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インセクトイリュージョン

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「パズルスタート!!」
 開始の合図と共に俺は魔方陣の読解に努める。相手はルービックキューブだ。見た感じ面が3*3で構成されている。「虫」の強さよりも完成速度優先ということだろう。
 「虫」というのは自然界にいる虫のことじゃない。今いるVR空間のみで出現させることができる生物だ。大きさは大体人間と同じ程度であるが、力は人間の比ではない。「虫」を出現させるキーはパズルを完成させることになっている。出現させる「虫」は初めてここを訪れた時に決められた。
(出す速度では負けるけど、出せば俺の勝ちだな)
 俺は8*8の多重魔方陣でどの勝負も行っている。俺の「虫」は小細工できるようなタイプじゃないから能力を上げることを重視している。
 「虫」の強さはパズルの難しさに比例される。俺や対戦相手の場合はパズルの桁数を増やせば強くなり、少なくすれば弱くなる。勝敗条件は相手を戦闘不能や気絶、敗北宣言させることだから、早く出して本人を攻撃すればいいが相手も出した場合は「虫」同士での戦いになるから出現速度を優先させて簡単なパズルを選べばそれだけ不利になる。
「ここで、林原選手「虫」を出現させました。轟選手は間に合うのか!?」
「ちっ、もう少しのところで・・・」
 相手が「虫」を出してきたので、動きながら解くことにする。簡単な「虫」の攻撃を受ければ直ぐに戦闘不能になってしまう。パズルは腕時計型のデバイスからホログラフで出力されているので動きながら解いていても問題はない。
「出す前に潰してやる!」
相手は「虫」-ツゲノメイガ-を出して俺がパズルを完成させる前に潰す気だろう。「虫」の中では小さい体をしているツゲノメイガが高速で突っ込んできたので真横に飛ぶ。ブンと音を残して横を抜けていく。突っ込んでくるのは予想できたので、転ばないように注意しながらパズルを続行する。ツゲノメイガが反転して俺の方に突っ込んでこようとしてきた所で俺のパズルが完成した。
「燃えろっ」
「ぐぅ!?」
 俺は「虫」-アカハネナガウンカ-が出現している最中に炎を飛ばすように命令した。反転し俺めがけて突進していたツゲノメイガは避けられず、燃えながら地面に落ちた。少し遠くでドサッという音が聞こえた。そちらに目を向けると林原が倒れていた。自分の「虫」が受けたダメージのフィードバックに耐えられなかったようだ。
「林原選手気絶の為轟選手の勝利!!」
 パズル難易度が同じなら耐えられたはずだけれど、速攻の為に難易度を下げていたので一撃で終わった。

 戦闘が終わったので俺は控え室に行く。寝るとき以外はVR空間で過ごすのがこの大会に出る規約の一つだ。理由を聞いたらVR技術向上のための研究といわれた。まだ、研究が必要な技術で大会なんて開くなよと思いながらも商品に釣られている俺たちは何も言えなかった。
「ユウキ、おっそ~い」
控室に戻ると仲間のイツキが待っていた。コイツもう終わってたのか・・・
「イツキ早すぎないか?」
「アタシは小細工苦手だから、勝つにしろ負けるにしろ早いよ?」
「それにしても、パズルの時間があるんだからもう少しかかってもいいだろ」
「今日の相手は速攻でくる傾向が高いって、昨日ユウキ自身が言ってたでしょ。だから、私もランク落としてやってみたの。」
「相手が俺たちに合わしてきたらどうするんだよ・・・。スバルはまだ?」
 部屋を見渡したけど、まだ来てない。喉が渇いたので備え付けの自販機でジュースを買いながら聞いてみる。イツキはそれぞれの試合状況を映しているディスプレイを顎で示しながら
「同タイプだから、時間かかってるみたい。あいつら簡単なのしか選ばないからタイプくらい合わせてくると思ったけど、全員スピードタイプで来てたよ。」
「虫」のタイプは大きく3つに分かれている。俺のように特殊能力を持っているタイプ、さっきの栗林やスバルのようにスピードが強化されているタイプ、イツキのようにパワーが強化されているタイプだ。このタイプは使用するパズルに依存しているので変えたければパズルの種類を変えればいいのだけれど、普段なれてないと完成速度が落ちるのでそんなことする奴はまずいない。
「だからってわざわざ変える奴なんていないだろ。速度落ちるんだし。」
「そうかもねぇ。あ、終わった。スピードタイプ同士ってチマチマして好きじゃないわ。」
 審判がスバルの勝利を宣言したところでイツキは愚痴を言った。コイツは「虫」出したら突貫させて終わらせようとするからな。性格と「虫」のタイプが合いすぎてる。

俺とイツキ、もう少ししたらくるスバルの3人の仲は結構いいけど元々知り合いじゃない。俺たちの3人の中学が凍らされるという事件が起こった。ここでは炎を使う「虫」を操ってる俺が言うのも変だけど、現実世界で学校が凍るなんてあり得ない。俺たちはたまたま前日に学校を休んだ者同士だった。夏なのに学校の周りいくに従って寒くなっていったのでおかしいと思ってたら学校が凍りついてるんだからさすがに驚いた。スバルとイツキは既にいて呆然としてた。慌てて友人何人かに電話したがつながらなかった。たぶん、授業中にこうなったんだろう。学校なんて正直どうでもいいけど、仲のいい友達がいなくなるのは困る。スバルとイツキもそんな感じだった。けれども、実際どうすればいいのかは全く分からなかった所にイツキが話しかけてきた。
「あるVRゲームの大会で優勝したらなんでも一つ願いを叶えてくれるというのがあるの。出場するには3人一組のチーム制。アタシたち知らない者同士だけれど、それぞれの友達を助けるためにやってみない?」
 聞いた時は本当にそんなのやってくれるのか分からなかったけれど他に縋るモノも無かったのでイツキの話に乗った。
 俺とイツキが2年でスバルだけ1年だった。そうすると学年で変な関係できそうだと思ったイツキが名前の呼び方は下の名前を呼び捨てということになった。今思えば実にイツキらしい行動だったと思う。

「ただいま戻りました。」
 そう言いながら、スバルが帰ってきた。イツキが気を利かせて呼び捨てで呼び合うようにしたのに、結局丁寧な口調で話すヤツだ。本人は元からと言っているけれど、学年を気にしていると俺とイツキは思ってる。
「おかえり~。3回戦も全員勝利で突破だよ!」
「優勝するには後5回勝たないといけませんね。」
「スバル~、今は勝利を喜びなさいよ~」
 そういいながらスバルの首を絞めている。
「イツキ、やめてやれよ。実際スバルの言うとおりまだまだあるし、先は長いよ。」
「次の試合来週なんだから、試合のあった日くらい喜んでもいいでしょ。」
 と、脹れながらイツキが言ってきた。実際試合のある日は相手のデータを撮るくらいしかすることないのだけれど、俺たちは最終グループなので試合前に終わっている。結局やることがないので、イツキの言うとおり喜ぶべきなのかもしれないけれど、氷漬けの友達の事を考えると素直に喜べない。
「とりあえず、スバルも帰ってきたし今日もお好み焼き食べに行くか」
「「賛成」」

VR空間を出ていつもの打ち上げ場所のお好み焼き屋にいく道すがらふといつも思ってる事を言ってみた。
「「虫」ってホントにいないのかな・・・」