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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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リブレ

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紡がれる因縁 第6章《過去の惨劇》


 過去の記憶を辿れば未来が見え来る
 この話の発端から
 この話の結末まで……
 偶然なんて言葉は無かった

 第6章 過去の惨劇

 気が付くと私は暗闇の中にいた――。
 なぜ私はここにいるんだろう?
 覚えてない……私……? 私って誰?
 どうやら記憶喪失ってやつみたい。
 なんだかさっきから私ってば冷静だなぁ、こういう状況の時ってみんなこうなのかな?
 まぁいいや、そんなことより今は私の置かれている状況を把握するのが大切だよね。
 ゴン!! 痛い……動こうとしたら頭打っちゃった。どうやら箱の中で横になってるみたい。なんで私はこんな箱の中にいるんだろう。この箱は人が一人入れる位の大きさ、しかも私にピッタリ合う大きさに作られているような……まさかね、まさか柩なんてことはないよね。私死んだのかな?
「誰かいませんか?」
人のいる気配もないし、小さな箱の中で大声だしたら耳が痛くなっちゃった。
 バンッ!! 箱はびくともしない。はぁ……仕方ないから寝ちゃお。
 ――寝ていたので時間がどの位経ったのかわからないけど、私は目覚めた。
 まぶたに強い光を感じた。眩しい……眩しいけど仕方なく目を開ける事にした。
 私の目の前には誰かが立っていた。……奇麗な人だ、純粋にそう思った。ぼやけてよく見えなかったのにそう思ったのはこの人から感じられる雰囲気のせいだと思う。
 しなやかで細い手が差し伸べられた。私はその手を掴み立ち上がった。
 私の目の前にいる人はやさしくささやいた。
「おはよう。今日から君の名前は薔薇姫だ」

 私がこの屋敷に来てから2ヶ月の時が過ぎ去っていった――。
 ここでの生活にも少しずつ慣れてきた。この屋敷の主はこの辺り一帯を領土にしている大貴族ゼメキス・ヴィリジア様。大貴族といっても私にはそんなに悪い人には見えないけど?
 未だに私の記憶は戻らない。私は誰だったのか?
 ゼメキス様に聞いても何も教えてくれません。でも私はそれでもよかった、今が幸せだったから。
「ゼメキス様、何かお飲み物をお召し上がりになりますか?」
「紅茶を頂けるかい?」
「畏まりました」
私はゼメキス様に紅茶を入れて差し上げると、ゼメキス様の元へ紅茶を運ぼうとしました。けれど――。
「あっ!!」
ガシャーン!! 紅茶を入れたカップは床に落ち砕けてしまいました。
「ごめんなさい、今片付けますから」
「薔薇姫がそんなことをする必要はない、後で他のものにやらせるからそのままにして置きなさい」
「いえ、私がやりますから――痛っ!」
「大丈夫か!?」
私の指は陶器の破片で傷付き、見る見るうちに紅く染まっていった……私は、私は……。
「……血」
「薔薇姫?」
「いやーーーっ!!」

 気が付くと私は暗闇の中にいた――。
 なぜ私はここにいるんだろう?
 覚えてない……私……? 私って誰?
 どうやら記憶喪失ってやつみたい。
 なんだかさっきから私ってば冷静だなぁ、こういう状況の時ってみんなこうなのかな?
 まぁいいや、そんなことより今は私の置かれている状況を把握するのが大切だよね。
 ゴン!! 痛い……動こうとしたら頭打っちゃった。どうやら箱の中で横になってるみたい。なんで私はこんな箱の中にいるんだろう。この箱は人が一人入れる位の大きさ、しかも私にピッタリ合う大きさに作られているような……まさかね、まさか柩なんてことはないよね。私死んだのかな?
「誰かいませんか?」
人のいる気配もないし、小さな箱の中で大声だしたら耳が痛くなっちゃった。
 バンッ!! 箱はびくともしない。はぁ……仕方ないから寝ちゃお。
 ――寝ていたので時間がどの位経ったのかわからないけど、私は目覚めた。
 まぶたに強い光を感じた。眩しい……眩しいけど仕方なく目を開ける事にした。
 私の目の前には誰かが立っていた。……奇麗な人だ、純粋にそう思った。ぼやけてよく見えなかったのにそう思ったのはこの人から感じられる雰囲気のせいだと思う。
 しなやかで細い手が差し伸べられた。私はその手を掴み立ち上がった。
 私の目の前にいる人はやさしくささやいた。
「おはよう。今日から君の名前は薔薇姫だ」
 ――そうこれの繰り返し。
 私が思い出してはいけない記憶を思い出す度にゼメキス様は私の記憶を消した。
 私には特殊な能力がある。だから記憶を消されていた。その能力のせいで私はさらわれかけた……。

 硝子の割れる音を共に部屋に突風が吹き荒れ、男は私の前に姿を現した。
 白衣を纏った銀色で短い髪の男は悪魔のような笑みを浮かべていた。顔半分には獣の鋭い爪で傷つけられたような3本の爪痕が付いている。
「君が薔薇姫だね、迎えに来たよ」
男の後ろから5匹のゴブリンが現われ私を捕まえようとした。
 大きな緑色の腕が何本も私に掛かる。私はどうすることもできなかった。抵抗すらできなかった。
「あなた方は何者ですか!?」
「僕の名はゼオス、君の能力を使ってこの世界いる全ての貴族を支配しようと考えている者だよ」
「私の能力を使って貴族を支配するですって!? 私にはそんな能力なんてありません!!」
「それはゼメキスに記憶を消されているからだよ。強いショックを受けると記憶は戻るんだけど、すぐに奴は記憶を消すんだ。心当たりがあるだろ?」
この男に言われたように心当たりがある。この屋敷のこともゼメキス様のことも全てを私は前から知っていたような感覚に襲われることがある。でも私がここに来たのは2日前の筈、そう筈……。
 その時突然、部屋のドアが音も無く開かれ音も無くゼメキス伯爵が現れた。
「薔薇姫を放せ」
放せと言われて放すような者たちではなかった。薔薇姫を捕らえているゴブリンとゼオスが逃走を謀ると同時に残りのゴブリンがゼメキス伯爵に襲い掛かった。
「こんな雑魚では相手にならんな」
 私はゴブリンの腕に抱えられ夜の暗い森の中を運ばれていた。私はいったいどこに連れて行かれるのだろうか?
 ゼオスの足が不意に止まり、彼は後ろを振り向いた。
「早いね、でも計算通り」
「私を誰だと思っているのだ、大貴族ヴィリジア・ゼメキスを敵に回した事を後悔して死ぬがいい」
「後悔なんてした事が無い、されてもらえるならありがたい話だね、くくっ」
ゼオスの目の色が黒瞳から紅瞳に変わり、背中からは白衣を貫き漆黒の悪魔のような翼が生えた。
 それを見たゼメキスの目は大きく見開かれ、顔付きが狂気の相を浮かべた。
「キサマ何者だ!?」
「くくく、貴族を支配する者だ」
「貴族を支配するだと、私たち貴族は絶対の存在だ。お前などに支配される筈がなかろう」
「それはどうかな?」
何が起こったのか私にはわからなかった。ただ私が見たのはゼメキス様が倒れる姿。ゼメキス様がやられてしまった――。
「くくく、大貴族も対したことないな……ぐはっ」
ゼオスが突然口から血を吐いた。その形相は悪鬼のようになり、腹からは槍が突き出ていた。
 肩越しにゼオスは後ろを振り向いた。
「生きていたのか?」
「私を誰だと思っているのだ?」
そう言って槍は引き抜かれ、槍は再びゼオスを襲い身体を肩からわき腹まで真っ二つに切り裂いた。
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)