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死者からの手紙

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 急な報せで申し訳ありません。お父様。私は人を殺すという大罪を犯してしまいました。

 あの時の私は、気が触れておりました。そう考えることで、私はまだ精神を保っていられます。だからといって、私の罪が消える訳ではありません。しかし、お父様にだけは真実を知らせるべくこの手紙を出すことをお許しください。殺してしまった人間は三人もいるのです……

 一人目は、町でも悪い噂が耐えないあの男でした。その男に、私はつけられていました。執拗に、私の後をつけるのです。ある夜のことでした。友人の家から帰る途中、あの男がつけていることに私は気付きました。いつもは家の近くに来てから気付いていたのですが、その時は帰る途中で気付いてしまったのです。家に帰るまで気付かなければよかった。知らぬが仏とはいったものです。帰宅路にある、あの階段を上り、私は隠れて男が来るのを見張りました。階段を上ったところで、私は男の前に姿を現しました。男は驚いたのでしょう。私が前に現れた刹那、後ろに後ずさりしました。男の後ろには何もありません。その後は、ただ男のうめき声と鈍い音が私の耳を刺激するだけです。

 こうして、その男は死んでいきました。私には過失がない、と言ってくれる優しい方もいましたが、私はその言葉に素直に頷くことができませんでした。私は崩れた顔を手で押えてました。

 二人目は、薪を割っているときでした。ずっと長く作業をしていたからかもしれません。私は疲れていたのです。斧を木の山の上に置きました。なぜこの時、地面に置かなかったのでしょう。自分でも何故だか分かりません。私は、家の中に戻り休憩をしていました。子供が庭に入ってきました。薪を割る音を聞いて紛れ込んだのでしょう。子供は、斧を見て、興味を持ったのでしょう。それを撮ろうと必死で木の山を動かしていました。斧は子供の元に落ちました。言葉通りです。詳細を言いますと、子供の頭でした。斧の刃は無惨にも子供の頭部を真っ二つに裂いていました。子供はぴくぴくと蠢いていました。私はパニックに陥ったのでしょう。子供を自分の庭に埋めてしまいました。しばらくして事件が発覚するわけですが、しばらくの間、私は何も罪に問われませんでした。しかし、私の疑心暗鬼は日が進むにつれて、階段を一段一段上るように、しだいに大きな物となっていきました。私は、増えてはそれを消し去り、ギリギリの位置で留まっていました。私は祈りました。次はこんなことが起こる運命だろうと、私を代わりに天へと導くよう神に。

 しかし、三人目も出てしまいました。神は残酷でした。いえ、私が悪魔だったから聞いてくれなかっただけなのです。神に過失はないのです。駅で電車が来るのを待っていた時です。駅は大変混雑しておりました。人々の声が駅を満たし、雑音として私の耳に入ってきました。私は、鞄を落としてしまったのです。すぐに拾わなければ、無くなってしまうと思ったからでしょう。背を曲げて、取ろうとしたのです。その時、私の腕に何かが当たりました。人だ、と私は思いました。しかし、人ではありませんでした。もっと残酷なものでした。ベビーカーに手が当たってしまったようです。駅は当然のように段差などありません。そのままベビーカーは、路線へと降りてゆきました。コロコロと、その音だけが私の耳を満たしました。世界が止まったように感じたのです。手を伸ばしても何故か届きません。しかし、届きそうなところで止まっているのです。私が手を伸ばすと、コロコロと届かないように進んでいくのです。運命は、残酷でした。そこへ、電車がやってきたのです。悪夢としか思えませんでした。私はその赤子を殺してしまったのです。私は、その日から堕ちていった。

 生活が不安定になりました。寝る時間も不安定になりました。人との関わりも減りました。そんな時でした。二人目に殺した子が見つかったのは。しばらくは行方不明として扱われていましたが、警察の捜査は流石でした。

 私は警察に見つかる前に逃げました。ずっと前から決めていたのです。見つかったら逃げて命を絶とう、と。今は教会に居ます。神に祈りを捧げてから命を自ら絶とうと思います。自殺です。文字通り、私は自分自身に殺されます。どうか、後日発見されるであろう私の死体を見て悲しまないでください。私は罪を犯してしまったのです。だから罰せられるのは当然のことなのです。この手紙は、お父様が保管してください。世間に公表しないでください。身勝手なお願いですが、私が最後に残す遺品です。出来ることならば、何度も読み返して欲しいと私は願います。


作品名:死者からの手紙 作家名:花甘露