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【あの花SS】十年越しの花火の前に【10話】

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―じんたん―



十年越しの花火が点火する。
火が、点いてしまう。




今更気付いたわけじゃない。
ずっと、ずっと、長い間見ないふりをしてきただけだ。
俺の中の、痛いくらいの気持ち。
めんまが、好きなんだって。
それだけの、ガキでもわかる想い。


昔の俺はいつも皆のリーダーで、一番で、誰もが俺を見ずにいられないと思っていた。
棒きれを振り回して、仲間を引き連れて近所を走り回っていた。
「じんたんすげー」って、その言葉が俺の生き甲斐だった。
子供なりに、プライドのようなものがあった。
だから、そんなすごい俺なら、めんまの気持ちも思い通りに出来るんだと疑わなかった。
自分は万能で、どんな振る舞いをしても皆付いてきてくれるんだって、疑いもしなかった。


でもめんまは、俺たちよりもずっと早く大人になっていたんだ。
あの日、俺が傷つけてしまっためんまは、その場を誤魔化すように笑った。
俺はめんまを泣かせたかったんだ。
嫌っちゃいやだって、俺と同じ次元の考え方で、泣きじゃくってほしかったんだ。
めんまはそうはしなかった。
俺より遥かに達観して、ガキなのにその場の空気を読んで、困った顔をするだけだった。


俺は、彼女に負けた、と思った。
俺が一番じゃないんだって、認めたくなかったんだ。
俺はガキで、いつまで経ってもガキのままで、めんまにあの日俺たちを気遣って笑わせてしまったことを後悔していた。


俺の前に「夏の魔物」が現れたとき、今度こそはめんまと同じ次元に立ってやるって誓った。
今度は上手くやる。大人になる。
めんまを困らせたりなんてしない。
だからどうか、お願いだから、もうどこかへ行かないでくれよ。
俺、早くめんまに追いつくから。
お前の一番になってやるから。


「まだ、止められる」


導火線の火が点く前に、一人で泣いてるお前の涙を拭いに行くからさ。
まだ、行かないでくれ、めんま。