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軽挙妄動

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Episode.2 最年少国家錬金術師




何時までも倉庫に籠もっている訳にも行かないので、エドとロイは取り敢えず倉庫を出る事にした。

しかしこのままではとロイが長く余った袖を見せ、仕方無くエドは事の発端となった小さな軍服を
ロイに差し出した。


皮肉な事に。

その軍服は、今のロイにぴったりだった。


かっ…可愛いっ…


小さな軍服を纏ったロイに、エドの顔が緩む。

そんなエドの様子に、ロイは面白く無さそうに眉を寄せた。

何とも言えない、優越感。

何か俺、初めて大佐より優位に立ってる気がする…

そんな事を思いながら、エドは元のロイの軍服を畳み、小脇に抱えた。

倉庫を出て、肩を並べて執務室に向かう。

だがどうしてもロイの歩幅が小さいので、何度もエドが追い越す形になり、その度にエドはロイを待ち、
ロイはぱたぱたと駆けてエドに追い付いた。


不便そうだなぁ…


ロイの様子に、エドはほんの少し考え、漸く追い付いたロイをふわりと抱き上げた。


「この方が、いいだろ?」


同じ目線になったロイに、にっこりと微笑んで。

ロイは拗ねたように視線を逸らすと、小さく「行くぞ」と言葉を漏らした。

すれ違う職員達が、二人を観てくすくすと笑みを漏らして行く。

時折、ロイを観て可愛いと漏らされる声に、ロイは複雑そうに眉を寄せた。


「可愛いってさ。良かったな、大佐♪」


そう言ってやれば、「うるさい」と返された。

執務室に辿り着き、ロイを降ろすと、ロイはいつも自分が掛けている椅子によじ登り、腰を落ち着かせた。

その様子に、エドは噴出しかける。

何しろ頭の天辺しか見えないのだから。

ロイも視線の位置が引き出しである事に気分を害したようで、椅子の上からデスクによじ登った。


「全く・・・」


デスクの上に座り込み、腕を組みながら、ロイは言葉を漏らす。


「どうしたものかね・・・」


紡がれる言葉は普段のロイの物なのだが、何分声が可愛らしいので、何だか面白くて仕方が無い。

もっと落ち込まなければいけない筈なのに、エドは笑いを堪えるのに必死だ。

そう言えばこの小さな姿でも、錬金術は使えるのだろうか?

ふと、エドは思った。


「ねぇ大佐、その身体でも錬金術って使えるの?」


ロイはエドの言葉に自分の手を見詰め、デスクの引き出しから発火布の手袋を出した。

小さな手にそれを嵌めれば、手袋の第二間接のあたりから先が余ってぶら下がった。

しかも指が開かず、人差し指の場所に指が二本入っている。

それでも、チッ、と指を擦れば、小さな焔がぼうっと発生した。

それ観た事かと言うような瞳で、ロイがエドを見る。


一応、使えるんだ・・・


と言う事は、これでもちゃんと国家錬金術師で通用すると言う訳か。


国家錬金術師、ねぇ・・・


再び笑いが込上げる。


今迄はエドが最年少国家錬金術師だったが、今現在だとロイが最年少国家錬金術師だと言う事になる。


「・・・何を考えているのか知らんが・・・私を元に戻す方法を考えてくれないかね・・・?」

「あ・・・あぁ、ごめん。」


紡がれた言葉に我に返り、さぁどうしようかと、エドは深く息を付いた。





その頃。

ホークアイとハボックは、突然居なくなったロイを探していた。

ロイが片付けた書類に、不備が見付かった為だ。


「さっきエドが倉庫でフュリー曹長の作業を手伝ってたんで倉庫も見に行ったんスけどね。」


絶対エドの所だと思ったのにと、ハボックは煙草を燻らせながら言った。


「エドワードくんは?」

「それがエドも居ないんスよ。二人でどっか行ったんスかね?」


ふぅ、と深く息を付き、ホークアイは頭を抱えた。


「今日中に回してしまわないといけない書類なのに・・・」

「もう一度観て来ましょうか?」


腰を浮かせ、煙草を灰皿に押し付けながら、ハボックは口を開いた。


「お願い。」

「ッス。」


ハボックは部屋を出ると、取り敢えず思い当たる場所へ行こうと歩き出した。


ふと。

執務室の前を通り掛かったハボックは、ドアが薄く開いているのに気が付いた。


「あれ?」


先程執務室を覗いた時は確かちゃんと閉めた筈だ。

執務室に居るのか?

そろり、と、ハボックはドアの隙間から中を覗いた。

エドがこちらに背を向けているのが見える。

更に覗いてみるが、ロイの姿は見えない。

ロイがいつも掛けている窓際の席は、背凭れがこちらに向いた状態で、そこにもロイの影は無かった。

取り敢えずエドにロイの行方を聞こうと、ハボックはドアを開けた。


「エド。」


ハボックの声に、エドが弾かれたように振り向く。


「ハ・・・ハボック少尉!」


エドの様子に、ハボックは何かあったのだろうかと少々首を傾げた。


「ど・・・どうしたの・・・?」


そう、エドに聞かれ、「あぁ」とハボックは口を開いた。


「大佐、知らねぇか?」

「え?・・・え・・・と・・・」


エドの視線が、泳ぐ。


何だ?


訝しげにエドを観れば、エドはハボックから視線を逸らした。


何か、あるな・・・?


そう思ったハボックは、何気無くロイのデスクに足を向けた。


「大佐が見付かんないと、俺達帰れないんだよなぁ。」

「そ・・・そうなの・・・?何で・・・?」


落ち着き無く、エドはハボックに言葉を掛ける。


「さっき大佐が片付けた書類に不備があってな。それがどうしても今日中に回さなきゃなんない
書類なんだ。だからさっさと大佐に処理して貰わなきゃ、俺達も帰れないんだ。」


そう言いながら、ハボックは椅子の背凭れに手を掛けた。


「あ・・・っ・・・」


その瞬間、エドが声を漏らす。

エドに視線を向けながら、くるりと椅子をこちらに向けたハボックは、微妙な椅子の重さを不審に思い、
視線を椅子に落とした。

そこには、4歳くらいの子供が小さな軍服を着てちょこんと腰を落ち着けており、ハボックを見上げていた。


「え・・・?あれ・・・?」


エドは「あーあ・・・」と言ったように額を押さえ、大きく息を付いた。


「え・・・と・・・エド・・・?この子は・・・?」


ハボックの問いに、エドはやはり視線を逸らしたまま、乾いた笑いを浮かべていた。

もう一度、子供に視線を移したハボックは、ふとある事に気付く。


あれ・・・?


自分を見上げている、その顔に。

ハボックは覚えがあった。

不機嫌そうな眉間の皺も。

瞳も。

口元も。


「ま・・・さか・・・」


ぽつり、と、ハボックが言葉を漏らす。

同時にびくり、と、エドの身体が撥ねる。

そうして恐る恐る視線をこちらへ向けたエドに。

ハボックは、聞いた。


「大佐の隠し子とか・・・言わねぇよな・・・?」

「かっ・・・」


エドの、裏返った声が上がる。

その反応に思わず口走ってしまったのか、ハボックの口から飛び出した言葉は。


「お前と大佐の子供か?!」

「違うっっ!!」

「何でそうなる!!」


全く違う、ふたつの声がハボックの言葉に突っ込みを入れるように上がった。
作品名:軽挙妄動 作家名:ゆの