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【あの花SS】十年越しの花火の前に【10話】

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―あなる―



やっぱりそうだった。
じんたんはあたしのものにはならない。
あたしは、シンデレラにはなれないんだ。


じんたんは何でも出来た。
あたしたちのヒーローだった。
じんたんがいれば自然と仲間が集まって、すぐに冒険が始まった。
じんたんにはあたしがどうしても手に入らない、人を引き付ける力があった。
あたしだって、じんたんという灯りに寄ってきた虫に過ぎなかったんだ。
いつだってそう。
癖っ毛で眼鏡の地味な私は、白くて綺麗なお姫様には遠く及ばない。
じんたんがめんまを選んだのは、王子様がお姫様と結婚するくらい自然なことだったんだよ。
そこに、灰かぶりが入り込む隙間はなかったの。


あたし、物語の主役になりたかった。
映画のヒロインみたいに、素敵な王子様と、特別な冒険と恋がしたかった。
だから、あの日、お姫様が物語から退場して、正直嬉しかったんだ。
めんまがいなくなれば、あたしがその代役になれる。
あたしが、じんたんのお姫様になれるって。


…………バカみたいだよね。
誰かに誰かの代わりなんて、務まるわけがないのに。
あたしは何年経ってもあたしでしかなくて、めんまがいた穴はずっと空いたままで。
お姫様を失くした王子様は、ずっと空いたその席を見つめてた。
その視線が、あたしを捉える日は来ない。


……でも!!
じんたんはめんまが現れたと言った。
めんまが「お願い叶えてほしい」って言ったって。
あたしは変われると思ったの。
ずっと動かなかったじんたんの視線が、ふっと揺らいだ。
じんたんの目を、こっちに向けられるかもしれないって思ったの!!


あたしはやっぱり、じんたんじゃなきゃ嫌だ。
じんたんが欲しい。
あたしの、あたしだけの王子様。
花火が散るとき、お姫様の呪いから解放されますように。