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てっしゅう
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「神のいたずら」 第二章 就学

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クラスが決まり、碧は一年一組となった。担任の先生が紹介され、各教科の先生の名前も教えてもらった。小学校と違って席は1人掛けになっていた。席替えは抽選で決めると多数決で決め、それぞれがくじを引いて指定の席に座った。碧は窓側の前から二番目だった。後ろは女子、右隣も女子、前は男子という席で始業式からスタートする。

一人一人簡単に自己紹介をする時間になった。前の席から順に始めた。
自分の番は直ぐに来た。
「小野碧です。初めに言わせて頂きますが、先のトンネル事故に遭いまして記憶の一部を後遺症で無くしました。思い出せないことがありますので、教えてください。これから一年仲良くしてください。よろしくお願いします」

みんなは、じっと顔を見つめてきた。ものめずらしそうに見る雰囲気だった。気にせず着席した。全員が紹介を終えたところで、担任が始業式の日にクラス委員を選挙で決めると発表して、ベルが鳴った。
「今日はこれで終了です。8日の始業式にはみんな元気に登校してください」
それぞれに母親や父親のところに歩み寄って家路に着いた。碧は由紀恵と手を繋いで校門を出た。真新しい制服を着た姿は何処から見ても新一年生にしか見えなかった。自分は1月生まれと教えられたので、4月生まれのクラスメイトと比べるとずいぶんと幼さが残ると感じた。気にしないでもいいようだが、そのことでいじめられたりはしないだろうかと母の由紀恵は心配していた。

「お帰り!碧、どうだった?何組になった?」
姉の弥生は家に帰るなり、そう尋ねてきた。
「うん、一組だよ」
「担任はだれ?」
「清水先生」
「私のときと同じだ!ちょっとイケメンよね?」
「誰が?」
「言ったじゃない!清水先生のこと」
「そうか・・・気にしてないから解んない」
「もう、女の子でしょ!普通気にするのよ」

「弥生、もう辞めなさい。そんなこと聞いて・・・」由紀恵は笑いながらそう制した。
「イケメン?」清水先生が・・・そうかも知れないって碧は今になって思い出していた。

中高生女子の話題はなんと言っても恋バナだろうと隼人は思っている。自分が非常勤の講師をやっていた中学でもそうだったからだ。弥生が言った清水先生も学校内では噂されている一人らしい。歳は自分と同じ、いや、隼人だったときと同じぐらいに見える。

「お姉ちゃん、清水先生って独身なの?」
「多分・・・今幾つだろう・・・私が3年の時に赴任してきたから・・・26か27だろうね」
「そう・・・始業式終わったら、話ししてお姉ちゃんの事聞いてみる。知っているかもしれないから」
「初めての担任だったからどうかしらね。多分顔は知っていると思うけど」
「先生って教え子はみんな覚えているよ」
「そんな事何故解かるの?」
「そういう職業だから・・・さ。綺麗な子とかは特に覚えている、ハハハ・・・」
「じゃあ、弥生のこときっと覚えているはずだわ!」
「え~自信家!ん~・・・どれどれ」そう言って碧は弥生の足元からずっと顔までを見上げた。

「何じろじろ見ているのよ!嫌な子ね・・・」
「お姉ちゃん割とおっぱい大きいね・・・碧もそうなるのかな・・・」
「バカ!何処見ているのよ・・・あんたはずっとぺちゃパイよ、きっと、ハハハ・・・」
「いじわる言うのね・・・清水先生に言い付けるから・・・ね」
「やめろよ、関係ないじゃないか」
「じゃあ謝って!お姉ちゃんみたいになるって言ってよ」
「今からそんな事気にしているの?変よ」
「女らしくなりたいの・・・子供に見られるのはイヤだから」
「碧は身体は子供だけどやっている事は私なんかよりずっと大人じゃない?お母さんだってその事凄く喜んでいるから、羨ましいって思うよ」
「お姉ちゃん・・・碧のこと好き?」
「当たり前じゃない!碧は?」
「うん、お姉ちゃんが好き・・・記憶が戻らないから言い方が変だけど・・・ずっと仲良くして欲しい」

妹にそう言われて弥生は死んでしまうんじゃないかと心配していたあの日のことを思い出した。ぎゅっと抱き寄せて、「二人はずっと一緒だから」そう言ってくれた。碧は嬉しかった。心からそう感じた。

「碧はもうお友達が出来たの?」
「ううん、まだ。誰とも話ししてないから」
「そう、私のときもそうだったから言ってあげるけど、弥生も碧も髪が茶色いじゃない少し・・・だからクラスの子からそのことでイジメに遭うかも知れないよ。染めているって・・・」
「そういえば・・・ママは黒いのに私達って少し茶色いね。どうしてなの?」
「パパの髪の毛知っているでしょ?」
「染めていること?」
「ううん、染めてないのよ。地毛」
「うそ!何で?」
「忘れたの?ハーフの半分だから・・・クォーターなんだよ」
「だからなのね、じゃあ色が黒くなくても仕方ないことだから話せば分かってくれるんじゃないの?」
「そう思うでしょ?私も説明したけど・・・染めていることをごまかしている、ってなじられたの。先生が理由をみんなの前で言ってくれるまで続いたのよ」
「お姉ちゃんその時辛かった?」
「少しね・・・小学校の時から仲良かった子もその仲間に入っていたから」
「ふ~ん、そんな事言うんだ・・・心配しないで、碧は平気だから。変な事いう奴はぶん殴ってやるから・・・」
「大変よそんなことしたら・・・学校に行けなくなるから、止めてよ」
「しないよ。イケメン先生に最初に言っておくから。お姉ちゃんにそう聞かされたって」
「それがいいわ。じゃあ、わたし塾があるから碧、留守番頼むね」
「うん、行ってらっしゃい・・・」

弥生が見えなくなるまで玄関から手を振って見送った。

今はこの姉に何でも相談しようと思っていた。自分のことを一番考えていてくれるからだ。家族のこと、友達のこと、そして女としてのこと。入れ替わりに由紀恵が帰ってきた。

「ママ、お帰りなさい」
「碧、一人だった?」
「うん、お姉ちゃん塾へ行ったよ」
「そう、鍵掛けてないといけないよ。誰か入ってくると危険だから・・・約束して、ママ心配だから」
「解かったよ、明日からそうするから。心配性なんだなあ」
「当たり前じゃない!大切な娘なんだから・・・何かあったらパパに申し訳ないし」
「ねえ、パパってクォーターなの?」
「そうよ、知っていたでしょ?」
「記憶から消えてるの・・・」

碧はそう言って由紀恵から聞こうとした。

「パパのお母さんはもう亡くなったけどハーフだったの。おばあちゃんが満州から引き上げてくる時にロシアの兵隊に辱めを受けて生まれたって聞いたわ」
「そんな事があったの・・・戦争って残酷ね。私やお姉ちゃんの時代まで傷を残すんだから」
「傷ってなに?」
「お姉ちゃんが言ってたの。髪が茶色いからいじめに遭ったって・・・私も気を付けるようにって話してくれた」
「そうだったの・・・初めて聞いたわ。知らなかった、弥生にそんな事があっただなんて。母親失格ね・・・」
「違うよ、お姉ちゃんママに心配掛けたくなかったから言わなかったんだよ」
「言われなくても気付いてあげるのが母親の役目なのよ。ちょうど仕事を始めた時ぐらいだったから・・・行き届かなくなっていたのね。これからはもっと気配りしなきゃね」