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お下げ髪の少女 後半

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 ベニヤ貼りのドアがノックされた。そんなことは珍しいことなので、緒方は驚いていた。
「どうぞ。鍵は開いてますよ!」
 ドアに型板ガラスの小窓があり、そこに人の頭部のシルエットをぼんやりと窺うことができた。新聞の勧誘だろうか。それとも、水道料金の徴収だろうか。しかし、その位置が低い。隠れ家に小説家と、自分以外の者が訪れることは殆どない筈だった。間違いだろうとも思いながら、緒方は恐る恐る扉を開けた。
 美緒だった!緒方の驚きは尋常ではなかった。西陽を背負い、彼女は照れたような趣で、微笑んでいる。学校帰りの服装で、やはり、お下げ髪だった。鞄のほかに、ネギなどの入ったポリ袋を持っている。
「夢を見ているようです」
 会うのは三箇月振りと、緒方は思った。
「驚かせて、ごめんなさい」
「驚きました!師匠、いや、あの人と知り合いだったんですか?」
 美緒は中に入って扉を閉めた。緒方は懐かしい気持ちで「文通ごっこ」の晩を想い出していた。ふたりきりで会うと必ず思い出すのだった。
 美緒は靴を脱ぎ、真っ白なソックスを目立たせながら六畳間に入ってきた。緒方は慌てて座布団を持ってきた。美しい少女は笑顔のまま、荷物を畳の上に置いてから、座布団の上に座った。座卓を挟んで緒方も腰をおろした。