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「京子、前にも話したと思うけど、僕もう少ししたらさぁ〜、受験勉強しなくちゃいけないんだよ。そうなると今までみたいには会えなくなりそうなんだ」
 沈んだ声で僕がそう言うと、
「えっ!? やっぱりそうなるのぉ?」
 それだけ言うと京子は押し黙ってしまい、そうすると僕も何も言えなくなってしまった。
 いつもの学校帰りの公園のベンチに、仲良く並んで腰掛けていた。
 夕方だからなのか、小さい子供たちやその子のママたちも、みんな家に帰ってしまったようだ。それぞれ夕飯の支度に取りかかる時間なのだろう。
 まだそんなに暗いわけではないのに、近くには誰もいなくなった。
 僕はそっと左腕を京子の背中にまわし肩を抱いた。
 京子は僕の肩に頭をもたせ、じっとして何も言わない。
 しばらく無言の時が流れ、僕が先に口を開いた。
「京子、今までみたいには会えないけど、学校では会えるし、塾から帰ったら必ず電話する。それに、たまには一緒にどこかに遊びに行こうよ! だから寂しくなんかないよ! 大丈夫だよ。ねっ」 と、無理に明るく言った。
「うん」 小さく京子が頷いた。
 僕は京子の顎にそっと手をかけ優しくキスした。そしてそのまま強く抱きしめた。
 初めて京子と一つになったあの日から、すでに一年近い歳月が流れたけど、僕にとっての京子は変わらず大切な存在だったし、僕たちは二人の小さな愛を大切に育てて来た。
 学校の帰りに連れ添って帰るのも、今では周知の事実だし、最初の頃こそ級友に冷やかされたりもしたけど、僕たちはいつも自分たちの気持ちに正直に、そして誰に対しても堂々として過ごしてきた。
 もちろん人のいない場所でのキスや、誰も家族がいない時を狙っての僕の部屋でのセックスも、欠かせないことだったけど、最初に約束したように、決してお互いを傷付ける様なことだけはしないように気を付けてきた。
 あまり好きにはなれない避妊具も、京子の身体を考えると付けない訳にはいかなかったし、中で出さないという方法もあったけど、やはり少なからず心配が残ったので、結局避妊具を使った。
 僕たちはいつも真剣にお互いのことを考えるように努力した。それが「大切な人を大切にする」ということだと思った。
 しかし今日までは、いつだって逢いたい時に逢うことができたのに、これからはそれができなくなってしまう。
 もう前々から分ってはいたことなんだ。僕が大学に行くと決めたその時から……。「ねえ京子、覚えてるかい? 僕が初めて大学に行こうと思ってるってことを話した時のこと」
「ええ。覚えてるわよ。もちろん」
「あの時、僕は……と言うか、それまでの僕は大学なんてどうでも良いと思ってたんだぁ、本当は」
「えっ、そうなの?  じゃあどうして?」
「だってさぁ、僕はそんなに勉強好きなわけじゃないしさっ。高校卒業したら、就職して働こうって思ってたんだよ」
「ふぅ〜ん、じゃあどうして……どうして大学に?」
「色々考えたんだよ。僕なりに」
「何を?」
「あのさぁ、――笑うなよっ」
「……? 」
「もしさぁ、もしもこのまま京子と付き合っていってさぁ、結婚するとするじゃん」  
 京子が驚いたような顔で僕を見た。が、気付かない振りをして続けた。
「――当然その時には、社会人になってる訳なんだけど……、その場合、高校しか出てなくて就職するのと、大学を卒業して就職するのとではかなり違うらしいんだよ」
「……」
 京子は首を傾げて僕を見ている。
「僕、実はオヤジに相談したんだ。その辺どうなのかなって思ってさ」
「うん、そしたら……?」
「そしたら、やっぱりオヤジが言うのには、『そりゃあ大学には行った方が良いさ』って言うんだ」
「ふぅ〜ん」
「その方が就職する時にも良いらしいんだよ。だから、やっぱ行こうかなって思ったんだ。で、オヤジに行ってもいいか? って聞いたら『もちろんいいぞっ! その代わりしっかり勉強しなくちゃ今のまんまじゃ無理だぞ!』って言われてさ。そうかぁ〜って思ったんだよ」
「そんなことまで考えてくれてたんだねぇ」
 僕はそう言われると急に照れ臭くなって、頭をポリポリと掻いた。
「だからさ、しばらくは逢えないのも二人のためなんだよ。僕だって淋しいけど我慢するからさっ、京子もなっ」
「うん、分かった!」
今度は京子もにっこり笑ってそう言ってくれた。

それからの僕は、学校が終わるとすぐその足で塾へ行き、塾でみっちり勉強すると、今度はまっすぐ家に帰り、遅い夕飯を一人で食べて、その後ゆっくり風呂に入る。
風呂の中で思いきり身体を伸ばすと、あぁ〜やっぱり疲れてんのかなぁと思ったりし、身体を洗いながらふと京子のことを考えたりすると、それはそのまま京子の裸体となって僕の目の前に現れた。
「京子……」
 思わず口をついて出る。 京子を抱きたい。
僕の欲望は下半身に直結しているらしくって、僕のジュニアがムクムクと頭をもたげてきた。
 少し頭を撫でてやると『もっと!』っと我が儘を言う。
 僕は疲れてるのに、ジュニアを掴み上下にシゴク。すると至極の気持ち良さが僕を襲う。
「ああぁぁーっ……」 
 僕は益々スピードをあげる。
「ウッ! 京子ぉ〜〜」 
 フィニッシュ! ジュニアが、白くて少し青臭い液体を勢い良く吐き出す!
 すると風呂に入る前より疲れていることに気付いて、なぜか可笑しくなる。ふっと思い出し笑いを浮かべながら湯船で身体を横たえ、鼓動が落ち着くのを待って、風呂から上がった。
 その後、僕が自分の部屋の机で問題集に取り組んでいると、ドアをノックして母さんが入って来た。手には冷たい手作りの飲み物と、軽い夜食を載せた盆を持っている。「どうお? 進んでる?」
 盆をすぐ横のサイドテーブルの上にそっと置くと、問題集をチラッと覗く。
「あんまり無理しちゃダメよ〜。――ところで京子ちゃんは元気なの?」 
「あ、うん。元気だよ」 
 僕の返事に母さんは、ホッとしたような顔をして部屋を出て行った。
 母さんが急に京子のことを言い出すもんだから、僕はちょっとだけ手を休め、母さんの手作りジュースを飲みながら、再び京子のことを想った。
『京子は今何をしてるんだろうか……もう寝たかなぁ……』
 僕はその後、小一時間勉強してベッドに入り、ふと見ると時計の針は零時を回っていた。
 そして翌朝はいつものように起きて学校へ行く。
 これが僕の毎日の生活パターンになっていった。

 京子と会えるのは、学校での休憩時間のほんの僅かな時間だけになってしまった。
 その代わり僕たちは、お昼の休憩時間だけは、校庭の隅っこにある花壇の縁に腰掛けて色々話をした。そして誰も見ていない時には、さっとキスすることも忘れなかったが、さすがに『もし誰かに見られたら、ヤバい! 』と思っていたから慎重だ。
 いつものような甘いキスの後、京子が聞く。
「ねぇ勉強はどうぉ? 進んでる?」
「ヤバいよぉ、京子のことばっか考えちゃってさぁー」
 と、笑って僕が言うと、京子も嬉しそうに頷きながら言った。
「私もなんだぁ〜」 と。
「昨日の晩だってさ……風呂に入っ……あっ!」
 思わず口をつぐんだが、すかさず京子が、
作品名:待たせてゴメンね♪ 作家名:ゆうか♪