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琥珀ちずる
琥珀ちずる
novelistID. 30836
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太陽と素足の君

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 むかしから変わらない君が好きだ
 
 あの黒くて艶のある綺麗な髪も

 あの白い肌も
 
 君を構成する全てが

 俺にとっては愛しい

 君は笑うかもしれないが

 それはいつになっても変わらずに

 俺の中で輝き続けるのだ

夏休みを目前に控えたある日の昼休み。クラスでは夏休みの話題で持ちきりだった。勿論俺たちも例外ではないわけで。
「修は、夏休みはなんか予定あんの?」
俺と向かい合わせに座っていた巧みが購買からのからマヨ弁当(学校の購買の人気メニュー)のから揚げを一つ口に頬張りつつ聞いてきた。
「特にこれといって何も無いけど」
「ふぅん、じゃあ和彦は」
「俺も何も無いけど」
「じゃあ、三人とも暇なわけだ」
「でも、巧は部活があるんじゃねぇの?」
「先輩が何もいわねぇからねぇよ。多分」
「なるほど」
俺が珈琲牛乳を飲みつつ納得したというように相槌を打つと、巧が伸びをながら
「あーあ、和彦、何か面白いことねぇのかよ。これじゃあ、俺たちの高校最初の夏が、何も無いまま終わっちまう」
と言った。
「何もねぇよ。てか、まだ最初だろ。心配するな。俺たちには高校生の夏はまだあと二回やってくる。それに中学とは違うんだ。課題が結構出るって専らの噂だぜ」
「おいおい、冗談じゃねぇよ。グッバイ俺の青春。グッバイ俺の夏休み」
巧が机に突っ伏して項垂れた。
 巧とは、小学生の時からの付き合いだ。根はいい奴なのだが、とにかくその体格と、少々荒っぽい性格のため、誤解を受けやすい。そのせいか、先輩の誘いで入った音楽部も、最近顔を出していない。どうやら部活内でトラブルを起こしたらしい。一方和彦とは、高校生になってからの友人で、入学式の翌日の学級開きの時に話しかけられてから直ぐに打ち解け合えた。吹奏楽部でアルトサックスを担当している。最近分かったのだが、成績はクラスの五本指に入るほど良い。ちなみに俺は帰宅部。俗に言う『放課後にまで学校に縛られるなんて、ごめんだこのヤロー』という奴だ。だから、放課後になると、巧とつるんでは街に繰り出す。だが、暇を見つけては三人で揃う時もあった。

 「あっ、そうだ」
項垂れていた巧が急に顔を上げた。
「何か思いついたかぁ。巧」
和彦がのんびりと答えた。俺は
『こいつ、碌なこと考えてないだろ』
と内心で嫌な予感がしていた。
「修。お前のばあちゃん家、海近かったよな」
「ん?ああ。お前、ひょっとしてまさか」
「よし、夏休みは修のばあちゃん家に行くことで決定だ!」
「……マジかよ」
巧のドヤ顔に俺は軽く肩を落とした。

 夏休みに入った翌日、電車とバスを乗り継いで二時間弱、バス停から歩いて十五分。ばあちゃんの家にようやく着いた。
「こんちは、ばあちゃん来たよ」
『ガラッ』
「まあ、暑い中ご苦労様。さあさ上がって。麦茶を冷やしてあるから」
と、祖母は俺たちに笑顔を見せた。
「「「お邪魔しまあ「修ぅ!」
俺たちの声を遮って、一人の少女が駆けてきた。
「修!」
駆けてきた少女は、勢い良く俺に抱きついた。
「千尋じゃねぇか。元気だったか」
「うん!ボクね、修が来るって言うからずぅっと楽しみにしていたんだよ」
千尋は、『ずぅっと』というところを強調して言った。彼女は俺の母方のいとこで、昔は俺の家の近所に住んでいた。しかし、千尋の母親に対する、旦那(千尋の実父)の暴力が度々あり、俺が小学校に入る前位に千尋の母親は亡くなった。旦那の暴力が直接の原因ではなかったらしいが、千尋の身が危ないと、一人暮らしの祖母の家へ預けられたらしい。
「そうか、そうか。じゃあ、部屋行くか」
「うん!」
「巧、和彦!わりぃ、先に部屋行っていてくれ!」
と顔だけ振り向いて二人に言うと、
奥の部屋へ行った。

「ハハッ、千尋ちゃん相変わらずだな。ん?どうしたよ、ポカンとして」
巧が軽く笑った後、和彦の顔を見やり言った。
「いや、あの、今の娘って…修の彼女?」
「アッハハハハッ、その質問来ると思ったよ!あんな?ちげーんだって、あの子は修の母方のいとこ!昔っから、修の後くっついて歩いているような子でさ。というより、なんて言うんだろ。あの子少し情緒不安定でさ、何かあると直ぐ癇癪起こすから、修がずっと傍で面倒見てるんだよ。そっかー和彦は千尋ちゃんとは初対面か。まあ、最初にあの光景見た奴は結構驚くな」
「へぇ、てか巧はそれを見て面白がってんだ」
「わりぃか。じゃあ、俺たちは先に行ってようぜ」
「えっああ……」
和彦は腑に落ちないといった顔で、
巧に付いて行った。

 「修!これこれ」
「おっ!良く書けてるじゃん」
俺と千尋は、彼女の部屋で絵を見せてもらっていた。千尋は、幼少の頃から地元で噂されるほど、絵が上手かった。
「ねぇねぇ修。修と一緒に来た人って、修の友達?」
「そうだよ。千尋も、巧の事は覚えてるだろ」
「うん」
「じゃあ、俺も部屋に行くかな」
「ボクも行って良い?」
「ハハッいいぜ」
俺は、千尋を連れて部屋を出た。
「おせーよ!」
巧が、読んでいた漫画本から顔を上げるなり言った。
「ハハッわりぃわりぃ」
俺は、特に悪びれもせずに言った。
「修も来たし、海へ繰り出すか」
と、和彦が伸びをしながら言った途端
「海ぃ!」
千尋が大声で叫んだ。
「巧、千尋も良いか」
「勿論」
「千尋、着替えておいで」
「うん!」
そう言って千尋は、小走りで自分の部屋へ戻っていった。
「あのさ……千尋ちゃんて何歳」
和彦が恐る恐る聞いてきた。顔には、『まずいんじゃねーの』と書いてある。
「千尋か。俺たちとタメ……あそっか。和彦。誘っちゃまずかった……よな」
俺は、その時しまったと思っていた。子供の時と同じ気持ちでいたものだから、自分たちの年を全く考えていなかったのだ。
「いや、修が良ければ良いんだけどよ。その……やっぱり俺たちも年頃だからさ」
「和彦。お前、何考えてるんだよ」
と、巧が指の関節を鳴らしながら言った。最初の方でも言ったが、巧は体格が良い。従って、こういう台詞と仕草をされるといかにも喧嘩を売っているのが見て取れる訳だ。因みに、今までこれで何人もの不良に喧嘩を吹っかけられている。
「和彦が言うことも一理あるよ。しょうがない、やっぱり千尋に謝ってくるか」
と、俺が千尋の部屋に行きかけたその時
「待てよ」
巧が俺に制止をかけた。
「良いじゃん。せっかく此処に来たんだ。千尋ちゃん一緒でも良いだろ。何か変な気起こしたら俺が許さねぇし」
「変な気ってナニ」
「「「千尋(ちゃん)!」」」
俺たちは急に出てきたソプラノの声に驚いた。
「い、いつの間に、い、居たんだよ」
俺は一瞬声が裏返った。動揺しているのがバレバレである。
「着替えてきたよ。ってボク海に行けないの」
千尋は、レモンイエローの水着に白いスカーフみたいなものを腰に巻いていた。いけないことが分かったのか、目には涙を溜めている。
「ほら、千尋ちゃんもこう言っていることだし。なあ、修。女子にこんな顔をさせてはいけないだろ」
「あ、ああ。千尋、海一緒に行こうな」
「ぅ、うん」
千尋は、鼻をすすりながら答えた。
「というわけで、和彦。俺たちは三人で行くからな」
「えっ、じゃあ俺も行くよ」
作品名:太陽と素足の君 作家名:琥珀ちずる