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恋音

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最初はまったくの他人だった。


挨拶もしない。
目も合わさない。
言葉を交わす事なんてない。
友達でもない。
幼馴染でも、親戚でもない。



名前すら知らなかった。

ただ、存在を知ってたのは…。


俺が校内で他校奴らと喧嘩した時に、クラスの学級委員だかで担任の隣。
俺の事めちゃくちゃ睨んでたから、

だから、知ってるだけ…。





なのに

まさか

そんな顔もうろ覚えの他人が

自分の

夢ん中に出てきやがって…。



しかも、

夢ん中の奴は俺に向かって、


「愛してる」


そんな事を言いやがって、

そのまま抱きしめられて、

夢ん中の俺は体がまったく動かなくて。

ただひたすら、その温もりに

泣いていたー…。














そんな胸糞悪りぃ夢を見てから、
やけにソイツを意識するようになっちまった。

たかが夢如きで、最初はそう思ってた。

だけど、奴は見れば見るほど…輝く?というのか、


最初は気まぐれで、
次に名前まで覚えた、夏越 一(ナツゴシ ハジメ)。
名前まで優等生っぽいな、

そして次の日も、そのまた次の日も
奴を眺めていた。















そんで、気づいたら惚れてた。

かなり重症に。


最初は考えた、俺は男、奴も男。
俺にあっちの趣味なんてナイ。

これは一種の気の迷いだろう。
そう考え、忘れようとしていた。


けれど、まったく忘れられなくて、逆にどんどん好きになっていってる気がする。

そんな時、たまたま入った本屋でエロ本を見てしまった。
そしたら気づいてしまった。



俺、アイツに抱かれたい。



そう、考えていた。

その日から俺は女を抱けなくなった。
アイツに抱いてもらいたい、女も抱けない。

そんな状況で少しおかしかなっていた俺はとんでもない事を思いついた。



男に抱いてもらえば、この気持ちは晴れるだろうか?



考えたら止まらなくなった。

そして次の日、他校の奴に抱いてもらったけど、
気持ちは晴れる所か、海の底まで沈んだ気分になった。


痛いし
気持ち悪いし
悲しいし


死にたいと思った。









そんな頃にアイツが女子と楽しそうに歩いてるのが目に止まった。


彼女…?


聞きたかったけど聞けるわけがなくて、ただひたすら眺めてた。
















「鈴暮 彰」



どこかで名前を呼ばれてキョロキョロする。
すると、他校の前ヤッた奴がニヤニヤと下品な笑い方をしながら歩み寄ってくる。

なんとなく、背筋が嫌な汗を掻いて、逃げようと後ずさった時、

バチッ

「っ!!」

首に電流の痛みを感じて、そのまま意識が途切れた。









またアイツが俺の前に立ってる。

今度は何だよ、ちゅーでもすんのかよ。


そんなことを動かない体で考えてると、アイツは悲しい顔して俺に背を向けた。


なんで、今日は何もしないんだよ。

今度は前みたいに泣いたりしないから、なぁー…。


ハジメ…。





作品名:恋音 作家名:れん