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冥奇譚

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登場人物
冷気の魔女 楢崎志摩(ならさきしま)
電波塔の巫女 永和子(とわこ)
寺の若 勝寺露伴(しょうじろはん)
神主であり結界の人 巽志郎(たつみしろう)
半分は異界の男 黒井戸(くろいど)


語り部 鬼の冥

幾千もの星が流れる間変わらぬ人の世にもの申す。
鬼の面を顔の半分にかけ、笑う男は鳥居の様にそびえたつ電波塔の上で笑っていた。
「あぁ愉快だ。役者はそろった。これから楽しい劇が始まる。」
黒い着物が風ではためく中で、鬼は街を見下ろす。
「苦労した。人間は儚く短い。その短い時間の中でこれだけの役者を揃えるのは苦労した。さぁ始めようか。」
鬼は笑いながら月を見上げる。
「誰がこの百年の大祭を制するか。これからおこる狂乱を楽しむとしようか。」
電波塔の下に人の気配を感じ鬼はそちらに視線を投げる。
鬼をにらみつける。白い人影、強い風に白い浄衣が舞っている。
「電波塔の巫女がおいでか。では私はここらで退散しようか。」
掻き消える様に鬼の姿は歪み消えた。
下から鬼をにらみつけていた電波塔の巫女、永和子は白い巫女服とまとめた黒髪を押さえながらただ無言でそこにそびえ立つ電波塔を見上げていた。
「これから、なにを始めるつもりなのかしら。」

人から魔女と渾名されている楢崎志摩は北町神社を目指していた。この街で起こっている異変について、神社の主はどう考えているのかそれをうかがうためだった。
階段を上がり境内に入ると掃除をしている男と目があった。
「お前は確か……楢崎とか言ったっけ、久しぶりだな。どうした?」
男は黒井戸呼ばれ半分は人間だが半分は異界という特殊な男だった。北町神社の神主と古い付き合いらしいが志摩は詳しいことは知らない。
「こんにちは、巽さんはいますか?」
この神社の神主である巽志郎に面会を求めると黒井戸は社殿の方に案内してくれる。
「巽、客だ。」
社殿の奥の間で巽は一人瞑想していた。そこに黒井戸から声をかけられゆっくりと振り返る。
「客かぁ。招いてくる客と招いていないのにくる客、君はどっちだい?」
20代後半の年齢のはずだが、10代の少年っぽさが残るその神主は猫の様に笑いながら志摩の方を見る。猫の様な瞳が嬉しそうに輝いていた。
「お久しぶりです。巽さん。」
「あぁ堅苦しい挨拶なんていらないよ。ひっさしぶりー。相変わらずクールビューティで素敵だね。こんなむさいところにようこそ。」
「むさいは余計だ。巽。」
黒井戸のため息を無視して巽はべらべらと喋り出す。
「黒井戸は黙ってればいいよ。ボクは志摩ちゃんとの久々の再会を喜んでいるんだ。志摩ちゃんホント久しぶりだよね。もうここには来ないかと心配していたよ。もうあんまりボクに心配かけちゃ駄目だよ。」
「本来なら、私はここには足を踏み入れない方がいい者なので。」
志摩の言葉に巽は首をふる。
「そんなことないよ。志摩ちゃんみたいな美人さんならいつでも大歓迎! むしろ毎日そのおっぱいを拝ませてほしっ……。」
がつんと巽の口を閉ざさせるために黒井戸は拳を下ろした。
「お前、客に向かってなに変なこと言ってんだ。」
一部から冷気の魔女と呼ばれ忌み嫌われている志摩に対して普通に接してくる人間は少ない。巽はなにも気にせず志摩を神社に招いている。
「黒井戸は堅いなー。まぁいいけど。それで、今日はどうしたの? ボクでよければ力になるよ。」
志摩は急に真面目な顔になった巽の様子に少しだけ安心して話し出した。
「最近、神社に異変はありましたか?」
「異変ねぇ。まぁうちはしょっちゅう色々なことが起きているけど、ボクも初めて出会ったけど、この前鬼に会ったよ。」
しばし考えたあと、巽は思い出したようにその話を始めた。
「うちは場所柄色々な妖怪が訪れるけど、でも鬼は初めてだったなー。しかもかなり強そうな感じだったね。並の術者では太刀打ちできないぐらい。そいつがね。妙なことを言ってたんだ。あれ、黒井戸、なんて言ってたんだっけ?」
黙って話を聞いていた黒井戸はため息をつきつつ口を開いた。
「百年の大祭が始まると、だが、そんな祭りは人間側にはない。少なくともこの街と関連がある祭りはないんだ。楢崎さんはうちを尋ねて来たって事はなにか知っているのか?」
黒井戸の問いかけに志摩は頷く。
「はい、私の元へも鬼が2、3日前に現れ大祭があると告げてきました。しかし、それがなにかわからず、もし手がかりがあればと思いここに。そうですか神社にも現れたんですか。」
「志摩ちゃんとこにもか。それで、志摩ちゃんはなにかやる気なの?」
巽にそう問いかけられ志摩は首を横にふる。
「一応私は今は休業中なのでなにもしない予定です。」
「予定は未定ってね。まぁ最近街もなんだか騒がしいから気をつけなよ。」
志摩は礼を言ってから神社を辞した。
「良かったのか? 行かせて。」
志摩のことを気に入っている巽が志摩を簡単にかえしたことに驚きながら黒井戸は尋ねた。
「志摩ちゃんは強いよ。相当ね。だから大抵のことは大丈夫だと思うんだけど今回は鬼が出てきたからね。ちょっと心配だよ。あの様子だと鬼となにかあったんだろうし。」
「なら、余計うちにとどめておいた方が良かったんじゃないか?」
巽は首を横にふると猫の様な目を細めた。
「でも、彼女をここに繋いでおくことはできない。黒井戸とはケースが違うからね。それに、もう少し情報が欲しいところだからね。動ける人には動いてもらわないとね。」
その言葉を聞いて黒井戸は黙って社殿から出て行った。あとに残された巽はまた座ると瞑想を始めた。
作品名:冥奇譚 作家名:由々子