔子の言葉に反応した。

「バカな!舞、何言っているの。幽霊なんて存在しないし、縁起でもないわ」玲の言葉に翔子はちょっと
安心した。
「そうよね、ありえないわよね。何だったのかしら、本当に不思議」
「寝ぼけていたんじゃないの?」
「舞!わざわざ外に出たんだよ。寝ぼけているわけ無いじゃん。階段下りて行ったんだから」
「そうか・・・まあ、流れ星って言うことにしておいたら。夢があるし」
「うん、そうよね。願い事すればよかった。叶ったかも知れないのに、残念だったわ」
「何を願うの?彼?留学?」
「玲だったら、何を願うの?」
「あなたに聞いているのよ、逸らして・・・私はもちろん結婚よ。舞は?」
「私は母の病気が治りますように・・・かな」
「そうね、舞のお母さん入院されていたのよね。私は、留学かな」
「ご飯食べたら、その流れ星が降ってきた辺りを探そうよ。本当に落ちているかも知れないから」舞は二人に
そう提案した。

「そうね、どうせ何も無いと思うけど散歩がてらに行って見ましょうか」玲も賛成した。

お盆休みとあってまだ8時半ぐらいの時間だったが、ペンションの周りには散歩する人や、行き交う人達で
混雑していた。翔子が流れ星を見たと言う場所は裏庭だったので、辺りには誰も姿は無かった。草をかき分けながら
三人は「流れ星」を探し始めた。
「何も落ちてなんか無いわね。戻りましょうか?」玲は諦めたように言った。
「そうね、この先は草が多いから危険ね。見つけることは難しい」
玲や舞の言葉に促されるように翔子も諦めようとした時、足元にガラス玉のようなものが落ちているのを発見した。

「玲!舞!何かあったわ・・・ほら!これ」手にとって二人に見せた。
「それって単なるガラス玉なんじゃないの。ちょっと見せて」玲は手で汚れを拭ってじっと眺めた。
「玲!どう?中が見える」舞が聞いた。
「う〜ん、何も見えないよ。やっぱりガラス玉だ」
翔子はがっかりしながら、それでも記念にと持ち帰ることにした。


宇宙が誕生してガスが広がったいろんな場所でやがてチリが集まって大きな塊となり、圧力と熱で恒星になったり
惑星になったり、小惑星になったりして重力と温度のバランスが取れた地球のような星が誕生していた。太陽系は
その姿を整えてはいたものの生命が誕生するにはまだ程遠かった。宇宙で最初だったのかどうか解らないが、
生命が誕生して、進化を遂げてその計り知れない創造力に自らを壊してしまう結果となった惑星があった。

知的生命体であった彼らは自分たちの文化を残す為に永遠の生命を手に入れて、その身体と引き換えにすることを
生み出した。一人の科学者が考えた意識生命体への移行は誰もが望む歴史的大発明ではあったが、政府に盗まれ
未完成のまま実験が進められてしまった。肉体を失い意識だけの生命と遺伝子が結合するプロセスにミスがあり
時間とともにすべてが終了してしまう結果が生まれ惑星から生命体は消え去ろうとしていた。

発明した科学者は改良したプログラムにより己の身体を意識に変えそのすべてをコピーした遺伝子データを小さな
ガラス玉に記憶させ封印した。
自分たちと同じような惑星が見つかればそこに最初に自分のコピーを誕生させ、自らの頭脳で今度は理想の国家を
建設しようと願いを込めてのことだった。やがて誰にも知られること無く宇宙の彼方に放たれたガラス玉は数億年の
時間を経て地球にたどり着いていた。祥子が見た流れ星はこのガラス玉が落下するときに発した明かりだったのである。
そう、ガラス玉ではなく遺伝子データの詰まった未知の生命体エネルギーが封じ込められた宇宙船だったのだ。


軽井沢の旅を終えて翔子は自宅に帰っていた。両親は中央線吉祥寺の近くで古くから酒屋を営んでいた。
配達の仕事を少し手伝いながら、殆どは英語の勉強に励んでいる祥子の毎日だった。軽井沢から持ち帰ったガラス玉を
きれいに洗って、ベッドの横にあるテーブルの上に飾っていた。そこには小さく「2001/08/13軽井沢で発見」と
書かれた紙が敷かれていた。朝に昼にそして夜にその玉を翔子は手にとって眺めていた。
「不思議だわ、少しずつに感じるけど色が変わってきている。どうなるのかしら」
ガラス玉の外壁から地球の状況がインプットされ、眠らされている生命体に安全であることを知らし始めていた
サインだった。数日が経って、翔子は玲と舞に変化を見せる為にガラス玉をハンドバッグに入れて、出かけようとしていた。

その日が翔子の運命を決める日になった。


夕方から雨が降り出して翔子は車で来れば良かったと悔やんでいた。三人が集まる約束をした舞の自宅は郊外の
それも丘の上にあったからだ。
「もう、横浜まで来てこんな目に遭うなんて・・・車で来ればよかった」
そう思った瞬間一台の外車が歩いている祥子の横に止まった。
「お嬢さん、こんな雨の中大変でしょう?上にある教会まで行きますからお乗りになりませんか?」
運転席の顔を覗き込んだ翔子は頭の中で否定しながら、ずぶ濡れが嫌だったのか
「途中まで乗せていただければ助かります」と答えてしまった。
内側から助手席を押し開けて、「どうぞ」という誘いに、助手席に乗り込んだ。
「酷い雨降りですね。こんな時にどちらへ行かれる予定なのですか?」
「はい、翔子と言います。この先にある友達の家に向かうところでした」