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走馬灯

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切り落とされる。私は瞬時にそう直感した。

長年手入れもろくにせずに使われてきたのであろう、所々が赤く錆びつき切れ味はもっぱら悪そうな刃物が上から下から迫ってきた。
鋭利さのかけらもなく愚鈍な姿かたちをしている、下膨れた、無機質な殺人鬼。ただひたすらに幾何学的な動きで我々の仲間をごみの如く次々に葬った悪党。

刃に点々と付いた赤さびは我が一族を惨殺した時の血の痕だろうか、大小様々な形、それらの連なる様は阿鼻叫喚をきわめた地獄絵図のようだ。

しかしそんな事はもうどうでもいい。我々を一網打尽にしようと迫るこの恐ろしい殺人者は今や私の目前に迫っており、次の瞬間にこそ私の白く柔らかな薄皮を切り落とさんとしているのだから。

思えば短くも幸福な人生だった。
幼少のころは裸のままであったが、のちに赤や緑、黄色に青、あげくにはきらきらのスパンコールの付いたおべべを着せてもらったものだ。我々にとって多彩なおべべは何よりも輝かしい勲章である。一度もおべべを着せてもらえない者もいると考えると、私はとても幸福ものだったと言える。昔々の僧侶の袈裟のようなものだ。色のついたおべべは大切な
ものなのだ。

しかし転機が訪れたのは、私が一族の頂点に君臨した時である。
私は母を失った。失わなくては頂点に登ることはできないという皮肉な掟のためだ。掟というよりは至極当たり前のことと言うべきだろうか。
とにかく私は母を亡くした。
そしてその事実は、私が母と同じように次代のために消えなくてはならないことを示している。それも早急に。

だが、私は知らなかったのだ。母がそうして早くに亡くなった原因が老衰でも病死でもないということも。


母もまた、この狂気の刃で殺されていたわけだ。


その、母をも殺していた憎き仇が、今まさに私ノ目ノ前ニ、イテ、ワタシノ、ヤワハダヲ・・・・ぐにゅ







「ああ、すっきりした」
「ちょっと、夜に爪切りしたらダメだっておばあちゃんが言ってたよ」
「えー?いいじゃん。お風呂上がりの爪切りは気持ちいいんだよね」
「ちょっとー、切ったやつちゃんとゴミ箱に捨ててよね」
「わかってるよ。それにしてもこの爪切り切りにくうい。錆びてるわね」
「ちょっと!それお父さんの鼻毛切りだよ、どうするのよ、足の爪切っちゃって・・・買って返しなさいよ」



終わり



作品名:走馬灯 作家名:猫千代