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見えない

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 梓が森に入ってから三十分。妖気の持ち主を探すというやり方で、何匹かに聞いて回ったが、目撃情報は一切なかった。大半には逃げられたのだが。そして、気付いたときには同じ木の周りをぐるぐると回っていた。
「近くにいるのか・・・?」
 何かの気配を感じて振り返った彼の目の前にいたのは、派手な髪色の少年だった。染め抜いた結果だろうか?金と銀が混ざったような色は、日光にあたってきらめいている。きれいというより、ただまぶしかった。おおよそ、ただの人間には見えない。
 しかし、彼の着ている服はいかにも現代チックだった。妖怪であれば、多くは和服、渡来してきたような妖怪でも、時代感のあふれる服装をしているものだ。
「・・・何者だ?」
 梓が眉間にしわを寄せて訝しい顔で見る。けれども少年はそれに答えなかった。
「お前のその妖気、どこで手に入れた?」
 梓は少年をにらみつけた。悠然とたつ少年は、梓がとっさに隠したペンダントに目を向ける。そして確信をもつ。
「それか!」
 少年は梓に飛び掛ってきた。それを交わすと、ペンダントをもつ手に向かって、残っていた足ではじこうとする。梓はくるりと回転して交わすと、ペンダントをズボンのポケットにしまう。捜索はもちろん一時中断だ。一定の距離を保ったまま、にらむ相手に梓は再び尋ねた。
「お前は何者だ!」
「説明すれば、ペンダントを渡すのか?」
「・・・場合による」
 もし相手が妖怪なら、もちろん渡さない。祓い屋なら考えるが、若く優秀な祓い屋がこんなところにいるとは思えない。
 梓は少年をじっくりと観察する。色白な肌からあまり健康的には見えない。服装は現代風と一言に言えど、やっぱり制服のようだ。髪と肌を合わせて、ここまで制服の似合わない人間がいるだろうかと思うほど合わない。身長は梓よりは大きいが、サトキよりは小柄だろう。程よく筋肉がついているので、先ほどの運動神経に不思議はない。
 梓が一番気になったのは、彼の耳についている器具だ。補聴器のようにも見えるが、何らかの文字が書かれている。それが両耳についており、何のためか小さなランプまでついていた。
 観察されていることに気付いているのか、しばらくの沈黙のあと、やっと彼は口を開いた。
作品名:見えない 作家名:神田 諷