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表と裏の狭間には 十三話―新規参入―

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さて。
四月。
………三月?思い出したくもないね。
四月。
春。
それは、出会いの季節。
桜は咲き誇り、舞い散り、墨で染めて舞い上がる。
…………なんかゴメンナサイ。最後のほう。
さて。
冗談はさておき。
今日は、我が光坂学園高等学校の、入学式である。
俺は二年だろうって?
君ら、忘れているとは言わせない。
俺には、一つ下の妹がいるのだから。

「紫苑!雫ちゃん!こっちこっち!」
俺たちの姿を見つけたらしきゆりが、叫びながら手を振っている。
その後ろには、いつもの仲間の姿がある。
「よう。待った?」
「待ったに決まってるじゃない!遅いわよ!」
あー、怒ってる怒ってる。
「雫ちゃん。似合ってるわよ。」
ゆりは俺に挨拶するよりも先に、雫に話しかけた。
雫は。
今、光坂の制服を着ていた。
まあ、制服についてはまた語ることもあるだろう。
「あ、もう時間がないの!」
「やっべ、怒られるっすよ!」
「それはごめんだな。」
「お兄ちゃんが寝坊したせいなんだよ!」
「俺!?」
「なんでもいいが急ぐぞ!オレたちはともかく雫ちゃんが欠席じゃかなりヤバイだろ!」
なんて。
こんな日も、いつも通りドタバタとした慌しい時間を送ることになりそうだ。

去年も行ったコンサートホール。
そこでは、今年も我が校の入学式が行われている。
在校生の参加は、義務のある生徒会など以外は自由参加なのだが。
部活メンバーを求める人間などのお陰で、意外と人数が集まる。
つまり。
中に入れないこともあるわけで。
俺たちは、閉め出されてしまっていた。
「チッ………まずったなぁ。」
「本当ね。すっかり忘れていたわ。」
「毎年在校生の参加はハンパないっすからねぇ。」
「そうは言ってもなぁ。」
「紫苑は親族で入場できたでしょ?」
「まぁ、そうなんだけどさ。」
「じゃあそれで入ればよかったの。」
「でも、お前ら放置して俺だけ参加するのもなぁ。」
「でもさー。」
「……今更言っても仕方ないのでは?」
「それもそうだねー。まぁ、それよりパーティのプランを考えようよ。」
「理子の言うとおりね。どこでやる?」
「ケーキバイキングを所望するっすよ!」
出た。
最近は慣れて着目しなかったけど、輝の甘党は相変わらずだ。
「お昼にケーキバイキング?まあ、いいんだけどね?出来ればその、米と肉と、野菜をきちんと食べたいなーって。」
「俺もゆりに賛成だ。食事はきちんと摂りたい。」
「えー………。」
「健康は大切なの。」
「……食事はきちんと。」
「ちゃんと食べようぜっ。」
「おぉ。」
総叩きだぞ。
「焼肉いこっか!」
そしてそこで焼肉かよ。
まぁ、異論はないけどな。
「反対はないでしょ?」
誰も反対しなかったので、それで決定となった。

で。
入学式が終わって。
それで、既に三十分である。
「雫ちゃん、遅いわね。」
「遅いな。」
「紫苑、携帯は?」
「駄目だ、通じない。」
携帯にさっきから掛けているが、通じないのだ。
「……何かあったのでは?」
「あぁ。ちょっと探すか。」
煌がそう言って、分担を決めようとしていた時だ。
俺の携帯に、着信があった。
雫の番号が表示されている。
「雫か!?」
『よう。アンタが『お兄ちゃん』かい?』
帰ってきたのは、知らない男の声。
「テメェ、誰だ。」
明らかに、敵意がむき出しの声に対し、俺も自然と敵意を籠めた声を発してしまう。
ゆりたちが、何事かとこちらを向く。
『アンタの大事な大事な妹サンは預からせてもらったぜ。アンタの彼女さんも一緒だ。どうするよ?んん?』
なんだと………?
雫と、蓮華が、誘拐?
俺は懐から電子メモ帳を取り出すと、用件を書いてゆりたちに示した。
《雫と俺の友人が誘拐された》
ゆりたちは、目を剥く。
ゆりも電子メモ帳を取り出すと、文を打って俺に見せた。
《どういうこと?》
《ちょっと待て》
「どういうことだ?」
『だから言っただろうがよぅ。アンタの妹ちゃんと彼女ちゃんを預かったってよぉ。』
「要求は?」
『そうだなぁ。とり合えず金だよ、金。百万くらい?』
「………………。」
『また連絡するぜ。』
「待て。」
『あぁん?』
「二人の声を聞かせろ。」
そう要求すると、相手は『チッ………ちょっと待ってろ。』と言って、なにやらごちゃごちゃとしたやり取りをしていた。
少しして、電話口から、悲鳴が聞こえてきた。
『きゃっ………。お兄ちゃん!』
「雫!」
『わ、私は大丈夫………。蓮華さんも、一緒。』
『蓮華です。一応今は無事です。』
「お前ら無事なんだな?」
『きゃっ……!おぅおぅ!もう終わったか?また連絡すっから、それまでに金用意しとけや!』
そのまま、ブチッと電話は切れてしまった。
俺は、動揺を押し隠す。
アークで、結構抗争やら銃撃戦やらに巻き込まれ、こういうことには耐性が出来ている。
そうでなければ、俺はすぐに錯乱していただろう。
「紫苑!どういうことなの!?」
「ああ。今説明する。まずは、時間を置いて俺の家に来てくれ。どうせ知ってるんだろ?」
俺がそういうと、ゆりたちはバツが悪そうに苦笑した。

「…………結構広いわね。」
それが、俺の部屋に入ったゆりたちの感想だった。
「まぁ、元々家族用に売られていた部屋だからな。俺と雫の二人じゃ、広すぎるくらいだ。」
そう話しながら、俺はリビングに全員を案内する。
「麦茶でいいか?」
「……そんなことより事情を話してください。」
礼慈が最もなことを言う。
「そうだよ。さっさと話してくれないと、わっちらはどうにも出来ないじゃないか。」
「それもそうか。」
俺は全員を座らせると、事情を話す。
「さっきも話した通り、雫と、俺の友人が誘拐されたんだ。」
「それは聞いた。次。」
「要求は百万。場所は本日深夜、中央公園だ。」
「百万だと!?」
煌が大声を上げる。
「いや、まあ、百万は用意できるんだけどね。」
「じゃぁ、問題は………。」
……………………。
ところで。
誘拐にも、金が用意できることにも大して驚いていないこいつらって………。
「雫ちゃんと、もう一人の子をどうやって奪還するか、なの。」
「部隊を動かすか?」
「それは無理よ。身内の誘拐とはいえ、敵がプロじゃない以上下手に動かすと大事になるわ。」
「じゃあどうするっすかねぇ?」
「わっちらで制圧すんのが手っ取り早いっしょ。」
「……武装の上、突入しますか?」
「銃器の装備は無理ね。精々が閃光手榴弾(フラッシュ・グレネード)でしょう。あとは徒手空拳で制圧しなきゃ。」
「チッ……これだからカタギの制圧は面倒なんだよ……。」
「煌、アンタ完璧に犯罪者の思考になってるわよ。」
「敵は素人と見て間違いないわね。人質を二人もとるなんて馬鹿としか思えないわ。」
俺が発言していないのに、救出の相談がどんどん進んでいく。
良くも悪くもこいつらはプロだよ。
「深夜に中央公園。中央公園のどこ?」
中央公園とは、この光坂の内部にある大きな公園だ。
昼間は子供から老人まで様々な人々に愛される憩いの場だが、夜は一変する。
公園の面積が広すぎるため、夜になり人がいなくなり、公園の中央部は完璧な無人となる。
つまり。
取引には絶好の場所だ。