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庭自慢とビスマルク

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 扉を開いて一番最初に飛び込んできたのは、見事な紫の花だった。今年初めて、ダリアが咲いた。西海岸の暖かさだから、もう少し後になると思っていたのに。芝生の向こう側にある花壇で、如雨露の水を受けて少したわみながら、花弁はきらきらと輝いていた。鮮やかに浮かび上がる色は、朝露の取れた芝生の中に適応しそうですることが出来ない。入念に水を浴びせた。みずみずしい色は決して抜けることがない。庭の隅で水を張ったたらいの中に沈めてある夫のワイシャツと同じで。



 グリアがビバリーヒルズの南に来て、この秋で2年になる。ニューヨーク、リトル・イタリーのパン屋の裏にある一室で、3人姉妹が押し合いへし合いしながら寝ていた頃には考えられない、広大な邸宅へ。庭だけでも実家の数倍はある。トイレは共同ではなく各階に二つずつあり、キッチンは父が働いていた厨房よりも広い。寝室のシーツの眩しさ。触れるのが恐ろしい調度品。最初の数ヶ月は使い勝手が分からず、彼女は家の中で一人、自分の身を持て余したものだった。


 そもそも初めてこの地へ降り立ったときから既に、彼女は酷い違和感を覚えていた。電車を降り立った瞬間の後悔と夫の失望の表情は、未だ夜ベッドへ入るたび、グリアを惨めな気持ちにさせる。汽車が蒸気と共に吐き出す色の数々。流行の先端と言うには少しけばけばしいが、その分華やかな女たちの衣装と、みすぼらしく継ぎの当てられた自らのスカートを見比べれば、誰もこちらなど注目しない事は分かっていても、赤面は消えずに残る。プラットホームで待ち構えていた夫は、おずおずと人ごみの最後尾についてきたグリアを見つけて、悲しげな顔をした。そんな単純なものではない。憂いを含んだ目元が、屈辱で僅かにだが染まるのを、彼女は天井から刺す光越しにはっきりと見てしまったのだ。