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はちみつ色の狼

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何気なく、その様子を見てみようと肩口の方へと顔を向けるとなにやら柔らかな感触が耳に触れる。

「・・・・?」

こそばゆい感覚。
だが、それが何なのかはまったくわからない。
もう少し、自分の首をジンの顔が見えるほうへ向けようと試行錯誤しているうちにジンの身体が少し前方へとずり落ちる。
わっと少し呟きながらも、ジンが落ちないようにと必死で抑える。
次の一瞬、自らの唇に当たる先ほど耳に感じたあの感触。

「・・・く、!!」

唇。

すぐに離れたがやわらかく、そして薄く開かれている唇から漏れている吐息がジャンの唇にも少し掛かる。

「・・・・っ・・」

思わず自分からその柔らかそうで美味しそうな唇を自らのそれを重ねたくなる感覚に陥る。
眠っているこのかわいい人物を自分だけの物にしたい感情が同時に流れるが、と同時にそれを理解したくない自分がいて、瞬間的にそのまま自分を狂わそうとしている彼を落としそうになる。
それを食い止め、ずっているジンが起きてはいないか顔を覗き込むが彼は未だに熟睡していた。
起きていない事を確認して、少しほっとしジャンは、また背負い直して歩き始める。
だが、先ほどよりも足取りが重たくなる。

なんだ、この気持ち・・・。


ただの一瞬のミステイクから自分から出た、妙な感情。
いままでの自分の生活が犯されていくのではないかと言う不安。

ヘンダーソンから、車を駐車した駅のコンコースがいつもより遠い。




作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央