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悲しくも寛大な心

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01.芯の強さ


服装検査があったなんて知らなかった。知っていたら遅刻したのに。
抜き打ちなんて卑怯すぎる。
「じゃあ、今日から一週間、放課後罰掃除やら反省文書いてもらうから」

教室に入った時何かがおかしいとは感じていた。いつも短い青山さんのスカートが膝丈でいつもネクタイを締めずに第二ボタンまで空けている真中がきっちりネクタイをしめている。
そして、茶髪とかパーマとかごまかせないレベル、一朝一夕でどうにもならない校則違反をしている人は教室にいなかった。
しくじった。

スカートが規定より短いのはクラスで私だけだった。茶髪なのも私だけだった。指定の靴下、リボン、セーターを着ていないのも私だけだった。
みんなの同情の視線を感じる。
ちくしょう!同情するくらいなら服装検査の情報をくれ!抜き打ちといいつつなぜか私以外は知っているじゃないか!
そこまで考えて昨日の5、6時間目は体育がサッカーで日に焼けたくないし、暑いからみたいな理由で自主休講したのを思い出す。きっとその時みんなは隣のクラスの子と情報交換したりして今日の服装検査の事を知ったんだ

自業自得、という言葉が重くのしかかった。
一週間、罰を受けるか、罰が怖くて服装違反なんてやってられないしね。
「1年C組の服装違反者は一人だけか。このクラスの担当は俺、2年D組の森川だ。きっちり罰掃除中も監督するからな、この一週間でお前が少しでも心を改めて服装違反を今後しなくなることを期待している。えっと……有野か。一週間きっちりな」

服装違反になってしまった事がショックでスルーしていたがどおうやら一週間この風紀委員、えっと森川……先輩が監督してくれるらしい。どんな顔か一応確認しておこう、さぼる気はないが一週間さわやかに罰掃除を過ごせそうな人だといいな

顔を上げると私を見下ろしていた森川先輩と目が合った。眼鏡のレンズ越しの瞳が私をとらえた。

「わ……」
勝手に声が出てしまっていた。顔がほてるのがわかる。やった、当たりだ、すごく好みのタイプだ。やった、服装違反してよかった。そういえば、今日のおひつじ座は一位だったから
うーわーそれにしても格好いい。すらりと高い身長に、少しだけ神経質そうな態度、細いからだ、冴えない大きめの眼鏡をしているが眼鏡をとればきっとすごく整った顔をしている。手もごつごつしてて男って感じがすごくする。

「じゃ、今日はとりあえず、反省文な。放課後2Dに来い。来なかったら余計面倒になるぞ」
そんな脅し文句を言うところもすてきです!脅し文句を言わなくても私は行きます。

結局一言も相づちがうてないまま、森川先輩は行ってしまった。赤くなった私なんかまったく気にせずに。
クラスメートはなんともいえない表情で私をみていた、が風紀委員がいなくなり服装検査が終わったのでみんなネクタイをとって首もとを緩めたり結んでいた髪を解いたりした。そしていちはやくネクタイをとり、いつものようい第二ボタンをあけた真中がへらへらと近づいてきた。
「有野—、どんまい。これに懲りたら体育さぼっちゃだめだぞ!」
やっぱり昨日の体育の時間にみんなは服装検査を知ったのか、でもそんなのもうどうでもいい。
「森川先輩ってかっこいい、この一週間で仲良くなれるかな」
真中への返答にふさわしくない言葉を私はつぶやいた。それなのに真中は「へぶぅっ!」と変な声を出して反応してくれる。
「森川先輩~!?お前、あんなのがいいのかよ。それより、隣のクラスの武蔵がお前のこと可愛いって言ってたぞ。武蔵の方が森川先輩よりかっこいいし付き合ったら楽しそうだろ」
「武蔵なんて人知らない」
私は自分の席に向かいながら言った。真中も今席が隣なのでついてくる。
「隣のクラスで体育も一緒に受けてるだろー、知らないなんてかわいそうだ。武蔵はサッカー部で背が高くて、人気だぞ」
お前も女子なんだから人気の男子くらい把握しとけ、そんなことをもぞもぞいいながら真中は私とともに席についた。
人気の男子とかあんまり興味がない。たくさんの人が良いっていうものが必ずいいとは限らないし、そういう人ってたいてい調子乗ってて疲れるんだよね。

バッグから教科書とかノートとかを取り出して1時間目の授業に備えた。真中が「やっべ!宿題忘れた、当たるかな!?俺当たるかな!?」とうるさかったが無視した。むろん、私は宿題は完璧にやってある。

いつもまじめな私だけれど今日ばっかりは授業に集中できないかもしれない。放課後のことで頭がいっぱいだ。どうしよう。ドキドキする。一週間で二人の関係はどこまで縮める事ができるだろう、付き合うなんてとても無理、だいたい一週間過ごしただけで付き合うなんて関係安っぽくて好きじゃない。メアドは交換……できるかな、したいな。どんなメアドなんだろう、馬鹿みたいに覚えたての難しいかっこいい英単語とか使ってたらどうしよう、ちょっとイメージとちがう。
名前と誕生日とかの数字の組み合わせ程度でいい、覚えやすくて迷惑メール対策に数字を入れてます、みたいなメアドがいい。

よし、メアドの交換が目標だ。頑張ろう

「真中—、問3やれ。宿題だったしできるだろ」
先生の声と「うぇー」という真中の声が隣から聞こえたやばいやばい、集中しよう。
作品名:悲しくも寛大な心 作家名:じゅりあん