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スーパー・ヒーローズ

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僕の名前はブライ=ニシヤマ。ひょんな事からスーパー・パワーを手に入れて、スーパー・ヒーロー『ライダー』になった日本人だ。
 スーパー・パワーが信じられない? そりゃそうだ。僕らも最初はそうだったよ。
 でも現実には存在する。死にそうになった人間に送られる、ちょっとしたプレゼントさ。
 プレゼントは包み箱を開けて中身を確認するまで、何が入ってるかわからないもので、スーパー・パワーもそうだ。死に物狂いで具現化した能力が――ケーキを美味しく焼き上げる力じゃ、自分がその前にローストになっちまう。それじゃあ、意味はない。そうだろ?
 だから、スーパー・ヒーローは思考を捨ててはならない。これはヒーローの鉄則で、知り合いのヒーローは『考える』の一点張りで窮地を脱するヒーローも居る。
「おい、仕事だぜ」
 そう言ってたら、相棒のジョウントが来た。見てくれ、この紫色のけばけばしい全身タイツを! スーパー・ヒーローには格好良さも必要だ。全身タイツは肉体が強調されるから、筋肉があるならオススメするよ。なに、僕は着ないよ、非力だからね。
「今度はどんな感じ?」
「銀行強盗さ――シンプルに片づくと思うぜ」
 スーパー・ヒーローの相手はだいたい、一般人だ。スーパー・パワーを持った奴と戦うのは三十回に一回ぐらいだ。リスクは無い代わりに、殺さないように注意するのが難しい。
 もちろん、あっちはこっちを殺そうと銃を撃ってくる。スーパー・ヒーローには保険は無い。銃弾を喰らえば痛いだけで、闇医者に法外な治療費を吹っ掛けられるか、さもなくば医者に余計な詮索を許してしまう。ヒーローは自分のプライバシーを何よりも守らなければならない。じゃないと、力を持たない家族や友達、恋人を人質に取られるかも知れないからだ。
「しかし、まだ昼間だぞ。人目が在るんじゃないか?」
 ヒーローは人目を忍ばなければならない。目立ちすぎると警察に捕まってしまう。そのためヒーローは深夜を好む。スーパー・ヴィラン(スーパー・パワーを悪用する奴ら)もそうだが、昼の顔と夜の顔を使い分けるのがヒーローであり、ヴィランなのだ。
「しょうがないぜ。困ってる奴が居たら助けるのが俺たちだ」
 ジョウントのセリフも間違っていないが、出来るなら目立たないに越した事は無い。ヒーローにはシークレット・アイデンティティと言うのが重要だ。プライバシーを守るって言うのもそれにつきる。

 ジョウントに急かされ、ガレージに移動する。言い忘れていたが、ヒーローには移動手段が必要だ。
 たとえば、全身タイツの人間がイエロー・キャブに乗って移動するのは滑稽だろう?
 ジョウントみたいに瞬間移動できる奴ならそれは考えなくて良い、そうじゃないならここにも気を付けなければならない。
 まず移動に使う車やバイクだが、見た目が奇抜すぎるのは駄目だ。まず警察に止められる、そうじゃなくても個人の特定が容易になってしまうし、何より車検に通らない。
 それから出来るなら緊急時にナンバー・プレートを隠せるようにしておくと良い。下手をすると、犯人に間違えられる可能性も在るからだ。
 もちろん、そうなった時は警察をなるべく早く振り切らなければならない。追跡時も有効だから、当然スピードは出るにこした事は無い。
 僕の移動手段は黒の大型バイクだ。スーパー・パワーの性質上、どうしてもバイクが必要で、ジョウントに頼んで制作した特注品だ。何、奇抜なバイクは御法度だって? よくわかってる。さっきそう説明したからね。
 物事には例外がつきまとう。奇抜なバイクに乗りたいときは単純だ。人目に着かないところで変形させればいい。
 このバイクは排気量を千六百を超えたモンスター・マシーンで防弾仕様。タイヤはウレタンを詰めてあるおかげで、パンクせず走行可能。メーター類はデジタルで表示させられる。名前は『エアロスミス』だ。由来は単純で、ジョウントの好きなアーティストの名前を拝借したらしい。
 それからヘルメットは必ず付けること。一部の国や州ではヘルメットなしでバイクに乗れる場合もあるが、必ずフルフェイス・ヘルメットを装着し、出来る事ならシールド(目の部分を覆うプラスチック部分)はミラー加工かスモークが入っている事が望ましい。もう解っていると思うけど素顔を見せてはならない。これはヒーローの鉄則だ。
 さて、エンジンを点火する。空吹かしを行い調子を見る、いい音だ。馬力が違う。
 壁に掛けられた、リモコンを触ってガレージの扉を開閉する。
「ジョウント。とりあえず、先行って情報を集めてくれ」
「あいあい、安全運転で来てねぇ。ライダーちゃん」
 ジョウントは手をひらひら振ると、そのままスッと居なくなる。
 さっきも言ったが彼は瞬間移動(ジヨウント)の能力を持つ。人を掴めば、一緒に消える事も出来る。
 ヒーローとしての名前は安直な方が良い。変に難しい名前を付けても理解されないのがオチだ。理解されない名前を付けて楽しいはずは無い。
 僕のライダーも能力に関係した名前だ。『バイクを装着する』能力。それが、ライダーである僕の能力だ。さっき言って居たのはそれが理由さ。
 まず、公道を走るときの一番のルールは『交通』ルールだ。
 絶対に危険運転は行わない、法定速度も厳守だ。下手に目立つと警察や一般人の目にとまる。それは避けなければ行けない。
 そのため、安全運転を心がけつつの移動になる。普段から街を把握する事も大事だが、最近はカーナビという便利なアイテムも在る。それを駆使し、速やかに移動するのがプロのヒーローだ。

 しばらく走ると、ジョウントの言って居た銀行についた。
 目的地に着いたらすぐに裏路地に入り込む事。基本的にヒーローは後手に回る事になる。
 そのため野次馬から離れる必要があるのだが、注意しなければならない事がある。裏路地は、目的地から近すぎず、遠すぎずを選ぶ事。近すぎれば犯人や警察に見つかるし、遠すぎれば何も出来ない。
 ここで問題になるのが僕だ。銀行は狭いし、バイクが進入出来るルートは通常なら正面のみだ。さて、問題だ。こういうときはどうするか?
 答えは相棒の力を借りる、だ。
 スーパー・ヒーローは孤独だが、同じような境遇の人間同士協力し合える。それはどんなスーパー・パワーよりも強力だ。
 この場合、瞬間移動の出来るジョウントにあらかじめ、中を見てきてもらっておいたってわけだね。
「ジョウント。こっちは裏路地に着いたよ」
 そう呼びかけると、ジョウントはいつの間にか後ろに立っていた。
「おう。犯人は五人だな、三人が地下金庫で、一人が見張り、もう一人が人質の隣だ」
「武器は?」
「ショットガンやサブマシンガンだな、この機会を逃すと面倒だぜ」
 ジョウントがそう言うと、僕も戦闘態勢に入る。力を込めると、バイクが鎧のように身体に纏われていく。そうするとジョウントは棒を手渡してきた。
 ヒーローと言っても、武器を活用する場合もある。たとえば僕みたいに、決め手が少ない場合、武器に手を借りるのも手だ。
 ただし、銃は駄目だ。弾丸にライフルマーク(単純に説明するなら銃の指紋)が残ってしまうし、何より手加減できない。出来るなら銃以外で、使い慣れた物が良いだろう。
作品名:スーパー・ヒーローズ 作家名:ドナ