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表と裏の狭間には 十話―柊家の年末年始―

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ローストチキンは小さい骨付き肉を使ったものが十本ほど、ポテトサラダに、シチューもある。俺は米が好きだと知っている雫は、このメニューなのに米を用意してくれていて、他にも色鮮やかな生野菜のサラダや、ステーキもある。
「丁度盛り付けが終わったところなんだよー。ささ、食べよ食べよ。」
そう言って俺を促す雫は、朝も(間違えて)やっていた、サンタのコスだ。
「これ、どう?」
ぴょんぴょん跳ね回って服の感想を聞いてくる。
うん、まあ。
赤を基調とし、白のラインが入った色彩は全て統一されていて。
長袖のゆったりとした上着や。
ふわふわしたミニスカとか。
頭の上にちょこんと乗せた帽子など。
「似合ってるじゃねぇかこの野郎。」
なんだか知らんが、雫自身の子供っぽい動きと、非常にマッチしていたり。
「えへへ。ありがとうお兄ちゃん!ほらほら座って座って!早く食べないとお料理が冷めちゃうんだよ~。」
俺が褒めて更に上機嫌になった雫が、俺を椅子に座らせると、自分も素早く向かいの椅子に座った。
「手を合わせてくださいー!」
「いただきます、と。」
早速俺は食事に手をつける。
うーん、どれから食べたものか。
まあ、クリスマスだし(特に理由にはなってないけど)、チキンから食べてみるか。
皮がパリッと香ばしく焼けているチキンは、噛むと肉汁が湧き出てきた。そしてレモンが絞ってあるようで、そのジューシーな味わいの中にさっぱりとした爽やかな酸味が混じる。
シチューはチーズの濃厚な味わいと、よく煮込まれた野菜と肉の甘みが生かされた一品。
ポテトサラダには潰したじゃが芋以外にも、あえて小さく切ったじゃが芋を混ぜることで食感の楽しみを演出し、ハムやキュウリを刻んだものを入れることで彩りを整え、更に胡椒を振ることで俺好みのスパイシーな味を提供してくれている。
ステーキは贅沢にも分厚く切ったサーロインで、ソースは玉葱を刻み、ブランデーやら調味料やらを雫流の特別な配合で混ぜて煮込んだ特製ソースのようだ。この、独特のバランスが肉の味を調え、更に美味しくしている。更に、ソースを煮込む最に厚めに切って入れた人参や茄子が添えられている。この野菜も、ソースの味を出すのに貢献しているようだ。
生野菜サラダも、トマトやレタスなどの野菜こそ普通だが、ドレッシングは手作りのものだ。俺はこの、甘くもあり、微妙に刺激がはしる、野菜の酸味を生かすドレッシングが凄く気に入っているため、とても嬉しい。
米はあえて白米。料理の味がよく分かるようにと、雫らしい配慮が働いている。その米も今日は炊飯器ではなく土鍋で炊いたのか、いつも以上にふっくらとした食感が味わえる。
総じて。
「よくやった雫。最高の料理だよ。ありがとう。」
最高に、美味い。
外食するよりも、よっぽど。
「本当!?嬉しいな…………。」
褒めると、雫は照れるように真っ赤になって、頬に手を当てて悶え始めてしまった。
本当に、こいつは料理が上手い。
もっと自分に、自身を持つべきだろう。

そんな夕食後。
俺と雫は、買ってきたケーキを広げていた。
そのケーキを、今は雫が切り分けていた。
それを見ながら。
俺は、そうだ、と、思い出したことを話していた。
「さっき外に出たときにさ、料理に使えるかと思って、これ買ってきたんだ。」
俺が取り出したのは、シャンパン。
「へぇ~。よく買えたね。」
「ああ、まあな。まぁクリスマス真っ只中だし、そこまで不自然でもなかったんだろ。」
「えっと、ありがとうね。今度使って何かしてみるよ。」
と、俺はちょっと思いついてしまったので、振ってみる。
「おい、折角クリスマスなんだし、飲んでみるか?少し。」
「ふぇえ!?お、お、お酒だよ!?」
「うん、まあ、思いつきで言ってみたんだけどな……。」
「まあ、いい、んじゃないかな?ちょっとだけなら。」
何か乗ってきた!
「そうか。じゃ、コップ持ってくるわ。」
俺は、こっそりと部屋に寄ってからキッチンに向かって、コップ………いや、グラスだな。
グラスを取って戻ってくる。
えー。
思いつきで言ったのに、マジで飲むことになるんだ。
まあ、俺に関しては今更飲酒がどうこう程度の法律違反、最早なんともないんだけどさ。
だって既に銃刀法違反だし。
まあ、それはともかく。
リビングに戻ると、雫はどこかドキドキワクワクしたような雰囲気が。
「ほれ。」
シャンパンを開け(普通にだ。決して栓を吹っ飛ばしたりはしない)、シュワーッと音を立てるそれをグラスに注ぐ。
それを雫に渡す。
「じゃ、乾杯。」
「メリークリスマス。」
グラス同士を、『カチン』とぶつける。
そして二人でシャンパンを一口。
「うぅ………苦いかも……。」
雫がそんな呟きを漏らすので、俺はついつい笑ってしまった。
「ククッ。」
「ふふっ。」
雫も釣られたように笑い、次第に笑いは大きくなっていく。
「ははははははっ!」
「あははははっ!ほ、ほらお兄ちゃん、ケーキ食べよ。」
笑顔で。
笑顔のクリスマス。
それは、随分久しぶりだったような気がするな。
去年までは、クリスマスといえば親父の会社の面々を招いたパーティーだったから。
盛大だったけど。
俺たちは、こうして『本当の』笑顔で笑う事は出来なかった。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「ああ。こっちこそな。」
だから。
今年のクリスマスは、最高だった。

お約束ではあの後雫が酒を飲むと人格が変わる、なんて事実が発覚するものだが。
実際はそんな事はなく。
少量しか飲まなかったので酔うこともなく。
ケーキを食べた後。
プレゼントの交換をした。
「お兄ちゃん!プレゼントだよ!」
と、雫が俺にくれたのは。
コート、だった。
「おお。」
裾の長いロングコート。
グレーの、目立たないやつだ。
「ありがとな。雫。」
「ううん。」
「じゃ、俺からもプレゼントだ。」
キッチンに行くついでにこっそり持ってきておいたプレゼントを、雫に渡す。
「なんだろうな~。あ!これ!」
袋を開けた雫は、顔をパァアッと輝かせた。
「お兄ちゃん!こっ、これ!これ!」
「安物で悪いけどな。一緒に遊びたかったんだろう?」
と、言うと。
うんうんうん、と。
真っ赤になりながら激しく頷いた。
「さ、さ、早速これやろう!」
「ああ。いいよ。」
こうして、聖なる夜は更けていった。

さて。そんな聖なる夜から数日後。
十二月三十一日。
一年の最後の日がやってきた。
今日は朝から大掃除。
といっても、広い部屋に反して家具はあまりないので、大した時間もかからなかった。
その後は、雫と一緒に買い物に行った。
この日の夕食、年越し蕎麦、雑煮の材料、餅。
それらを買い込んでいたら、いい時間になっていた。
仕方がないので、夕食はそこらの店で済ませた。
家に帰ると、雫は雑煮の下準備やら年越し蕎麦の製作やらで大忙し。
俺も部屋にこもって、今年一年を想い返していた。
今年………………か。
今年一年は、本当に大変だった。

中学卒業を前に、両親が死んで。

中学卒業と同時に、引っ越して。

雫には、転校を強いて。

そして、今の高校に入り。

ふとした偶然から、『アーク』に入隊させられ。

何度か抗争にも参加させられ。

合宿につき合わされ。