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風間糀ニ郎
風間糀ニ郎
novelistID. 30887
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写真

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それはもう、日が翳り始めた穏やかな秋の日の夕方だった。  妻も子供も出かけており、日曜日とあって、住宅街のここら辺りでは、みんな遊びに出かけてでもいたのだろう。 訪問客とて無く、ゴロゴロと日がなテレビを眺めてなんとなく一日が終わろうとしていた。

  小腹が空いたな、、と思いながら寝そべっていて、なんとなく戸棚に目が行った。

 長年、開けたこともなく、そこだけ時間が止まったような我が家の一角。  どっこいしょと立ち上がり、戸を開けてみた。

 そこは古いアルバムなどが仕舞ってある場所で、他には娘の「ヘソの緒」やら旅行にでかけた時のお土産なども収まっている。

 妻とはもう結婚20年目を過ぎ、お互いが居ても居なくても、あまりどうということもなくなったのだが、今夜のご飯の心配もしながら、何となく新婚当時のいわゆる「いい時代」の映像でも見てみようと思い立った。

 懐かしい妻のピンクのウェディングドレス姿。  若かった二人の写真。 そして、集合写真・・


 ああ、この叔父も死んじゃったなぁ・・ この従兄弟は まだずいぶんと髪があったなあと、とりとめもなく思ったり、クスっと思い出し笑いも出たりで、ページをめくっていた。

 大方がお決まりの披露宴の様子を一通り眺めて、、、

 急に 「あれ?」と思った。  なんかヘンだな・・・。 もう一度「集合写真」のところを出してみた。 何か前に見た時と感じが違う。   なにしろ大勢で披露宴をやっていた時代だ。

 小さな顔を、これは、秋田の叔母で、 これは、先輩の中山さん、 と一人一人確認しながらいく。

 妻の友人たちの顔は、当時に何度も彼女から「これはだれ。 これは会社の同僚の。。」と聞かされていたから、名前はともかく顔だけは覚えていた。

 そして、 結局どうしても名前は勿論、見覚えのない人が ひとり・・残った。

 「これ、誰だ・・・??」

 なんとなく背すじに寒いものが走った。


 なんのことはない、私と妻の間の「やや斜め後ろ」の不自然な位置に、女性がいた。 

 不自然、というのは、それがまるでそこだけ遠近の感覚がおかしいと思ったからだ。

 前にこれを見たのがいつだったか忘れてしまっていたが、そんなこととは関係ないだろう。  普通、「ご両人の間」で写真に収まる「大人」がいるのは不自然だ。

 そう、前に見た時にはこんな女性はいなかった。 間違いない。

 どうして気づかなかったんだろう・・とまず考えた。


 いや、その前にこんな不自然な位置関係でプロの写真屋さんが、シャッターを切るはずもない。

 そして、背すじが寒い、と感じたにはもう一つ理由があった。

 「誰かに似ている」と思ったからだ。 年の頃なら三十年配だろうか。 エリの辺りをみると決して正装ではないし、むしろ普段着か、もしかしたら・・・パジャマか部屋着?のような恰好だが、上半身のその半分くらいしか写っていない。

  どこか見覚えがあるような顔立ちのその女性は,一体、、 誰だ・・?・・・

 表情は笑顔だ。 それも、とても親しげに微笑んでいる。

 食い入るようにじっと見ていると、突然、

 
 「ただいま~!」   と、妻の声がした。  「わっ!!」と体が飛び上がるほど驚いた私は

 なぜか大急ぎでアルバムを片付けた。   「おかえり。」  「ウン。 幸子は?」

 「ああ。まだだ。  電話もないし、もうそろそろ帰ってくるんじゃないか?」  「そう・・」

 それでおしまい。  妻は 「着替えたらすぐ支度するわね。」と言いながら二階への階段へ向かって行った。

 正装で出かけていた妻の後姿を見ながら、今夜は寝つけない夜になりそうだな、と思った。


 後で思えば、この時に 妻に見せてみれば良かったのだが。。


   つづく
作品名:写真 作家名:風間糀ニ郎