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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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   (ミナとユリス)
   ワンウエー・ア・チケット    
   グアーキー・ジィ・ノネム
   出会い
 舞台は、はるか遠い未来。地球とその銀河全体を支配下に治めたコンピュータシステム、マザーガイヤ。彼女の手の平で踊らされている者達の反逆が始まった。ここに居る一人の中年男ユリスもその一人である。彼らの目的は様々な矛盾を抱えたシステムの破壊。そして自分達のような破壊兵器を作らせないこと。
 オマケに願わくは、行き場の無いこの社会でわずかな居場所を探す旅に出ること。
 ユリスのアジトは、第13移住惑星ロコの都市ロムスの北側、もっとも貧民街であるスターダストにあった。ここまではよっぽどの事が無い限りはシティーポリスや他の組織の追っ手もやっては来ない。
 スターダストは、旧式の壊れかけたアンドロイドや犯罪歴のある人間が住む場所である。犯罪組織の隠れ家やアジトがある為、日常的に銃撃戦が繰り広げられている。
 時には賞金稼ぎの捕り物だったり、時にはマフィアの内部抗争だったり、時にはただの気まぐれや精神異常者の仕業だったりする。毎日が百鬼入り乱れての修羅場と化している。時々一ブロック丸ごと瓦礫の山になるほどのドンちゃん騒ぎをしても、警察沙汰になったことは一度も無い。ここでの出来事は全てがフィクションで片付けられ、清掃ロボットが何も無かったかのように全ての痕跡を消し去ってしまうからだ。治外法権がまかり通ってしまうエリアなのだ。
 グローブタワーの事件の後、ユリスの周辺が騒がしくなった。
 グローブタワー事件では、地球政府要人十五人が殺され、その中にグランドマザーの十四大賢者の一人、ロスデモスがいたのだから当然のことだ。グランドマザーの受けた衝撃は計り知れない。マザーガイヤが黙っている訳が無い。血眼になって犯人を捜している。
 ユリスが1枚噛んでいることは確かなことだ。主犯ではないにしろ。
 相棒のデスプも手配されたので、デスプがマウントする新しいマシンを探しにやって来た。一度マークされたマシンはすぐに乗り換えなくてはならない。
 デスプとは、AIプログラムチップである。今は単なるブレーンチップに過ぎないが。
 この巨大販売場は中古や新品だけでなくカスタマイズしたマシンや盗品まで扱っており、金さえ積めばどんな要望でも探し出して来る。
 巨大な空間に何層にも重なり合う丸いデッキ状のステージが地上1キロ以上の上空にまで達していた、形が巨大な樹木に見えるのでこの構造物はビッグツリーと呼ばれている。
 マシンを見て回るには、空飛ぶジュウタンみたいなボードに乗り、デッキからデッキへと移動するのである。希望すればアシスタントロボットが好みのマシンを選び出し、マシンの性能説明から試乗や支払いまでを面倒みてくれる。
 宇宙の果てまでいける光速豪華クルーザーから、地球の裏側までひとっ飛びの高速ジェットまで置いてある。
 その中でユリスはある一台に目を留めた。旧式で定員は精々3人のライトプレーンだが、エアーバイクなみのアクロバット飛行が可能な数少ない高性能マシンであった。このクラスのマシンとしてはかなり高額で乗りこなせる者はごく限られている。乗り手を選ぶマシンでもあった。
 ユリスは迷う事無く近くのコールホンで店員を呼んだ。すぐにアドバイザーがやって来た。
「このマシンにお目を留めるとは、凄腕のパイロットとお見受けしました。このマシンは既にフルチューンされており、どのような用途の使用でも他のマシンに追随を許すことはないでしょう、腕さえあればの話ですが・・」
 ユリスはこれ以上、彼の口上を聞く気が無かった。
「運転は友人がする、やつの指示どおりトレースできるマシンかチェックしたい。チューンアップは奴が一からやりなおすだろうから基本性能を見せてもらう。リモートで飛ばすからシンクロドライバーを頼む」と依頼した。
 アドバイザーは客筋がいいと判断すると、もう余計なことは言わなかった。商品には何処にも負けない自負があるのか、用意していたドライバーをユリスに手渡した。
「楽しいトリップを」とだけ言った。
 シンクロドライバーは制御装置で、パイロットの脳波信号を解読して機体を自在に操るツールである。マシンと一対一の真剣勝負である。
 ゴーグルとハーフヘルメットが一体化したような装置を装着すると、もうそこはマシンのコックピットの中に居た。シートは無いが、快適なポジションであった。丁度リクライニングシートに座った感じだ。
 コインほどの大きさのディスク状のシンクロドライバーをセットすると、エンジンが始動しスタンバイの文字がフロントウインドウに表われた。マシンはロケットさながら垂直に発射しあっと言う間に1万メートルに達し宇宙に飛び出して行った。そこで最高速度の確認と急停止の距離、その他もろもろのテストデータを取り終え15分で帰還した。シンクロドライバーをとり、ヘルメットを脱ぐと汗で顔中ビッショリだった。本気のテストドライブであることを物語っていた。
 アドバイザーが足早に歩み寄って来た。
 「満足頂けたでしょうか?」と彼が聞いたので「思った以上の出来栄えです。いいマシンに仕上がりそうです。このままの状態でいただきます」と言いその場で支払いを済ませた。
 店員が「お届けしますか?」と尋ねたが自分で乗って帰る旨を伝えると、メカニックの店員がオーナーセッティングをしに来た。
「プログラムは標準装備しております、ご希望があればグレードアップしますがどうしましょう?」と尋ねたので、「悪いがこれをセットしてくれ」と言いバックからAIメモリーボックスを出し、手渡した。
 店員はそれを見て驚いた様子だったがすぐに気を取り戻して作業に取り掛かった。宇宙戦艦や宇宙豪華客船でも動かせるプログラムがこの中に詰まっていることを知っているからである。このライトプレーンなら安価なAIプログラムチップで十分なのになぜこんなヘビーブレインを乗せるのか合点がいかなかったのだ。作業はすぐに済むと思ったが意外にてこずっていた。そのまま持ち帰り自分でセッティングをやればよかったと後悔したが後の祭りだった。
 ユリスは「そこのカフェに居るから終わったら知らせてくれ」と頼んでカフェに向かった。
 暫らくして、けたたましいサイレンと共に「スリだ」と言う店員の声がした、通常スリはAIプログラムチップだけ抜き取り、なにくわぬ顔で逃げ去るのだが、スリも店員と同様に手こずったようだ。スリは何を思ったか、デスプがマウントしたライトプレーンに乗り込んで逃走したようだ。もしくは、別の見方をすればデスプが犯人を連れて逃げた?のどちらかである。
 そしてユリスがどちらだ?と聞かれれば99%以上の確立で後者であると答えるであろう。
 デスプは警備の10台のパトロールフォークに追われ逃げ回っていた。それを見て、おなかを抱えて笑っていた男がいた。ユリスである。