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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ファントム・ローズ

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ダブル「Cace4 追跡」


 次の日、僕は学校に着くとすぐに鳴海愛を探した。
 彼女はいつも通り、僕よりも早く学校にいて、席に座って『多重世界』なんて名前の本を読んでいた。
 彼女は僕に気付くと声をかけて来た。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
 鳴海は僕のことを『それで用件は何だ?』といった感じで、本から目を覗かせるように見た。僕はなぜだか慌ててしまってすぐに返事を返した。
「事件についてまた調べようと思って……」
「昼休みに渚と会うから、君も来るといい」
 そう言って鳴海は本に目を戻した。
 気付くと周りの人たちが僕らのことをちらちら見ていた。僕が鳴海愛と話しているのが珍しいのか、鳴海愛がクラスの人としゃべっているのが珍しいのか、どちらかだと思う。ちょっと前までは僕もそうだったからわかる。
 僕は何食わぬ顔をしながら自分の席に着いた。
 前だったら僕も鳴海愛がクラスの人としゃべっているのを物珍しく見てしまったかもしれない。でも、今は違う。鳴海愛のイメージは僕の中でだいぶ変わっていた。
 昼休みになり、僕は鳴海に連れられて屋上に連れて行かれた。
 屋上は昼休みになると、ここで昼食を取ろうとする生徒の姿をぼちぼち見かける。その中の一人に椎凪渚を見つけた。
 床に座っている渚はニコニコしながら僕らを手招きしている。僕はそれに答えて軽く右手を上げた。
 それに答えてか、渚はより一層の笑みを浮かべた。
「春日先輩こんにちわ」
「こんにちわ」
 僕は相手の元気の良さに少し押されぎみにあいさつを返した。
 渚はすでに一人でお弁当を食べていた。そのお弁当が手作りのお弁当で見栄えも綺麗だったので僕は聞いて見た。
「これ、渚が作ったの?」
「はいそうですよぉ、あたし料理得意なんです」
「ふ〜ん、いいねぇ。僕はこれだよ」
 と言って僕は地面に腰を下ろしながらコンビニの袋からおにぎりを二つとペットボトルに入った清涼飲料水を取り出して少し苦笑いをした。
 それを見た渚が笑みを浮かべる。
「じゃあ明日、あたしが先輩のお弁当作って来てあげましょうか?」
 僕は笑顔を浮かべて快くその申し出を受け取った。
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
 渚はうれしそうな顔して腕を捲るようなポーズをした。
「任せて下さい、腕によりをかけてたくさん作って来ますからね」
 僕は笑いながら鳴海のことをチラッと見て言った。
「あれ、鳴海さんはお弁当食べないの?」
「昼は食べない」
 スタイルとかを気にして食べないのかなと思ったけど、本当はどうなんだろう?
「どうして食べないの?」
「食べる理由がないから」
「はぁ?」
 僕は思わず首を傾げてしまった。『食べる理由がない』、お腹が空いてないってことなのか?
 僕らの会話を聞いていた渚が、口にいっぱいに詰めんでいたご飯をごくんと一気に飲み込んでから、横から口を出してきた。
「愛ちゃん、ダイエットでもしてるの?」
「いや」
 それもそうだ、鳴海の身長は僕と同じかちょっと下くらいで足がスラっとしていてやけに長い、別にこれならダイエットしなくていいと思う。
 渚は口に手を当ててもぐもぐしながら、何かをしゃべろうとした。
「愛……どう……うぐぅ……げほっ」
 食べものを喉に詰らせた渚の背中を鳴海が擦り、僕は未開封だったペットボトルの蓋を開けて彼女に差し出した。
 渚はそれを受け取ると、五〇〇ミリリットルを一気に飲み干して、『はぁはぁ』と肩で息をした。そして一言。
「死ぬかと思ったぁ〜」
 その光景を見た僕は思わず笑ってしまって、横を見ると鳴海が真っ赤な顔をして口に手を当てて軽く咳き込んでいるのが見えた。無理して笑いを堪えてるように僕には見える。
 僕はこの時思った。鳴海愛はいつも無理してるんじゃないか? って。ワザと人を寄せ付けないようにしたり、何があっても冷静で、クールなフリをしているように今なら思える。
 そんなことを考えていて、回りのことなどすっかり目に入ってなかった時に、横から声がかかって僕は少しドキッとした。
「春日先輩、聞いてましたか?」
「えっ、何を?」
 どうやら、僕が考え事をしてた時に渚が何かをしゃべったらしい。
「あたし、〈クラブ・ダブルB〉の噂を流したの誰かなと思って調べてみたんだけど……」
「私も誰だか何度も調べてみたが、毎回一人の女子生徒に行き着いた」
「じゃあ、その生徒に直接聞いてみたら?」
 僕の発言を聞いた二人の表情は何とも言えない渋い表情だった。
「どうしたの二人とも?」
 鳴海はいつも以上に機嫌の悪そうな顔して言った。
「彼女はもうすでに死んでいる」
 二人が調べたって言うんだから彼女が噂を広めた張本人であるとは思うけど、彼女が噂を最初に流した人物であるとは断定はできない。
 結局何も掴めないのかと思った時、渚が手を上げた。
「はい、は〜い。え〜と、その女子生徒の名前は藤宮彩、三年生で最近思いつめた表情をよくしていて、授業中に保健室に行くことが多かったらしいですよ、それである日突然別人のように元気になってそれから〈クラブ・ダブルB〉の噂を流すようになったみたいです」
 僕はピンと来た。 
「つまり、藤宮彩は〈クラブ・ダブルB〉によって悩みを解消されたって訳だね。それと、保健室によく行ってた言ってたよね? この事件で最初に消えたのは保健室の水鏡紫影先生だ!」
 僕が声を張り上げると鳴海愛は不適な笑みを浮かべた。
「そう、それに水鏡紫影はまだ死んでもいないし可笑しくなってもいない」
 この言葉に渚が付け足した。
「だから、水鏡先生は警察の取り調べを何度も受けているらしいですよ」
 生徒が多く姿を消して死亡したこの事件だが、最初の生徒が消える前に姿を消した学校関係者がいた。その人物こそが、事件ではじめに失踪した人物――水鏡紫影先生。
 水鏡紫影は保健室の先生で、失踪したのちに帰ってきた。やはり、この先生の記憶もあやふやで事件について何も覚えていないらしかった。
 僕の中で事件の糸口が見えてきた。藤宮彩と水鏡紫影先生は〈クラブ・ダブルB〉と何らかの形で関わったに違いない、そして、水鏡紫影先生は今回の事件の鍵を握っているに違いないと。
 渚はお弁当箱のフタを閉めてバッグの中に放り込むと、勢いよく立ち上がった。
「じゃあ、あたし水鏡先生について詳しく調べてきますね!」
 そう言って渚は元気に走って行った。
 渚の姿が見えなくなった所で鳴海が遠い目をしてぼそりと呟いた。
「……強いな渚は」
「どういうこと?」
「渚の友達は二人居なくなった。一人はもうすでに死んでいる、もう一人はこないだ帰って来たがいつ可笑しくなるとも限らない」
「…………」
 僕は言葉がみつからなくて……。なんだかみんな?フリ?をしてるだけなんだと思った。
「渚は人前では元気なフリをしているが、私だけの前だと大声を出して泣くんだ。渚の悩みや悲しさが痛いほど私の胸に突き刺さる」
 鳴海はすごく哀しそうな顔をしていた。
 僕は何も言えず、鳴海の横顔をただずっと見つめいた。

 昼休みが終わり、いつものように五時間目が終わり、六時間目は先生たちの臨時の職員会議とかで自習になった。そして、何時ものように学校が終わった。