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天才飯田橋博士の発明

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6 自動起床装置




日差しが柔らかでちょっと霞がかかった空模様、春になったなあと神楽坂舞子は思う。だが、朝はまだ寒い。そして何よりも眠い。時間にうるさくない飯田橋博士なのだが、最近ずうっと博士よりも遅く出社しているのも気が退ける。

「博士ぇ、毎朝時間通りにさっと起きることが出来る装置なんか出来ないですかねぇ」

舞子のことばに、博士がすかさず反応した。
「何だそんなこと朝飯前だ」

「朝起きるのが朝飯前は当たり前ですわ、博士」
冗談なのか本気なのか分からない口調で舞子が言う。

博士は「神楽坂君それはすでにあるらしいよ。布団の下に丈夫な風船を入れておき、予めセットした起床時間になると、風船に空気が入って膨らみ、寝ていた体が弓なりになって、強制的に起床させる装置らしいんだ」と、言いながら何やら考えている。

「えええ~、腰を痛めません? もっと手軽で自然なものがいいなあ」

舞子が言うことを博士は聞いていない様子だった。
「うむっ、うむうむ」
博士が何かひらめいたように唸った。そして「紙おむつ……」と呟きながら工房へ入って行った。

すぐにバタンとドアが開く音がして、博士が舞子の側に戻ってきて、「神楽坂君、きみは紙おむつをしたことがあるかね」と聞いた。

「ええ~~、赤ちゃんの頃はしたと思いますが、覚えていません」
舞子が怪訝な顔でそう言うと、博士は少し顔をあからめながら、

「そうだろうなあ、う~ん、今は当然使ってない」

「博士ぇ、怒りますよ」

「いやあ、すまんすまん、実は、その~、その紙おむつのかわりに下着が欲しいんだが」

「博士ぇ、いつからそんな趣味が」という舞子の言葉を遮るように「起床装置にどうしても欲しいんだ。すまんが、買ってきてくれ、頼む」と真剣な表情で言った。


いつもの「出来たぞ~」という声がなく、博士がおずおずとやってきて、【自動起床装置】というよりは【自動起床下着】というようなものを「出来た」と差し出した。

下着にポケットがつけられ、カード型の本体が入っている。液晶画面で時間をセットすればいいようだ。ゴムの部分が少しぶ厚くなっているのは、何かセンサーのようなものが入っているらしい。

「最初は紙おむつにしようと思ったんだが、いやあ、おかげでいいものが出来た。それに今回は特に楽しかった」と、博士は少し紅潮した顔を言った。

舞子もなぜか顔が赤らむ思いでそれを受取り、「じゃあ、今夜装着テストして、明日朝の結果を報告します」と言ってそれを自分のバッグにいれた。




舞子は幸せな気分につつまれていた。私の求めていたのはこれだったのだと涙が溢れそうになる。優しく舞子の肩を抱きながら歩いている彼の顔をそうっと見る。でも微笑んでいるのだろう彼の顔がもやに包まれたようにはっきりしない。

いつしか舞子は独りで海岸の浅瀬の上に立っていた。あまりに悲しくて舞子は彼の姿を探す。彼はどこ、どこに行ってしまったのだろう。少し離れた場所で彼が悲しそうに舞子を見ていた。そして向きを変えて沖へ向かって進んで行った。

「待ってぇ、行かないで~」舞子は、追いかける。水しぶきをあげていた足元も、やがて舞子の足を重く捉える。「ねえ、どうして」と叫びながら進む。腰のあたりまで生ぬるい水につかって、舞子は嫌悪感を催した。

ああびしょびしょと思い、びしょびしょ? ええ~っと舞子はしっかりと目が覚めた。そして慌てて、布団に触って濡れていないのを確認してほっとした。

時計を見ると、正確に起床時間だった。

「博士のやろう、また欠点の大きいものを作りやがって~」
舞子は、怒りとともに立ち上がった。




作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川