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結城 あづさ
結城 あづさ
novelistID. 10814
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ARTIEICIALLY~第1号~

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第二章



琴音の目が次に空いた時、遊園地は姿を変えていた。
サイレンの音。人の叫び声・泣き声。『走らず出口にむかってください』という、人の声に負けているアナウンス。
琴音は一瞬、なにが起きたのかわからなかった。冷静になって薄っすらと聞こえるアナウンスに耳をかたむけると、遊具が爆発・火事になっているようだ。よく見れば炎はすぐ近くにある。琴音はベンチから立ち上がり、出口にむかった。
出口にむかう途中、妙な胸騒ぎがした。吐き気に近い、体のなかで生き物が動いているような感覚。そんなものとたたかいながら、琴音は出口へと行った。

出口には、すでにたくさんの人がいて燃える遊園地を見つめていた。走っていて気づかなかったが、炎のスピードは計り知れない早さで、早くも出口に達していた。つまりは、"もう人は助からない"ということだ。もう中にいる人は助からない。
「あ…!」
炎を見ていると頭がボヤッとして忘れていたが、家族のことを思い出した。辺りを見渡す。いない。急に不安と涙がこみあげてきた。
「…お母さん…天音…どこぉ?」
泣きじゃくりながら辺りを歩いた。涙目でほとんど景色なんか見えなかった。

遊園地が全て焼けたいや、爆発した。真っ黒い灰と跡形も想像つかないぐらいにばらばらになった鉄くずが目の間には広がっていた。そして、結局家族は見つからなかった。
それにしても不思議なことに、消防隊は来なかった。警察も来なかった。誰一人助けようとしなかった。
「………」
どうせ誰も助けにこない。それならこの中へ入っても止める者はいないんじゃないか、とそういう考えが浮かんだ。そして、脚を踏み入れた。
サク…サク…カラン…
歩くたんびに音がする。
辺りを見渡しても人のかどうかはパッと見分からない。見分けがつくのは灰か鉄か。場所も予想できないため、形が残っている遊具を頼りにすすんだ。
目指すはコーヒーカップ。琴音は、自分がどれぐらいの時間寝ていたか知らないが、仮に短時間だったとして、実際に遊んでいる時間は少ないが順番を待つ時間などを含めると十分にそこにいる可能性はあると考えた。たとえコーヒーカップについたとしても、そこにいない可能性もある。また、誰がどれか分からない可能性もある。脚を進める度に増える不安が怖かった。
「ついた…」
コーヒーカップがあったところは、他の遊具よりきれいに残っていた。ただ、それは悲惨にも焼け死んだ人達の姿もきれいに残しこの火事がどれほど凄まじいものだったのか、目に焼き付いた炎と耳に残る人の声を蘇らせた。
琴音は黒く焦げた人間から家族を探し始めた。しかし、きれいに残っていると言っても形だけ。顔など分からなかった。一緒に暮らしていた人さえ分からない自分に腹が立ちまた涙が出てきた。
ガラガラッ!
いきなり後ろから音がした。驚いて後ろを振り返った。何もない。でも確かに音はした。正体を調べるため琴音は恐る恐る近づいた。
「…っ!」
人だ。久しぶりに見たような気がする肌の色。瓦礫に潰されて助けを求めるように手を伸ばしていた。さっきの音はこの人が動いた時のものだったらしい。琴音は急いで乗っている瓦礫を退けた。手に切り傷、足に擦り傷がついても止めなかった。むしろ傷なんか気づかなかった。次第に少年の姿が見えてきた。
「あ…」
潰されていたのは綺麗な美少年だった。琴音と同じ年か少し上ぐらいで、右頬には"102"と刺青がしてある。かすり傷が所々、服もビリビリに破れているが目立って大きな怪我もしてなかった。ただ少年に意識はなさそうで動かなかった。
(早く助けないと…!)
しかし少年の背中に乗っている大きな瓦礫がどうしても動かない。琴音が一生懸命がんばって動かそうとしていると、また後ろから音がした。次は自分が歩いて来る度に聞こえていたあの音と同じだった。後ろには人が立っている気配を感じる。ただそれがいい人なのかは分からない。琴音はおそるおそる振り返った。琴音の後ろには白衣を着た20代前半ぐらいの青年が立っていた。
青年は見下ろすような感じで後ろに立っていた。琴音の茶色い目と青年の赤い目があった。
「…怖がらないで」
青年は琴音の横に立つと、屈み琴音ががんばっていた瓦礫を退け始めた。『彼は悪い人じゃない』と琴音は確信し、青年のサポートをした。

なんとか少年を助けることが出来た。引き上げるまで気づかなかったが、少年は右腹に鉄くずが深く刺さっていた。琴音があわてて救急車を呼ぼうとケータイを出した。その時、青年は少年のYシャツを脱がせはじめた。驚いた琴音はたんたんとボタンを外していく青年の手を止めた。
「なっなにしてるんですか⁉」
「…今すぐ応急処置でもしないと彼は死ぬかもしれない。…安心しな、俺はこれでも医者なんだ」
青年は鉄くずを抜き、白衣の内ポケットから包帯を出し少年へ巻いた。途中で青年の動きが少しとまった気がした。
「ねぇ君、彼を俺の家に連れて行っていいか?」
作業をしながら、青年は琴音の顔も見ずに言った。
「えっ?あ…はい」
「それじゃぁ…。!…そうだ。君もついて来な」
「え…?」
青年が少年を軽々と持ち上げる。
「かすり傷とかいっぱいあるから、治療してやる。それにこんな所にいるんだ、1人なんだろ?」
琴音は黙ってうなづくと青年についていった。