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Like a dog 2

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1.最悪の早朝



ふわふわとした柔らかいものを胸に抱いて眠る。
もしくは、大きなずんぐりとしたからだに腕を伸ばして、すがりつくように眠っていたのかもしれない。
それは抱きしめると暖かな午後の日差しのような匂いがして、僕はいつも幸福だったんだ……。







毛足の長い毛布のような手触りを楽しむように指で毛並みを撫でると、どこからか「クスクス」と笑う声がした。
まだ昇りきっていない朝日が薄っすらとしか差し込まない自室の監督生専用の部屋で、ドラコは違和感を覚える。

寝起きが悪い彼は、いつもほんの少しでも長くベッドに潜りこんで、惰眠を貪っていたかった。
外気が冷たくなってきたのもイヤだし、授業なんかも嫌いだし、雑用ばかり押し付けられる何でも屋の監督生の仕事も、みんな面倒くさいことばかりでうんざりする。

(このまま眠っていたい……)
もぞもぞと動いて、暖かいほうへとからだを摺り寄せると、フワフワの毛並みを撫でる。

「くっ!たまんない……」
笑い声に続く、誰かの言葉まで聞こえてきて、ドラコはギョッとした表情で頭を上げた。
するとハリーのやに下がった顔がどアップで目の中に飛び込んできて、無意識に自分が相手の髪の毛を撫でていたことに愕然となる。

ドラコの少しぼんやりとした顔が鋭く引き締まり、一瞬で目覚めたらしい。
「ハッ、……ハリー、なんでお前がここに!!」
相手を指差し、瞳を大きく見開いて思わず大声で叫んだ。

「ああ、ちょっと、ドラコ。声が大きいってばっ!!」
慌ててドラコの口元を押さえる。
「―――しーっ。静かにして。いくら朝が早くても、そんな大声を出したらみんなが目を覚ましちゃうから、ねっ」
最後の語尾の「ねっ」を少し上げぎみに可愛い声を出し、口の前で人差し指で「シッ、静かにして」という口止めのポーズをして、ハリーは右に小首を傾げた。

そのぶりぶりした仕草に、ドラコの眉間にシワが寄り、ますます機嫌が悪くなっていく。
「「ねっ」じゃないだろ、「ねっ」じゃ!!お前がそんな、ぶりっ子をしても、ちっともかわいくないんだよっ!男のくせに、まったく!しかも勝手に僕の部屋に入ってくるなっ!」
「えーっ、いつも僕を部屋に迎え入れてくれるくせに。やさしく僕を抱き上げてくれて。ドラコってば。忘れたの?」
子犬のときの演技が抜けないのか、上目遣いの瞳で瞳をウルウルさせて甘えたような声を出す相手の姿に、ドラコの顔が怒りでピクピクと引きつった。

「誰がお前なんか入れるものか!」
「犬の僕の姿を忘れたの?」
腕ゆっくりと組み、尊大に相手を見下ろしてドラコはゆっくりと告げる。
「―――犬ならな。犬なら、どんな犬でも部屋に入れてやるよ。でもな、犬以外なら別の話だ。特にずうずうしくて厚かましい、お前なんか真っ平御免だ!」
「犬ならよくて、僕なら嫌って、本当ひどいよ、ドラコ!!」
「ひどいも何も、お前と犬とだったら、かわいさなんか天と地ほど、月とスッポンほど違うんだ。覚えておけっ!!」
きっぱりと宣言すると「さあ、出て行け」と、相手をベッドから容赦なく足で蹴り落とした。
「いてぇー……」

シーツから転がり出て床に落ちた相手を見て、ドラコはまた怒涛のような悲鳴を上げる。
「ぎゃーっ!はだかだー!何でだ?うわーっ、気持ち悪い!勘弁してくれよっ!」
げーっと吐きそうな顔で、気分が悪そうにドラコがうめいた。

「……なんでって、だってパンツ穿いた犬なんている?見たことないでしょ、ドラコも」
「見たことなんかないけど………」
ドラコは何かを考えて、ハッとした顔になる。

「も…もしかして、―――もしや、マッパなのか、ハリー?いつも丸裸で、犬に変身していたとか?」
「当たり前じゃん」
「ひぃーっ!いーやーだーっ!嘘だと、悪い冗談だと言ってくれ!!ついでに「じゃん」なんて、スカした言葉を使うなっ!さらにムカつくから!」
ショックでハーッハーッと荒い息のまま、相手を涙目でにらみつけた。

ハリーは余裕で、口笛でも吹きそうな軽いノリで、気軽に答える。
「残念でした、いつも真っ裸でしたー。すっぽんぽんで、ドラコに会いに来てました♪」

「うぉーっ!!もう死にそうだぞーっ!その告白はっ!」
ドラコはブルブル震えて、頭を抱えた。

「全裸の僕をドラコの繊細な指先が愛撫して、なんというか、その……」
ここで一端言葉を区切ると、チラッとドラコのほうを悪戯っぽく見つめると
「本当に、ドラコありがとう!ごちそうさまでしたっ!」
ペロっと舌を出して、自分の唇を舐める。

「う゛う゛ーっ!!!もう、ショックで死ぬぞ、僕は!」
ドラコは羞恥と屈辱に、ベッドの上でのたうちまわった。
「ああ、気にしなでいいから。僕も撫でられて気持ちよかったし、ドラコも僕を撫でて気持ちよさそうにしていたから、お互いいいことばかりで、よかったじゃん」
「だから「じゃん」って言うな、ムカつきが倍増だっ!」

「―――じゃあ、もっと色っぽく言おうか?」
立ち上がるとベッドの端にギシリと腰掛けて、震えてうなだれているドラコの肩を抱いて、耳元にいやらしくささやいた。
「ドラコの指って最高に気持ちよかった」

―――ボスッ!!

ハリーはドラコのきついみぞおちへの一発を受けて、再び派手にベッドから転げ落ちた。
ドシンと派手に床にひっくり返る。
「いい加減にしろっ!」
ドラコはカエルのようにひっくり返り、床にへばっている相手を憎憎しげににらみつけて、言葉をはき捨てる。

「ついでに、何か着ろ!気分が悪いものを見せるなっ!!」
ハリーは腹を押さえてうめきながら、相手を見上げる。
「―――って言っても服はグリフィンドールにしかないよ。何か貸してよ、ドラコ」
「嫌だ!なんだってそんな義理もないのに、僕が貸さなきゃならないんだ!」
その容赦のない言葉に、ハリーは子どものように膨れヅラになって、相手をにらみ返した。

「………ああ、いいさ……。それが君の望みなら、そうしてやるよ!真っ裸で、この部屋から出ていってやるさ。この地下の君しかいない監督生の個室から、堂々と丸裸で出て、ゆっくりと塔の天辺にあるグリフィンドールまで、歩いて帰ってやるさ!僕は隠さないからねっ!自信があるからっ!」
「……いったいそれのどこから、お前の根拠のない自信が沸いてくるんだ……?」
ドラコはハリーの全裸を上から下までしげしげと観察して不可解な表情を浮かべてはいるが、彼が悩むのはその部分ではないはずだ。

憮然ととした顔でドアから出て行こうとした相手に気づき、慌てて引き止める。
「まっ、まてよ、ハリー!それはやばいって!もう起きている生徒だっているし、変な噂になってしまうじゃないか!お互いそれは利口な考えじゃないはずだ。止めろ!」
「止めない!僕は嬉しいくらいだ。ドラコの恋人として、公認の仲になれるし」
「はぁーっ?公認?ただの友達というか、口げんかの相手ぐらいじゃないか、僕たちの関係は!」

チチチと指を立てて横に振るという、キザなしぐさでハリーは挑戦的に笑う。
「まずみんなに公認されてから、既成事実を作るのもいいからね。外堀から埋めていくという、僕の頭を使った作戦だよ。」
「そんなことさせるかっ!!このバカ!」
作品名:Like a dog 2 作家名:sabure