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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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らくがき

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川岸にて




 水草揺れる川岸に佇む
 流れの早い水面を水中を水底を
 硬質で長い緑の葉が覆い尽くす
 ゆらゆらと揺れる葉の隙間から
 何かのまなこが私を窺う

 それはかつて私の友だった者
 或いは敬愛すべき隣人として
 私を見守り育んだ者

 幼い頃の自分がいる
 恐れる事無く水と戯れた日々
 水面を滑る蟲達
 水中を泳ぐ魚
 水底に潜む甲殻類は
 格好の玩具であった

 朝早くには釣り糸を垂れ
 暑い昼には水草の林を縫って泳ぎ
 川面を渡る風を求めて夕涼みに出た
 私はいつでも川に抱かれ
 川は私を受け入れたあの頃

 いつからだろう
 私が川と離れたのは
 川の水から這い出て
 川の流れに背を向け
 川面の風を忘れた

 時おりそこに近付いても
 以前のような親密さは無い
 私と川の間には何かしら透明なくさびが打ち込まれた
 親密だった友は私の前から永久に姿を消した

 水草揺れる川岸に佇む
 流れの早い水面を水中を水底を
 硬質で長い緑の葉が覆い尽くす
 ゆらゆらと揺れる葉の隙間から
 何かのまなこが私を窺う


<川岸にて>08.08.08

作品名:らくがき 作家名:郷田三郎(G3)