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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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エベレストは昔海だった (冒険ファンタジー小説)

 
 今から16年前、私は「日本雪男研究グループ」の一員として、エベレストへ出かけた。生物生態学の研究員であり、途或大学探検部のOBでもあった。
 しかし、現地のシェルパ族から集めた情報によると、足跡はキツネのもの、目撃されていた生き物はヒグマであり、アカゲザルやキツネの毛と、鳴き声はユキヒョウであることが分かった。もっと詳しくいうと、エベレスト登山のための資金集めとして、イエティ(雪男)という架空の生き物が作られた、というのだ。


 現在48歳となった私は、6人のパーティーを組織して、エベレスト南西壁の下部、クーンブ氷河の5200m地点を歩いている。
 昔より親しくしているシェルパ族のひとり、ラクパ・シェルパから興味ある情報が伝えられたからである。
 温暖化の影響は極地において、より大きい。
 ヒマラヤ山脈の氷河が崩れたり後退して、岩肌が露出している所が増えてきている。そうした中、ラクパの仲間のひとりが洞窟を見つけたのである。何万年にもわたって氷雪に閉ざされていた洞窟である。
 エベレスト山脈は5000万年前に海底の堆積層が隆起してできた山であり、現在も隆起は続いている。山頂からは貝類などの化石が見つかってもいる。

 2年の準備期間中に、事前調査に出かけ、スポンサーを探し、洞窟の生き物の知識を得、登山技術を磨いてきた。低圧室にも2回入った。入山者の少ない雨季の8月から、10月の3カ月を途或大学探検部のメンバーと行動を共にする。
 ネパール・カトマンズから小型飛行機でルクラに入り、徒歩で10日目である。途中ナムチェ・バザールで食糧を買い足し、15人のシェルパ族をポーターとして雇い、食糧や機材などを運び上げていく。

 頂上を極めるわけではないのだが、高所順応がうまくいき、今のところ誰も体調不良は訴えていない。
 高度2500mを超えると、締めつけられるようなドクンドクンとした頭痛に見舞われ始め、5000mともなると心拍数は増え、浮腫を起こし脱水状態となるのが普通だが、低圧室トレーニングが功を奏しているようだ。
 雪まじりのガレ場を1歩1歩ゆっくりと踏みしめる。所々には雪渓が残っている。氷河の名残だ。まもなく登りを終え、下りに入って4820mの地点に洞窟の入口はある。
 雨季にもかかわらず頭上には濃紺色の空が広がり、世界第2位の高峰ローチェが、神の座を思わせる威容を見せている。しばしサングラスをはずして見わたすと、雪による光の反射で目が痛い。

 ポーターたちは洞窟の入口に先に到着して、テント設営と食事の準備をしているはずだ。それが済めば連絡員として2人のシェルパが残り、他の者はすぐに引き返していくことになっている。