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かぐたん&ぱっつんのやみなべ★よろず帳

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《付録2》かぐたんのぷちぷち☆ふぁんたじぃ劇場半ライス



【18】うさぎとうさぎとカメ(とゴリラと諸々その他)

昔々あるところに、でろべっぴん☆なうさぎの美形兄妹(という設定)がおりました。
ある日二ひきが街中でいつものようになかよくぼくさつにんじんソードごっこでガチバトっていましたところ、道端を一匹のカメがよろよろ通りかかりました。
「ヤー、カメぱちある」
覗き込んでウサ妹が言いました。メガネっ子のカメの甲羅には余すところなくアイドルのステッカーやら切り抜きやらがばしばし貼られ、申し分のないイタ甲羅仕様となっておりました。
おさげ垂らしたにーちゃんうさぎがひょいとカメの甲羅を踏みつけました。カメはヒィッとみじめな声を上げました。うさにーちゃんがカラカラ笑って往来に声を張りました。
「ねーおじちゃーん、このカメいじめないからさぁ、代わりにこづかいちょうだい!」
「……ああ?」
カメの後ろからけいばしんぶんひろげてフラフラ歩ってきていた天パのおっちゃんは、こまっしゃくれたうさ兄貴に大人気なく思きしガンクレました。うさぎはちょっともビビリません。
「だってさぁ、ボクらほらこんなにイイ子なんだよ?」
うさにーちゃんはカメのイタ甲羅をやんわり飼い殺しにげしげしふみふみしました。
「……ううう、」
――やめてくれよぉ、踏む方は目覚めたけど踏まれる方には開花してないんだよボクはっ! にーちゃんの足元でカメは哀れにじたばたしました。
「ねぇほら、今ならまだギリ間に合うよ?」
うさにーちゃんはガン睨みしている天パのおっちゃんに向かって突き出した手をヒラヒラさせました。ただでさえこのところ負けが込んでいるおっちゃんはイラッときました。
「……ケッ」
吐き捨てるよーにおっちゃんは言いました。
「ニコニコヘラヘラいい子にしてりゃあシアワセになれるなんざ、世の中そー甘くねーんだよ、」
――だいたいイイ子がオトナにオドシかけてこづかいせびるかっつーの、おっちゃんは眉間の縦皺を倍にして凄みました。
「……!」
――ちょっとぉ! そういう説教はあとでいいじゃないですかっ! カメはひっしにじたじたしました。
「知ってるよ」
あいかーらずニコニコへらへらけろっとした顔にうさにーちゃんがほざきました。
「せんりゃくてきしょせいじゅつってやつさ、ホラ俺とこいつ、奇跡の親父DNA回避でカオだけはいいからさぁ、だまって笑ってりゃヒキはあるんだ、」
「んあ?」
兄貴にぐりんっとおだんご頭をひねられて、にんじんソードをかじっていた妹がおっちゃんの方を振り向きました。
「……」
――なるほどアホ全開ではあるが造形主のうたた寝を疑うレヴェルのぶさいくではないな、おっちゃんもその点は同意しました。うさにーちゃんはしれっと笑顔に続けました。
「世の中いびつな奴が多いからね、何ならニンジンの小物使いもカンペキさぁ、」
にーちゃんが妹に4、5本まとめてにんじんを放りました。
「アイヤー!」
妹はかじりかけのにんじんソードでバランスを取りつつ、空中のにんじんを器用に操ってジャグリングしました。
「そぉれっ!」
兄貴が自分のにんじんソードを天高く投げ上げました。――くるくるしゅたっ! 同じく大ジャンプかました妹が両手ににんじんソードを携えて地表に戻ってきたとき、天から細切れのにんじんが雨あられと降ってきました。妹は機敏な動きで残さずにんじんを胃袋に収め、ぺこりとおじぎをしました。
「――ごちそうさまでした、」
「……」
――ウン、そりゃスゴイはスゴイのかもしんないけどさー、天パのおっちゃんは顔にタテ線入れて呆れました。
「おまえら、人にタカる前にフツーにその大道芸で食っていけるだろ……」
おっちゃんが半眼でどんより意見しましたのに、
「いやだなぁ、」
けらけら笑ってうさにーちゃんが言いました。
「こいつにホイホイちょーしこいて火の輪くぐりなんかやらせてごらんなさいよ、たちまち野生の本能に目覚めて街ごと破壊しかねませんよ、」
「キケンな遊びしやがって……」
――ちいっ、おっちゃんは読み終わったけいばしんぶんをかったるそーにたたんでうさにーちゃんに渡すと言いました。
「キップ代はそっちのカメにタカりな、」
なぁに生写の一枚もガマンすりゃすむ話さ、おっちゃんはそのままひらひら後ろ手を振って行ってしまおうとしました。
「ええっ?!」
――けっきょく助けてくれないんですかぁっ!! イタ甲羅のカメは悲痛な叫びを上げました。
「……」
うさにーちゃんが踏んづけていた足元にちらと目をやりました。カメは必死に這い出そうとしましたが叶いません。仕方なし、地べたにデコ擦りつけてカメはうさにーちゃんに訴えました。
「マジでカンベンしてくださいっ! たかが生写一枚だろっておっしゃいますけどっ、こういうものは毎シリーズ完パケコンプリートしないと意味ないんですっ! 一枚でも欠けたら価値がないんですよっ」
「……」
つまらなそーに腕組みして、踏んづけてないほーの足で地面たかたかやっていたうさにーちゃんが、ふっと動きを止めました。妹は傍らで無心ににんじんソードをかじっています。
「そーいやキミ、おねーさんいたよね?」
――にっこり、うさにーちゃんが満面の笑みを浮かべて言いました。
「……はいっ?」
カメは眼鏡を押さえて顔を上げました。にーちゃんがニコニコへらへら言いました。
「どうだろう、キミが俺のギリの弟になるっていうんなら、生写代献上の話はなかったことにしてあげてもいーよ?」
「……そっ、そんなぁ……!」
――うっわぁこのヒトどこまでもタカってくる気満々だよ、しょーじきやっとれませんわと、カメは小市民的なことを思いました。
(……。)
それにしても、なんでアイツあんなに“ギリ”にこだわるんだろうなァ、よほどギリギリで生きていたいらしいなリアってヤツは、離れたところで天パを掻いて振り返ったおっちゃんはしみじみロックポップスの歌詞のよーなことを思いました。
「……考えてもごらんよ、」
うさにーちゃんがドン引きのカメの前に身を乗り出すように言いました。
「ボクとキミのおねーさんがうえでぃんぐべーる☆して、生まれてくるキミの甥っ子だか姪っ子だかは選び抜かれたうさぎとカメのキメラさ、どっち転んでも、……フフフ、うさぎにもカメの世界にもなじめなくて、ものすんごい苦労するんだろうなァ……、」
うさにーちゃんは口の端にあくまのよーな薄ら笑いを浮かべました。キラキラと濃い斑の菫色に歪む瞳は摂理を屠る暗黒無道の悦びに満ちていました。
「……」
カメにはわかりませんでした。嬉々と自分を踏みつけにしている得体のしれない生き物が心から欲しているのはいったい何であるのか、甲羅でつるつるのはずの背中が総毛立つような、おぞましさにカメはぞっとしました。
と、にんじんソード丸々食い終わった妹がぼそりと口にしました。
「うさぎ耳でパタパタ空飛べるカメかもしれないね、」
「……」
途端に兄貴が興醒めだという顔をして妹を見ました。
「よしよし、オマエは本当に頭がめるひぇん仕様だな、」
――隠れ乙女チックもたいがいにしろよ、兄貴は妹に追加でにんじんソードをやって黙らせました。妹はがっつきました。