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はちみつ色の狼

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眠たいからなのだろうか、先ほどよりも口数の多いジンにジャンは少し驚いたが、彼はそのまま続けていく。

「構内で寝るのもいいのだが、こちらは東部とは違い星がきれいに見えるので少しここで過ごそうと。」
「なっ、あんた・・・いや大佐だったらホテルくらい予約できるでしょ?!もし、ホテルがわからないなら・・」

無茶苦茶なことを言うジンに思わず、大きな声で言うが眠そうな声とあくびにさえぎられてしまう。

「今日は、シルベウス大祭。知らないのかね?ホテルは、どこもいっぱいだよ。」
「!!そういえば・・・。」

自分でも昼の任務の時間から大騒ぎをしていたぐらいだ、それぐらいは頭において置いても良さそうなものなのに、忘れていた。
この日ばかりは、地方から来た金持ちや大祭をわざわざ見学に来た客でいっぱいになるのは毎年のことである。

さすがにこの一見、良い匂いのしそうな美人、でも男をこの場に置いて行くのは人道に外れているし、
なによりこの男が上司である以上、体裁もよくない。この時ばかりは、自分の人の良さを呪いたくなる。

「・・・・・・・はあぁ。」

観念したかのように、車の中でうな垂れため息をつくジャンを見てジーンは訳がわからんと言った感じで首をひねる。

「なんだ?」

東部は、平和だと聞いたことはあるがここまで平和ぼけをされていられては困ると内心思う。
疑問を表情で表すジンの首を捻って、ここはやさぐれ達の宝庫である西部なんですけどと思いながらも。

「もし、大佐が良かったら俺、これから行きつけのとこに飲みに行くんですけど、・・・きます?」
「・・・・・いい。」
「泊まるとこも、ないんでしょ?んじゃ、俺に付き合って飲んでもいいんじゃねーのかな?って思いまして。」
「・・・考える。」
「嫌なら、全然良いですけど。」

ジンはまだ、その場に座ったままである。
別に勝手に飲みに行けばいいじゃないか?と言う表情とも取れる。
だが、こちらもさすがに引き下がれない。
エレノア大佐の命令は絶対であり、先ほども考えた通りこの男は上司である。
怖がらせる訳ではないが、これはなんとかしなければいけない。
ジャンは、車から飛び出して、悪そうな顔を作ってドンとベンチの隅をける。


「ここの地区は、東部よりも案外治安悪いっすよ。こんな輩が沢山沢山いるんす。」
「・・・・・そうなのか。」

ジンは、自分の座っているベンチが下級の兵士に蹴られたと言うのに、別段気にも留めようとせず
まだぼそりと同じ音程で呟く。
その言葉を聴いたジャンはと言うと「・・う〜」と低く唸りながら大きな手のひらで自分の額を押さえて、
指の隙間から恨めしそうに彼を見つめる。

「・・大佐みたいに綺麗な顔した男の人は、掘られる可能性とかもあるかもしれいっすね。」
「・・俺は、そんなに弱くないぞ。」


それは、そうだ。大佐の地位についている者が弱ければ何が大佐なのかと疑問になる。
が、今はそれは置いておいて。
だんだんと詰め寄っていくジャンと、それを面白そうにあしらうジン。


「知ってますがね、さすがに何人にも押さえつけられたら・・、」
「・・・・はいはい。」

「・・・・。」
「・・・・。」

「本当、お願いしますよ!!!俺が困るんです!」
「・・わかったよ。」


自分でも可哀想なくらいに、眉間に皺を寄せてジンの手をぎゅっと握り締めた
ジャンの真剣さに押されてか、ジンはそう呟いた用に見えた。
だが、その後に見せたジンの笑顔はそう語ってはいなかったような気がする。

もしかするとこれも計算のうちだったのかも知れないと、ジャンは一人ごちした。

作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央