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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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リブレ

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 そこにいる全ての者が自分の目を疑った。魔物はゼロが剣を抜いた次の瞬間には縦割りに一刀両断されいたのだ。そして、女性はゼロの腕の中に……!?
 ゼロの剣技を目の当たりにした村人たちは、言葉を失った。まるで夢か幻のようだった。
 この沈黙を破ったのは、この場に駆けつけた、男の一言だった。
「大変だ、シムじいさんの孫のドリスちゃんが魔物にさらわれた」
 そこにアンネが一足遅れ駆けつけてきた。
「どうしたの、この騒ぎは!?」
ゼロがアンネの元へ近づいてきてこう言った。
「ドリスと言う女がさらわれたらしい、ここでモンスターが暴れていたのだが囮だったらしいな」
そう言ってゼロは、この場を足早に立ち去って行った。
「ゼロっ、待って!」
アンネはゼロの後を追った……。

 夜が明け朝が来た。アンネの家の周りには人だかりができていた。
「アンネ出てきなさい、話がある」
と、人だかりの中の一人が言った。
アンネがそれに応じ家のドアを開けると、そこには人だかりが? どうしたものかとアンネは尋ねた。
「どうしたの、この人だかりは?」
白髭を蓄えた威厳のありそうな老人が人ごみを掻き分け、アンネの目の前に現れた。
「アンネ、お前の家にゼロがいるというのは本当なのか?」
「はい、本当です」
その言葉を聞いた人々どよめいた。老人は質問を続ける。
「ゼロを雇ったのか? ……いや、お前にゼロを雇う、お金なんてあるわけがない、どうしたんだ!?」
この質問をされたアンネは困ってしまった。
 1日泊めただけで仕事を受けてくれるハンターなんて聞いたことがない、まして相手はゼロだ。そんなことありえることではない、アンネ本人が一番驚いているのだから。
「そ、それは……」
アンネが言葉に詰まると、家の奥からゼロが出て来た。
「雇われたのではない、一晩泊めてもらったその借りを返すだけだ。それがたまたま妖魔退治になった、それだけの事だ……」
この言葉を聞いた人々は、そんな莫迦な話があるものかと人々は口々に言った。
「そんな話信じられん、お主、本物のゼロか?」
「村長、あんたも見ただろう、こいつの剣技をありゃー相当な剣の使い手だ、ゼロでないにしても剣の腕は超一流だよ」
と村人のひとりが言った、それに納得した白髭の老人=村長は、
「ゼロ、わしらの依頼を受けてくれんか?」
「断る」
ゼロは冷ややかな態度で言った。
「何故じゃ、わしらに依頼料が払えんと思って莫迦にしておるのか?」
「これから俺はアンネの妹を助けに行く、そうすれば、必然的に他の村人を助ける事になるだろう」
その言葉を聞いた村人達は驚きの表情を浮かべた。
 ハンターというのは依頼された仕事以外のことは一切やらないのが普通だ。だからハンターというのは冷酷なイメージをもたれることが多い。ましてゼロの強さは半端ではない、そのため噂に尾びれがいくつも付く。
「もう、用はないだろう」
そう言ってゼロは、アンネを家の中へ押し込み、玄間のドアを閉めた。
 家の中に入るとアンネがゼロのことを見ながら、ニコニコとした表情を浮かべ見つめていた。
 ゼロが、
「どうした?」
と、聞くと、
「ゼロ、あなた、噂では色々悪い噂が多いけど、本当は良い人なのね」
「結果的に他の村人も助ける事になる、それだけのことだ」
と言って、それっきり黙ってしまった。
 次にゼロが口を開いたのは村を出る時であった。
[君の妹さんは必ず助け出す、心配せずに待っていろ」
そう言って、ゼロは村を後にして行った。
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)