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青春だねっ!仲良し三人組

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空を見上げると、燦々と輝く太陽が、今日も私たちを焦がそうと、ヤル気を出している。
 額から流れる汗を拭いながら、友達の待つ屋上へと向かった。
「いや~今日も購買、混み混みで、やきそばパン買えなかったよお」
 しかし、いつもの場所に二人は見当たらない。他の生徒が笑いながら視線を投げかけてくる。恥ずかしい……完全に独り言である。
 私がどっと、違う汗を掻きながら立ち竦んでいると、日陰のある場所から掌がひらひらと揺れている。顔をひょっこりだしたのは、友達の一人だった。
「遅かったから、先に食べちゃったよ、もう」
 短髪のミヤコは、もふもふと最後のパンを頬張った。その隣には、既に食事を終えて読書するアキラの姿。
「えー、混んでるってわかってたのに、待っててくれなかったのかよ」
 私は不満の声をあげながら、敢えて二人の間に割って入り、腰を下ろした。
「なして、マユミはいつもアタイらの間に入る。日陰で涼をとっているのに、意味ないじゃない。暑いよ!」
「いいじゃん、暑いのはいつものことで、急に涼しくなったりはしないんだしさ」
「てか、マユミは見た目と喋りに、ギャップがありすぎるよ。そのつり目といい、髪型といいツンデレキャラなのに、ツンしか見当たらん」
「煩いなあ……私は媚売ったりしないだけ。デレは貴重だから光るんじゃない」
 私は、ぶつぶつ言いながら、コロッケパンを口の中へと押し込む。口で文句を言ってはいるが、私たちは仲良しだ。他愛ない話にも、華が咲き盛り上がる。大抵どこに行くにも一緒で、寧ろ離れて行動することの方が少ない。
 
 だけど、私は見てしまったのだ。部活の後片付けで遅くなり、待ってくれている二人の下へと急いでいた時、正門で談笑しあう二人の姿を。
 ミヤコは背が高く、スレンダーで運動神経抜群。しかし、なんと言っても笑顔がかわいい。愛嬌もある。だからクラスでも人気者。ミヤコが試合に出れば、熱い声援が会場を湧かせるほどだ。しかし、あんな風な表情もするんだ……アキラの前では。それはどうみても自分と同じ……恋する顔だった。
 私はミヤコにメールを打った。『もう少し掛かりそうだから先に帰って』と。私は初めてそんな風に想われているアキラを羨ましく思った。
 アキラは普段から無口で物静か。読者が好きで休み時間も、何かしら読んでいる。そんなアキラを囲んで、私とミヤコは駄弁るのだ。アキラも聞いていないわけではなく、時折素晴らしく切れのある言葉を投げかけ、私とミヤコを驚かせる。そして三人で笑うのだ。

 今日もまた部活の後片付けで遅くなった。きっと、二人は待っていることだろう。段々とミヤコの、あんな恋する表情を見るのも辛くなってきた。
「告白とか……なあ。三人でずっとって無理なのかな……」
 私は嘆息しながら重い足取りを、正門へと向ける。下駄箱で靴を履き替えるとそこにはミヤコがいた。
「ミヤコ? どうしたのぼーっとして。あれ、アキラは?」
 ミヤコは、すーっと手を伸ばし指差す先にはアキラと……
「嘘、手、繋いでる。ウチの生徒じゃないよね?」
「私立の、男子だと……インテリメガネが良く似合ってるよ。まさかアキラに彼氏がいたとは……」
「まあ、深窓の令嬢って雰囲気だもんね、アキラ。お坊ちゃんには受けが良いんだよ」
 アキラと彼氏は、そのまま仲睦まじく寄り添い、燃える夕日の中へと消えていく。
「告る前にフラれるって不毛過ぎる……あ、マユミもダメだよ。アタイのこと見てたのは知ってるけど、がさつなマユミはタイプじゃないから」
「おい! それをここでいうのかよ! って、バレバレって私も恥ずかしいわ! ……不毛過ぎる」
 私たちは、長い溜め息をついたあと、二人して笑う。私たち三人は、仲の良い女子三人組だ。
「あ、あの! ミヤコさん。是非、僕とお付き合――」
「男は要らないから」
 告白してきた、完全に石化する男子を放っておいて、ミヤコは歩き出した。私もそれに続く。だが、校門前で私も呼び止められた。
「あ、あの! 教室で気さくに話しかけてくれて、嬉しくて。ふたつに結んだ髪と瞳が綺麗だなって……ええと、付き合ってください」
 きょとんとした私を眺めるミヤコ。私はミヤコに笑いかけた。ミヤコもまたニヤリと笑う。私の頭の中は明日、アキラに根掘り葉掘り聞くことを、あれこれ考えている。ミヤコは私と肩を組んで、高らかに、二人して宣言した。
「『男は、要らないから』」
 私たちの恋は不毛に終わったけど、私たちの友情は終わらない。

作品名:青春だねっ!仲良し三人組 作家名:青蛾