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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ファントム・ローズ

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ダブル「Cace2 帰還」


 翌日、僕は学校でさっそく事件についての聞き込みをすることにした。
 僕は人脈がある方ではないし、それに加えてみんな事件について話したがらなかった。けれど、僕は粘り強くアスカの友達に話を聞いているうちに、あの名前が出てきた。
 ――〈クラブ・ダブルB〉。
 事件のことを聞いて回っているうちに、消えた生徒たちが何らかの悩みを抱えていて〈クラブ・ダブルB〉について詳しく知りたがっていたことがわかった。
 放課後にどこかの教室に集まって活動しているらしい学校非公認のクラブ。
 〈クラブ・ダブルB〉の正式会員は〈ミラーズ〉と呼ばれ、その人たちが生徒にクラブのことを普及させたり勧誘したりしているらしい。という噂しかわからなかった。
 〈クラブ・ダブルB〉については噂の範囲を出ず、友達に聞いたとか、友達の友達に聞いたとか、〈クラブ・ダブルB〉と関わっている人に行き当たることは結局なかった。
 僕の中にある〈クラブ・ダブルB〉の有力な情報はアスカ本人が集会に出ていたということ。
 いろいろと調べていくうちに、消えた生徒たちと〈クラブ・ダブルB〉が無関係じゃないような気がしてきた。そして、〈クラブ・ダブルB〉を重点的に調べていくうちに、僕と同じように事件について調べている二人組みの女子生徒がいることがわかった。
 一人目の名前は椎凪渚[シイナギナギサ]という一年生の女の子らしい。もうひとりは話を聞いたのが一年生だったためだと思う、『あの、綺麗でクールそうな先輩』としかわからなかった。
 放課後になり、僕はすぐに椎凪渚という子のクラスに行くことにした。
 教えてもらったクラスは103教室で、僕は廊下を走って向かった。急いで来た甲斐もあって、103教室の中では生徒たちが座って先生の話を聞いている。これなら先に帰られてしまう心配もない。
 廊下の壁に寄りかかりながら待っていると、103教室から生徒たちが流れ出て来た。
 僕は生徒の流れに逆らって、狭い隙間を掻い潜りながら教室に入り、少し大きめの声で言った。
「椎凪渚さんは居ますか?」
 すると、数人の女子生徒たちが僕の顔を見てざわめき出した。
 今まで席に座って友達と話していた女子生徒のひとりが急に立ち上がり、少し顔を紅くして僕の側に駆け寄って来た。
 違和感のない茶髪をツインテールにして、楕円形のレンズの下側だけに銀色のフレームの付いた眼鏡をかけた小柄な女子生徒。その子は僕の前まで来ると、僕の制服についている校章の色を確かめながら言った。
「先輩ですよね……あたしに何か用ですか?」
 うちの学校では校章の色で学年が分けられている。だから彼女は僕の校章を見て、僕が先輩であることを確認したんだと思う。
 彼女の友達らしい人から野次が飛んで来た。
「渚、その人あんたの彼氏?」
「ち、違うってば!」
 この学校では普通、生徒たちは他学年の教室に行くことはあまりない。だから、たまに行くと注目を浴びてしまうし、それが異性の呼び出しだった場合は今みたいにからかわれてしまうことが多い。
 椎凪渚は僕の腕を掴んで走り出した。こういう行動をすると余計に疑われるような気もしたけど、僕は何の抵抗もせずに、彼女に引っ張られるままにどこかに連れて行かれようとしている。
 そんな僕らの光景を見て、生徒たちが何かを言っている。聞き取れなかったけど内容は察しがつく。
 椎凪渚に引きずられるままに、僕は普段生徒たちにあまり使われることのない、学校の隅にある階段まで連れてこられた。
 少し息を切らしている椎凪渚が階段に座るのを見て、僕も何気なく彼女の横に腰を下ろした。
 しばらく僕が椎凪渚の顔を見ていると、彼女は息を整えて首を傾げながら口を開いた。
「え〜と、まず先輩の名前と用件、それからぁ〜、好きなタイプの女性は?」
「えっ!? 好きなタイプ?」
 戸惑いの表情を浮かべた僕を見て椎凪渚は少し吹き出して笑った。
「ジョーダンですよ、先輩カッコよかったから、ちょっとからかっただけです。それからあたしのことは渚って呼んで下さい」
「ああ、うん、僕の名前は春日涼、消えた恋人を探してる。君が?事件?のことを調べてるって聞いたから……」
 事件と聞いて渚はすぐに察しがついたらしく、消えそうな声で呟いた。
「あたしは友達が消えちゃって……」
 何だから雰囲気が一気に暗くなって、沈黙がまるで黒い布のように僕らを包み込んでしまった。
 渚をはじめて見て明るそうな子だなと思ったけど、今は二人で沈んでしまって交わす言葉もない。
 重々しい時間は長く感じられ、沈黙を破ってくれたのは渚のケータイの着信音だった。着信音の曲は今は流行のバンドの新曲だ。
 渚はケータイのディスプレー画面を見てから電話に出た。
「――今ですか……物理室近くの階段です……はい、わかりました」
 ケータイを切った渚は笑顔を取り戻していて、僕の顔を見て元気な口調で話しかけてきた。
「あたしと一緒に事件を調べてくれてる先輩が今からここに来るそうです」
「ああ、うん」
 渚と一緒に事件を調べている先輩。確か一年生が『あの、綺麗でクールそうな先輩』と言っていたから、僕と同じ、もしくは上の学年ということになる。
 その?先輩?という人物が現れるまで、僕らはたわいのない会話でその場を繋いだ。
「春日先輩ってどこに住んでるんですか?」
「学校から徒歩一〇分くらいかな」
「結構近いんですね、あたしんちはバスと徒歩で三〇分くらいかかるんですよねぇ。あ、そうだ、今度学校帰りに先輩んち遊びに行っていいですか?」
「えっ、うち?」
「えぇ〜っ、だめですかぁ? だったらカラオケ行きましょうよ、あたし歌には自信アリですよ」
「僕はあんまり得意じゃないかな……」
 なんだか彼女に押され気味の会話だけど、沈黙するよりはよっぽどいいし、明るい口調で話しかけられると、僕の顔にも自然と笑みが零れていた。
 しばらく話していると、階段を足音がして、すぐに僕らの前にある人物が姿を現した。
 凛とした態度で腕組みをしながら立っている女子生徒。僕はこいつのことを知っていた。僕と同じクラスの鳴海愛[ナルミマナ]だ。
 長身のスレンダーな身体の彼女は長い漆黒の髪と瞳を持ち、窓際でいつもひとりで本を読んでいた。頭はだいぶいいらしく顔は美人系だが、口調は男性口調でいつも不機嫌そうな顔をしている。
 僕はクラスで鳴海愛の隣席だったけど、口を聞いたことは一度もなく、彼女は人を寄せ付けない雰囲気を持っていて、クラスでも孤立した存在だった。
 その彼女の方から僕に話しかけてきた。
「春日涼だったか?」
「そうだよ」
 相手の態度が無愛想だったせいか、僕も悪い態度で返事を返してしまった。これでは喧嘩でもするみたいじゃないか。
 鳴海愛は僕のことを不審の眼差しで上から見下ろしている。僕は鳴海愛となるべく視線を合わさないように下を向き、ふと横に座っている渚を見てある疑問が頭を過ぎった。
「二人ってどういう関係?」
 この二人というか――鳴海愛にこの質問をしてみたかった。なぜなら、この二人が友達とは到底思えないからだ。いや、そもそも鳴海愛の友達がこの学校にいるなんてことが僕には考えられなかった。