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触れる

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散歩の途中で偶然会った子供が、私の飼い犬と正面から見つめあっている。興味津津、という様子で犬を見つめる子供に対し、犬はさして興味がなさそうにただ座っている。
 ただ見つめるだけで、触れようとはしない子供に、触ったことがないのかと問いかけてみた。子供は、私の方を少しも見ないままに首を縦に振った。私が犬の頭を撫でてみせると、弾かれたように顔をあげ、私の顔を凝視するから、思わず笑みを浮かべた。
 私が初めて犬に触れた時はどう思ったのだったか。記憶の糸をたどってみるけれど、よく覚えていない。柔らかい、と感じたような気もするし、硬い、と感じたような気もする。それとも、全く違う事を感じたのだったか。この子供と同じくらいの鴇であったことは、よく覚えているのだけれど。優しそうな女性が連れた、大きな犬だった。
「ほら、こういう風に、撫でてごらん」
 犬の背中を撫でながら促せば、子供は息を呑み、緊張した表情で恐る恐る、その手を犬へ伸ばした。撫でられる事を期待した犬が尻尾を大きく振ると、驚いたのか、子供は一度手を引っ込めてしまった。それでもまた、もう一度手を伸ばし、ようやくその小さなてのひらが犬に触れた。しばらく無言のまま、唇をきゅっと結んで犬を撫でていた子供が、不意に頬を緩ませ、小さく声を漏らした。
「あったかい」
 その言葉は、私が初めて犬に触れた時の事を思い出させ、その感触まで蘇らせた。あたたかい、と心で復唱しながら、そうだね、と相槌を打った。
作品名:触れる 作家名:ハチ